第61話 リアム、三人が大切
「そうだ、リアムくんとリディアちゃんにはまだ伝えれて無かったんだけど、今度エルフの国と魔族の国で国交を樹立することにしたから、手紙を送った後でエルフの国行きたいんだよね〜」
「エ、エルフの国と魔族の国で国交樹立!?」
軽い感じで放たれたメリアさんの言葉が、とてもその軽さで放って良い重さでは無いもので、僕がそのことに驚いていると、シルヴィアさんが頷いて言った。
「あぁ……あのエルフの国を滅ぼそうとした首謀者であるマスクを付けた魔族の男は魔族の国で引き受け、しっかりと裁くつもりだが、リアムの元パーティーメンバーというあの愚か者とその仲間たちは、エルフの国に任せるということになってな……ただ魔族の国からそのことを伝えても怪しまれてしまうだけだと伝えたら、メリアが国交を樹立すると言い出したんだ」
「そ、そんなこと、簡単に────」
僕がそう言いかけると、メリアさんは僕の方に身を乗り出して言った。
「もう!シルヴィアちゃんにも言ったけど、私これでもエルフの国の大魔法使いなんだよ?魔族の国で一番偉いのが女帝のシルヴィアちゃんだとしたら、エルフの国で一番偉いのは族長で、私はその族長と同じぐらい発言権があるんだから!まぁ、リアムくんの女になるんだったらこのぐらい当然だけどね〜」
「なるほど……そういうことでしたら、もし話が順調に進まなかったときは、私もアストリアの人間として赴かせていただき、事をより順調に進めるべく尽力させていただきましょう」
「アストリアって言ったら人間の中でも有名な騎士の家系で、他の国にはあんまり興味無かった私でも知ってるぐらいだったし、加えてSランク冒険者の称号も持ってるリディアちゃんが協力してくれるってなると心強いね〜」
「そうだな」
そうだ……わかっていた事だけど、ここに居る三人は本当にすごい人たちだ。
リディアさんはアストリア家という、今までの旅の合間でもその有名さや力がわかるほどにすごい家の生まれの人で、加えて冒険者の中でも最高ランクのSランク冒険者。
メリアさんは、ご自分でも仰っていたけど、エルフの国で一番偉いとされている族長の人と同じぐらい発言権のある大魔法使い様で、リディアさんと同じくSランク冒険者。
シルヴィアさんは、まさしく魔族の国で一番偉い女帝さんで、その実力がリディアさんやメリアさんたちSランク冒険者の人と同等であることは言うまでもない。
僕がそんな事を思っていると、リディアさんが言った。
「ですが────やはり、私たちにとって一番大切で、一番の力となるのは、生まれや地位、自らの力などではなく、リアムさんという存在でしょう」
え……?
僕がその言葉に困惑していると、メリアさんが言った。
「そうだね〜、結局、どんな力よりも、最終的には大好きなリアムくんが居てくれるっていうだけで、それが力になるよね」
「あぁ……目に見えぬ力など、今まで確かなものとして感じたことは無かったが、今はハッキリとそれを感じることができる……愛情という形でな」
「リディアさん、メリアさん、シルヴィアさん……!」
僕は、三人の言葉が嬉しくなって、名前を呼ぶと思わず三人のことを一緒に抱きしめた。
「わっ!リアムくん、甘えたくなっちゃったの?」
「い、いえ、そういうわけでは……ただ、僕も、三人のことを本当に大切だと感じて……思わず抱きしめてしまいました」
僕がそう伝えると、シルヴィアさんが言った。
「そういうことなら、私もリアムのことを抱きしめねばならないな」
続けて、リディアさんとメリアさんが言う。
「私もです」
「私も〜!」
僕の言葉を聞いた三人は、そう言うと言葉通り僕のことを抱きしめてきた。
三人の温もりが、僕に伝わってくる。
「……」
この温もりさえあれば、他のものなんて要らない。
そう思えるほどに大事だと思える三人と一緒に静かに抱きしめ合う時間は、本当に幸せな時間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます