第7話

 最後のページをめくると何もないページの真ん中に


『僕は女の子になりたかった』


と書かれていた。

 薫は少し固まったあとなぜか見てはいけないものを見てしまった気がしてノートを閉じた。


「女の子になりたい・・・?」

 

 思いがけない告白に一瞬固まったが、なぜかどこかで納得している自分もいる。しかし、女の子になりたいとは一体どういう意味なのか。

 男の人が好きになったということなのか。それとも女の子の格好をしたいってこと?頭の中はぐるぐる女装やら同性愛やら言葉が巡っているが、どれが正解なのかわからない。


 ベッドに体を沈めて、意識を重力に向けていると気がつけば夢の中に飛んでいた。


 いつもなら起きることのない早朝にすっと目が覚めて顔を洗って歯磨きをしてそのあとにふと歩夢が「そう」した理由は女の子になりたくてもなれなかったからなのかという考えが浮かんできた。


 もしそうなら薫に相談できなかったことも納得できるし、もしそうなら薫には理解できなくても「そういう」選択を取らざるを得ないことも納得する。

 でも、歩夢と薫は兄弟みたいな存在だから打ち明けようと思ったに違いない。両親には直接伝えるのは怖いから薫にそれとなく伝えてほしいのかもしれない。

 何も書いていないけれど親に伝えないでなどとは書かれていないし、正直にたいな伝えてあげることで歩夢も歩夢の両親も救われるに違いない。


 となれば、善は急げである。幸い今日は休日のなので歩夢の家に向おうと謎の使命感に駆られてノートを片手に家を飛び出していた。

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