第41話 迅の家へ2~梨絵の告白~
「迅先輩!!」
「久賀、どうした?」
そうだ、わたしたちは梨絵も迅くんが好きなのを知っている。
「ウチが大阪に来た理由わかってますよね!!」
「久賀が大阪に来た理由……? うん、わかるよ。それって……」
すごい楽しそうに迅くんが梨絵に笑顔を向けている。それは別にいいんだけど、きっと、迅くんの中で梨絵が追いかけてきた理由は『友だち』として仲良くしたいと思っているのだろう。
「迅先輩、尊敬もしています。それ以上に
「え?」
ここまで鈍感だとすごく心配だ。でも、今の彼女の地位はまだわたしだ。
ここで迅くんが梨絵を選んだら……。彩莉センパイよりかはわたしにとってはいいかもしれない……。
「ごめん、久賀。オレはさ……」
「……、そうですか、ウチがしつこいのは知ってますよね!?」
「ん、まぁ……。小学生の頃からの付き合いだもんなぁ」
「迅先輩が弱ってるように見えるなら、ウチはそこをつきますからね!!」
そっか、梨絵とは付き合わないんだ。この後はおそらくわたしの出番だろう。
でも……
「わかんないよ、迅くん」
「夏芽?」
そうだ、わたしはわからないのだ。
なにがわからないのか。
これからどうしたらいいのか。
それは、梨絵との関係もだし、迅くんとの関係も、受験勉強にその他のいろんなことだ。
「迅くんのことも、わたしと迅くんとのことも……もっといろんなことも……」
「オレのこととオレとの……。あぁ、そうだよな、忠さんと宇川さんに協力してもらって偽の商店街会議開いてもらって言い訳する機会をもらった後の返事の保留中だからなぁ。まぁ忠さんはあんまり理解してなさそうだったけど」
「そうだよ」
「待って、その……先に謝らせて。ホント!!」
『じーん』と幸恵さんの声がした。なんだか、年末年始ぶりな気がする。
「先、幸恵さんの用事聞いてきて」
迅くんは家の中に戻った。
梨絵は泣いている。わたしの中で梨絵はやっぱり親友だ。でも、梨絵から見るとわたしは恋敵。それでも励ましたいと思う。でも、わたしは改めてこの後、告白するのだ。迅くんと付き合った時みたいに『ヤケクソ』の『お父さんへの反抗心』を丸出しの告白でなく、ちゃんと心を込めて『好き』『恋人でいたい』と伝えるのだ。きっと、梨絵は嫉妬心を抱くだろう。ここは麻実センパイと夏美センパイに任せよう。
実際、3人は少しわたしから距離を物理的に取っている。きっと、夏美センパイの家の時のように梨絵がわたしに殴りかからないようにするための対策だろう。
カチャリと迅くんが家から出てきた。あれ? もう1人、女の人が出てくる。
――お願い、幸恵さんであって!! 間違っても彩莉センパイでないように!!
迅くんの表情も少し曇っている。
願望通り、幸恵さんだった。幸恵さんは迅くんにきちんと話すよう促している。促すだけ促して家に戻った。
なんだったんだろう?
「夏芽、大事な話がある」
結果から言うと、彩莉家から『いろはを預かってほしい』と言われたらしい。元々、広瀬家と彩莉家はすごい遠縁の親戚関係らしい。それこそこの関係を血縁と言っていいのかわからないほどの関係らしい。
「……、そうですよね、初恋の……彩莉センパイがいいです……よね」
「違うんだ!! オレが好きなのは、夏芽、キミだけだ!! キミがいい!! 毎日一緒に過ごして、笑顔の時もつらい時も、ともに支え合って……その、まぁ、経済的に自立したら結婚しよう!!」
「くすっ、結婚は早いかな。でも、これからも恋人で、不束者ですがよろしくお願いします!! で、大事な話って?」
「あぁ、いや、大丈夫、いろはのことは母さんも、『家の前にいるなら夏芽ちゃんの判断次第』って言ってたから、断るよ」
「え、いや、どういう?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます