第25話 初詣3~家族~

 あの後、結局、お参りと恋みくじだけして、夏芽の家に戻ってきた。オレは平常心に戻るべきだっただろう。まだ、戻れていない。さっき、オレが大泣きして、目が腫れているのを気にしてだろう、夏芽の指示で大急ぎで、荷物をまとめて早く忠さんやお姉さんが起きる前に帰る用意をしようという話になっていた。


「おう、おはよ……息子!! どうした!!」

「あれ、なんとかくん、どったの? 泣いたの?」


 しかし、夏芽の家に戻ると、忠さんも、お姉さんも目を覚まして、年始のお祝いの用意をしていた。玄関が開くと、こちらを見て心配してくれた。夏芽の家族に認められて嬉しい反面、申し訳ない気持ちがある。さすがに、ここまでされてウソはつけない。事実を全て話した。


 忠さんもお姉さんも夏芽同様、それは友だちだから大切だから心配しているのであり、好きとかそういう恋愛感情じゃないと言った。


「ありがとう……ございます」

「気にすんな、息子!! お前はな、おでが息子って呼ぶんだ。もう、マイファミリーだ。名前や戸籍上は違っても、おでのなかでは、夏芽の彼氏であっておでの息子でもあるんだ。まぁ、実を言うと最初の方は気に食わんかったけどな」

「お父さん、お願いだから、あーしにもし、彼氏ができても、こんな恥ずかしいこと言わないでよ」

「迅くんは最初からずっといい人だったよ」


 各々、思うことを話しているが、ひとつどうしてもツッコみたかった。そう、夏芽の『迅くんは最初からずっといい人』発言だ。時折、忘れることもあるが、夏芽は最初何度も罵声をオレに浴びせて、多奈川さんや麻実さんに何度も怒られていた。


「ま、いいか」

「迅くん何か言った?」

「いや、夏芽と出会った頃を思い出してた」


「え、あーしもなんとかくんと夏芽の話気になるー!」

「最初はすごいツンデレ的な発言多かったよなぁ」

「あれは、迅くんがすごいタイプの雰囲気していたからであって……だから、間違えて好きにならないようにするため……」


 夏芽の家でのお泊まり年越しが終わった。


「また……」

「こら、夏芽、年越したら受験勉強本腰入れる約束だろ。息子は将来のため、鮮魚のはなまるでバイトとして雇う」

「え、忠さん、初耳なんですけど」


 ニカッと笑い、忠さんはブイっとした。『後は息子のハンコと署名だけだ』と言って労働条件通知書を提示した。『3学期始まるまでですよ』と言ってたまたま持ち合わせていたハンコを押した。


 その後、忠さんとwireを交換した。『あっじゃ、あーしもー!』とお姉さんとも交換したが、お姉さんと交換する時、夏芽は嫌そうな顔をしていた。


 その帰り道。


「迅!!」


 ふと、誰かに呼ばれた気がした。いや、そんなことはないか。


 と呼ぶ人物なんて、両親以外にいたっけな……?

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