リアル脱出ゲーム

仕方がないのでレティシアと踊ることになったのだが。

 一緒に踊っているのは、仲よしの友達と踊りますってご令嬢が数組とふざけて出てきたであろう男性組が二組だった。


 なるほど、これが勢いと度胸か。

 確かに組数が少ないと見られてる感がすごいな。


 しかし私は付け焼き刃なダンス歴で、レティシアは私より大分大きいので練習とは大違いである。

 こんなピンヒールで踊ったこともないのである。

しかも、相手もドレスである。

裾を踏まないようにするのにも一苦労だ。

 わたわたと踊る私をレティシアは、ニコニコとしながら見ている。

 何とか踊り終わり、お辞儀をして辞する。


「上手だったわよ?」

「初めてにしてはハードルが高すぎる……」

「本当に上手でしたよ」


 声に反応して振り向けば、疲れた顔のアレンがいる。


「……どうも」

「疲れているところ申し訳ありませんが、私とも一曲、お願いできますか?」

「はい?(闘牛みたいな)御姉様方とのお話は?」


 ただふとした疑問として、聞いてみる。

が、なんだかアレンが慌てている。


「あの方々のことは、気にしないでください」

「絶対足を踏むと思いますよ?」

「大丈夫です」

「絶対うまく踊れませんよ?」

「リードしますので」


 ニコニコしながら、次々と断り文句を潰される。

 くそぅ。


「……これ以上踊りませんからね」

「では」


 嬉しそうにしやがって。

 ノルマは一曲って言ったじゃないか。

 仕方がなくもう一曲踊ることとなった。


 何とか踊りきり、ゼーハーなりながら下がる。

 体力、気力共にごっそり減った。


「上手だったわよー!!やっぱり女の子が踊るのを見るのはいいわね。ターンしたときのスカートのはためき具合が最高よ!」


 意見には同意できないこともないが、自分がやるのは御免である。

私もそちら側で見ていたかった……


「ちょっと、御手洗いに行ってきます……」


 ふらふらと会場を出てトイレに向かう。

 手汗がすごいので、手が洗いたい。


 全く、やはり来るんじゃなかった。

 トイレに入り、洗面台で手を洗っていると、「がちゃん、ガタガタ」とドアの方で音がする。


 なんだ?

扉が閉まって、何か作業するような……

 え、まさか。

扉に近づき押してみる。


「……開かない」


 もしや、引き戸だったかと引いてみるが、開かない。


「うわ、マジか」


 こういうの久しぶりだな。

 向こうでも始めのうち、物理的なことをされた記憶はあるが、途中からあからさまなことされなかったから久しぶり感がすごい。


 どうしようか、とトイレの中を見渡す。


 よく携帯ゲームで脱出ゲームをしていたがまさかリアル脱出ゲームをする日が来るとは……

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