【後日談】例えばこんな日常も

「あー!!もう!お前なんか嫌いだ!!」

「俺だってお前は嫌いだ」

「もう知らない!!絶交だ!!」

「こっちこそ。お前と友だちだなんて思ってなかったがな。これでハッキリとわかって良かったよ」


 各部署に書類を届ける伝書鳩が終わり、部屋に戻ってくると、まるでまんがか何かでのお決まりのセリフをウォルターとリアムが叫んでいた。


「いったいどうした?」

「あっ、お嬢。聞いてくださいよ。リアムのやつ、ひどいんすよ」

「はぁ?お前が大概なだけだろ?」

「お前はだまってろよ。今、お嬢と話してるのは俺だっつーの」

「少々話が分かりにくく思います。始めから、私にもわかるように、順番に、話していただけますでしょうか?」


 思い付く限りの丁寧な物言いを全て押し込めてスマイル0円を浮かべながら静かに尋ねる。

 二人は固まっている。


 文法?そんなの知らん。


 ちなみに今日は上二人がいないため、私たちは、ペーペー留守番組なのである。

 冷めた目で二人をみれば、今までのヒートアップが落ち着いている。


「で?」

「えーっと。お嬢が出ていったあとっすね……」


 ーーーーーーーーーーー


(回想)


「じゃあ、書類を届けに行ってきます」

「「行ってらっしゃい(っす)」」

「なんか、良かったよな」

「なにが?」

「お嬢がさ、出ていかなくて。いろいろあったけど、俺達の間に壁がなくなったように感じる」

「気のせいだ、といいたいところだが、まあ、そうなのかもな」

「おっ、珍しいな。お前がそんなこと言うの。そのついでにさら俺達の間にある溝について話さないか?」

「溝?」

「そう。俺とお前って同い年だろ」

「そうだな」

「でもさ、俺のが誕生日が早いのよ。しかも、同期とは言えどこの班に配属されたのは俺のが先な訳」

「だから?」

「俺のが先輩なのにお前、俺の事をバカにしすぎしゃね?」

「意味がわからん。誕生日なんて数ヶ月、子供じゃあるまいし、誤差みたいなものだろ。配属も同じだ。数ヶ月、ぼぼ一緒に配属されたようなものだろ」

「いやいやいや。数ヶ月だろうと、数日だろうと俺のが先輩なわけ。後輩のお前は、もう少し俺を敬えって」

「だから、誤差だろ。それに先輩でも後輩でも敬えるところがあれば敬える。つまりそう言うことだ」

「俺がバカだと言いたいのか!!」

「別にバカとはいってない。ただ、尊敬するところがないだけだ」

「遠まわしにバカっていってるようなものだろ?あー!!もう!お前なんか嫌いだ!!」


(回想終了)


 ーーーーーーーーーーー


「と、まあ最初に戻るわけで……」

「くだらない」

「ですよね」

「お嬢もリアムの味方っすか?信じてたのに……裏切りもの!!」

「裏切りもの?私が「貴方の味方ですよ」って言った覚えある?」

「ないっすけど……でも、俺とお嬢の仲は、それほど簡単には切れない仲だったじゃないっすか」

「まぁ、助けて貰った恩があるから味方しろと言われるなら、『恩を返す』だけを繋がりとした対応をしていくけどいい?」

「なんか、聞くのが怖いんすけど。例えば?」

「そうだね。この喧嘩にたいしてもリアムを一緒に糾弾しよう。『味方』だからね。今後、ウォルターがやることは間違っていたとしても諌めないし、ほかっておこうか?だって注意したら裏切りものになって『味方』じゃなくなっちゃうからね」

「いや、そこまでは望んでないっす」

「そう?」

「やっぱりいつも通りがいいっす」

「そう?」

「それだけ?」


 他に何を言えと?


「なんか、罰則みたいなものは?」

「なしっすか!!」


 いやいや、私が一番の年下だし、後輩なんだが?

 普通に「ごめんね」「いいよ」じゃダメなわけ?


 話を聞くとだいたい反省文を書くらしい。


 あ、いいこと思い付いた。


「じゃあ、明日までに相手の良いところを書いて提出ね。400字から1000字までで」

「ちょっ、それ、反省文より辛くないっすか?」

「こいつの良いところ、だと?しかも、最低が400……」


 きっと良いところを見つけたら、仲直りができる、と思う。


 ちなみに、私をいじめていた彼らの良いところを書いてと言われたら、箇条書きで一つでも出てきたらいいとこである。

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