両手で持って食べない?
戻ってすぐ、レティシアが騒ぎだした。
「お腹が空いたわ!!話を始める前に腹ごしらえしましょ」
いつだって自由だな、この人。
そんな自由さに慣れている皆さんは、特に慌てることもなく淡々としている。
食堂の方々にお願いをして、サンドイッチを作ってもらってきていた。
まぁ、お昼過ぎてるからお腹が空くよね。
もしかしたら、レティシア以外もお腹が空いたと思っていたのかもしれない。
すぐ運ばれてきたサンドイッチを食べ始める。
ハムサンドやチーズハムサンド、ハムとトマトサンドがあるなか、レタスサンドに至っては、なぜかレタスしか入っていないらしい。
レタスサンドはパスし、ハムサンドを食べることにした。
モグモグしていると毎度お馴染み、レティシアとノアの観察タイムが始まった。
「……なんですか?」
「いゃ、かわいいな、と思って」
「サンドイッチって、仕事をしながら片手で食べられるようにってものなのに、両手で持って食べてるんだもの」
言われてみれば、確かに私は両手で持って食べている。
「あぁ、癖なんです」
「どんな癖っすか、それ」
「おにぎりが……」
「オニギリ?」
「ご飯の中に色々いれて三角に握って海苔を巻いて食べる食べ物です……あの人が作るおにぎりは、途中で崩れてしまうんです」
だから、両手で持たないと途中でただのご飯に戻ってしまう。
下手したら一口めを食べた時点で崩壊がはじまるのだ。
「あの人?」
「ん?あぁ、私の母親です。あの人は、料理が得意ではなかったみたいです」
よく同じメニューがくるくるしてたし、毎週水曜日はカレーの日だった。
私は、食に重きを置いていなかったから、別にそれでよかったし、不満に思ってはいなかった。
え、なんかみんな、微妙な顔してるけど、どうした?
おずおずといった感じで、エドワードに聞かれる。
「……仲が悪いのですか?」
「いや、別に?」
そう、仲が悪かった訳ではない。
ただ、あの人の中で「私のことを考える」が占める割合が少なかっただけなのだ。
だから、別に私があの人を嫌っていたわけでも、あの人が私を嫌っていたわけでもない。
ただ、私に関心がなかっただけなのである。
そんな状況になっている理由を知っているし、その理由から関心が私に寄せられないことがわかっていた。
私は家のなかでも、ただただ迷惑をかけないようにひっそりと過ごしていたのだ。
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