運が悪いにも程がある

 内心、ドキドキしながら、どーでもいい話をしながら薄暗い道を進んでいく。


 しばらく歩いていると前方の角で誰かが動く影がみえた。

 自然と二人とも口を閉じ、足を止める。

 じーっと影の見えた角を見つめといると、


「ぶにゃー」


 黒と白の斑模様のぶた猫がゆっくりとでてくる。


 なんだ、猫か。とウォルターがホッとしている。


 私はといえば、ホラーものとかのテンプレで、このあと何かが起こるんだよなー、なんて冷めた感じで猫を見ていた。


 ウォルターがふたたび歩き出そうとするが、服を引っ張って止める。角から目を離さず、息をころす。

 なんか、嫌な予感がする。

 それこそ、テンプレ的な予感が。


「ん?どうしたんすか?」


 私の不審な行動にウォルターが不思議そうな顔で振り返る。

 その瞬間、先程猫が出てきた角から誰かが飛び出してきた。


「ウォルター!!」


 私の声に反応し、ウォルターか振り返る。

 飛び出してきたソレは闇落ちだった。

 そしてそれは、まっすぐ私たちに向かってくる。


 やばい、とりあえず避けなくては!!

 急いで二人揃ってすみに避ける。


 ん?打ち合わせでは、ウォルターは避ける人ではなかったのでは?


「うぉぉお」


 ゾンビみたいな声で叫びながら闇落ちは、勢いを殺せず目の前を通りすぎていく。


「行くっす!」


 ウォルターが私の手を引っ張り、闇落ちとは反対に走りだそうとする。


 しかし。先程の角からもう一人出てきた。


「挟まれたっす!」

「一人じゃなかったの?」


 急ブレーキをかけると自然と背中合わせになる。


「なんか、最初の話と違うじゃん!!」

「俺に言われてもわかんないっすよ!!!」


 アワアワする私たちを無視して闇落ちが向かってくる。

 しかし、私たちに爪が届くことはなく、薙ぎ倒される。

 目の前にはかっこよく剣を構えたレティシアがいた。


 そして、反対側にはリアム。


「大丈夫?」

「遅くなりました」

「レティ!」

「リアム、遅いっす!」

「悪い……」

「気になることがあって出てくるのを躊躇ってしまったの」


 ん?なんの話?


「アイナ?この闇落ちのどちらかに見覚えはある?」


 え、突然言われても……私、人の顔を覚えるの苦手なんだってば!!

 まじまじと見たってわかんないよ。前回の人と違ってなんか趣味じゃない服だし。


 んー。見覚えは、ない!!


「見覚えはない、かな?」

「やっぱり。」

「どういうことっすか?」

「時間がないから簡単に説明するけど、こいつらは今回探していたやつじゃないの」


 え、そうなの?

「ターゲットだったら、さすがに顔はわかるわ。全然知らないやつよ」


 えーー。全然知らない闇落ちを二人も釣るなんて、運が悪すぎじゃない?

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