歪だとしても、それは紛うことなき「愛」の物語。
- ★★★ Excellent!!!
読む手が止まらなかったです。久しぶりに寝る間を惜しんで読み耽りました。
ただの恐竜モノかと思えばSF・架空戦記的な側面もあり、日常系でもあり、パロディなどもふんだんに織り込まれたコメディであり、社会風刺や現代社会に対する問題提起も感じさせられたヒューマンドラマであり……。
だけど根底は「愛」の物語なんだなと思いました。男女の恋愛はもちろん家族愛、祖国愛、人類愛、種族愛……全てが肯定的なものではないけど、確かにそこに「愛」を感じました。その証拠に、愛なきもの・愛を踏み躙るものには相応の罰が与えられていましたね。ラストもこれまで積み重ねてきた「愛」で締めくくられ、物語は幕を閉じます。きっとこの先も彼らの「愛」の物語は続いていくのでしょう。
同時に「哀」のお話でもあったと感じました。未知にして未曾有の大災害に巻き込まれた犠牲者の方々、理不尽に晒され辱められ傷つけられる主人公たち、そして竜たちの存在。また、無遠慮で非常識で身勝手で外道そのものを体現した大衆という名の救いようがない哀しき存在。その横暴さと愚鈍さに途中で読むのを辞めようかと思うほどに苦しかったです。でも、現実に起こりうる話だと思います。特に冒頭の、非常事態だというのに避難せずスマホを構え危機に巻き込まれ犠牲になる民衆とかまさにそれ。
長くなりましたが、とても面白く素敵な作品だと個人的には思っています。色々と考えさせられる内容も込みで、読んで損はないと思います。可能であれば紙媒体で是非とも読みたいです。極力ネタバレにならないように感想を書いたので、もしかしたら「何言ってんだコイツ?」と思われるかもしれませんが、それでも構いません。ほんとうに面白かったので、とにかく読んでみて。
ただ、レーティングにある通り割と大人な描写が多いので、これから読まれる方(特に未成年の方)はご注意下さいませ。
最後に。作者様、素晴らしい作品ありがとうございます。とても読み応えがありたのしかったです。欲を言えば、竜側メインの番外編を読みたいです。
長文、失礼しました。