第41話 第一回クラスどうなん会議。

 ・和田山わだやま昂一郎こういちろう……わだっち。世界が違えば主人公だったかもしれない男。

 ・郷瀬ごのせ文斗ぶんと……ぶんちゃん。ラブコメだけがやし。時代はデンデレだよお。

 ・挙田あぐたあき……アッキー。見た目はリア充、中身はチー牛。情報通。

 ・柏原かいばらなごむ……なごさん。表向きは穏健派。意外と計算高い。


 【某ファミレスにて】


 郷瀬:何かが違うんだよお。

 和田山:物足りないんだよな。

 郷瀬:新田しんでんくんと委員長は幼馴染なじみだろお。でもなあ、なんか思ってる感じと違うんだよお。

 和田山:いや、それは俺も思ってた。あの二人は俺たちのような下衆が好むラブコメイチャコラムードもなければ、リアルな『そうは言っても他人ですし』ムードもない。家族感も漂わせなければ、嫌悪し合う雰囲気もない。なんかこう、テンションが低いんだよな。

 挙田:ポテンシャルは秘めてそうなんだよ、でんちゃん。これはある筋から手に入れた、中学でのでんちゃんたちの写真なんだけどさ。

 柏原:新田くんのこと、でんちゃんって呼んでるんだ。ある筋って何!?

 和田山:え? これ新田? ……と、委員長と童子山どうじやまさん?

 郷瀬:ぐわあああ。ま、まぶしすぎるんだよお。新田くん、あの陰キャそうな外見は偽装だったのかよお。

 挙田:しかもこれ、撮影してるのも他の女子らしくてさ。別の組み合わせバージョンの写真も存在するらしい。これはもう、新田王国と言っても過言ではない。

 柏原:新田王国! はあー、新田くんってそんな風に見えなかったけどなぁ。

 和田山:いや、あいつはやる時はやるタイプだと思ってたぜ。逆高校デビューとはなかなかのもんだ。

 挙田:さらに、これは同中の岸上きしかみの情報なんだけどさ。

 柏原:岸上って誰! ただでさえ登場人物の多い話で、初めての名前が出てきた!

 挙田:『新田? あいつ中学の時、彼女いたよ』と。

 柏原:なんでそんなモブっぽい話し方なの? 岸上。

 和田山:岸上はナイスガイだぞ、なごさん。

 柏原:そうなの?

 郷瀬:この前、廊下のゴミ拾ってるの見たよお。岸上。

 柏原:ナイスガイのハードル低いな!

 和田山:まあ、うちのクラスの男子は全員ナイスガイだし、女子は全員きらめいてるからな。それでいいじゃんよ。

 挙田:同意見だな。

 郷瀬:異議なしだよお。

 柏原:ええー? じゃあ、僕もそういうことで……。

 和田山:新田王国はともかく、うちのクラスもそろそろカップルが目立つようになってきたよな。

 郷瀬:比延ひえさんと、貸潮かしおくんとか。

 柏原:また知らない名前出てきた!

 挙田:ああ、あの二人付き合ってないらしいよ。貸潮くんは、蒲江こもえさんと付き合ってる。比延さんは二人の友人な。

 柏原:なんでも知ってるね! アッキーは!

 郷瀬:そういや俺は、三谷みだにさんのことが知りたいよお。

 挙田:三谷さんか。うーん俺、あのギャル軍団のことはよく知らないんだよ。なんか秘密を抱えてそうな雰囲気で。

 和田山:そうか? そうでもないだろ。

 柏原:そういやわだっち、合宿で妙に仲良くなってたね……。逆光のモルッカー……とかって。

 和田山:仲良くはねえよ。でも三谷さんのことだったら、ザーさんでも呼んで聞いてみるか?

 柏原:ザーさん!?

 郷瀬:だ、誰なんだよお。それ。

 和田山:猪篠いざさ希空のあな。ザーさん。暇してそうだから、呼んだらすぐ来るんじゃね? コッスも誘って。

 柏原:いや、コッスって誰!?

 和田山:横須よこす華奈はなだよ。あの二人、結構いつも暇してて、いつでも呼び出してくださいって言ってたし。

 郷瀬:がああああ。ど、どういう関係性なんだよお、ザーさんとコッスとわだっちは!

 和田山:単なるクラスメートだろ。

 挙田:……俺、わだっちの前では自分が小さく見える……。

 柏原:弱気になるなよ! みんなのアッキーだろ!?

 郷瀬:俺たちのアッキーだよお。

 挙田:ありがとう。俺、お前らがいればいいやもう。

 和田山:で、どうする? ザーさん呼ぶか?

 柏原:いや…………。

 郷瀬:………………。

 挙田:いきなりだと何話していいかわかんねえしさ、次の機会でいいんじゃね?

 柏原:アッキー……代弁ありがとう……。

 和田山:じゃあ、あいつら呼ぶのは第二回ってことで。


 (了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る