紫の煙

スロ男

紫の煙、もしくはパープルヘイズ。

 紫の煙などというけれど、あれはわたしにとってはマスクパターンみたいな、白だ。たまに肌の白いのを、青などといったりするけれど、そういう類の幻想だと思う。

 人は、そこにあらぬ色を見ようとする。

 例えば緑の黒髪とか。

 例えばブルーブラッドとか。

 わたしが埒にも明かぬそんなことを考えたのは、きっといま気のおけぬ関係になろうとしている男が、黒人だからなのかもしれない。

 山田詠美がラジオのパーソナリティを務めていた頃と違って、いまは大分偏見も薄れ、黒人と交際することなんて、個人の嗜好の問題と片付けられるぐらいの話だろうけど。

 わたしは、まだ逡巡している。

 交際するとは、つまり交接をするということで、黒人とイエローモンキーのなんて、何も考えずに産んで良いのだろうかと悩むからだ。

 まだ付き合うか付き合わないかの前に、そんなことを悩むなんて馬鹿らしい話なんだろうけど。


 紫の煙。

 パープルヘイズ。

 あの曲の紫の煙は、単なる工場が事故で燃え上がっただけの、詩的な表現としての紫の煙だったのだろうけど、妊娠という事態を考えてしまうわたしにとっては、また違う意味がある。

 妊娠中に煙草を吸うなんて、人権の侵害だとかなんとか、うるさくいう輩はどうでもいいけど、確かに自重すべきか、と思ってしまう自分がいるから。

 その反面、高齢出産になるから未熟児とか障害児とかになるのが心配、なんて言おうものなら、不惑を迎えて出産した人物が身近にいるからという理由で、本気で怒って、そんなこというな、みたいな友達がいたりもしたから、わたしは口をつぐむしかない。

 倖田來未が羊水がくさるから発言でホサれたのを、わたしはまだ忘れてはいない。

 結局人は、自分の考えが常識的で、そうでないものは糾弾すべき敵なんだと考えるのが大半なのだと思うと、わたしはなんだか寂しいし、苦しい。

 わたしが言っているのは可能性の話であって、あなたの知人を貶めるつもりも、あなたの常識を揺るがそうという意図もないのに。


 マンションのベランダで、紫煙を燻らせる。いまでは、ベランダで喫煙するなんて、常識がない、受動喫煙でガンにさせるつもりか、みたいな人が少なからずいるらしい。

 でも、そんなのクソくらえ、と思う。

 キリストは言った、罪を犯したことがない者だけ石を投げるがいいと。

 自分の罪を、生きてるだけで犯してる罪を、見て見ぬふりをして、おまえは何を糾弾するのだと。

 そうは言いながら、結局はわたしも自分を正当化したいだけなのかもしれない。

 吐き出された煙は、紫には見えなかったが、マスクパターンにも見えなかった。

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紫の煙 スロ男 @SSSS_Slotman

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