第12話:飛飛の嘘。
「あら、ありがとうヨシヒコ・・・」
愛彦の耳元で声がした。
その声を聞いて愛彦は飛び上がった。
聞き覚えのある声がすぐ後ろからした・・・。
「まさか・・・」
愛彦は振り返って自分の目を疑った。
それは、どこにいたのか・・・ 消えたと思ったはずの飛飛だった。
彼女は背後霊のように愛彦のすぐ後ろにいた。
気配すら感じさせずに・・・匂いすら消して・・・。
「なんで? 」
「なんで、いるんだ・・・鏡は割ったのに・・・」
「消えてないって?」
「残念でした・・・鏡が割れると私も消えるって言った話」
「あれは、ウソだよ」
「う、うそ?」
「そう言えば愛彦が必ず鏡を割ると思ってたから・・・」
「ヨシヒコ・・・私を疑ってたでしょ」
「だから、誘導したの・・・鏡を割るように・・・」
「もし鏡があったら、いつ誰かが私を封じ込めにやって来るかもしれない
じゃない・・・」
「この街にだって、そんなことに詳しい変態がいるかもしれないでしょ?」
「幸い、ヨシヒコは私を封印する方法を知らない・・・」
「だから鏡を割らせたの」
「実はね、ひいじいさんも好奇心から私を鏡から出しちゃったんだけど、
そのうちヨシヒコと同じで、私を怪しい女だと疑い出したの」
「だから、ひいじいさんにも鏡も割らせようとしたんだけど、
愛彦のひいじいさんは用心深い人だったかったからね・・・「鏡を割ったら、
私も消えちゃうよ」って言ったんだけど、それじゃもったいないって、
ひいじいさんは思ったんじゃないの?」
「どこかからお坊さんを連れてきて封印の呪文で私を鏡に閉じ込めたの・・・」
「ヨシヒコはひいじいさんと違って、素直だし、すぐ人の話を信じちゃうから」
「思ったとおり鏡を割ってくれたね」
「もう、これで大丈夫だね」
「鏡に閉じ込められることもなくなったし・・・」
「鏡の呪いが解けたから私はなにも気にせず仙女として生きていけるの」
「え?・・・じゃ、なんで今まで鏡から出た時、自分で鏡を割らなかったの?」
「私には鏡は持てないの・・・もし鏡を持ったりしたら、それこそ鏡の中に
吸い込まれちゃう・・・」
「ヨシヒコ、騙してごめんね・・・悪いと思ってるんだよ」
「でもね、私は鏡なんてしがらみなくヨシヒコと心から愛し合いたかったの」
「本当の気持ちだよ・・・」
「そのためには、鏡は邪魔だったの・・・」
「閉じ込められる場所がなかったら安心できるでしょ、自由でしょ・・・」
「本当に、騙してごめんね・・・」
「いいんだ・・・なんだかその話を聞いてホッとしてるよ」
「僕のほうこそ鏡を割っちゃってごめんね」
「謝んなくいい・・・そうさせたのは私だから・・・私が悪いんだよ」
「許してね、ヨシヒコ・・・」
愛彦は愛しい飛飛を引き寄せて抱きしめた。
「あのさ・・・前から聞きたかったんだけど、なんで鏡に閉じ込められてたの?」
「聞きたい?」
「言いたくないなら無理にとは言わないけど・・・」
「・・・私、前は崑崙山の仙女だって言ったでしょ、その話はほんとだよ・・・」
つづく。
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