中間試験 1
てってれー!
ふははははは、見よ、諸君!
夜、わたしはスマホのステータス画面を開いて悦に浸っていた。
名前 マリア・アラトルソワ
誕生日 四月一日
称号 アラトルソワ公爵令嬢
レベル 三
魔力 十七
習得魔法レベル 一
頑張って週二回の補講を受け続けた結果、レベルが上がりましたよ!
これでファイアーボールが三発打てます。
ただ、レベルが三までは比較的すぐに上がったんだけど、四にはなかなか上がらないのよね。どうやら三から四のレベルに至るまでに必要なポイントは、これまでよりもたくさん必要みたい。
だが、まあいい。
とりあえずファイアーボールが三発打てれば、来週からはじまる中間試験の実技試験は大丈夫だろう。優等生にはなれずとも、悪目立ちしないくらい……つまり、魔法に失敗しないレベルで、試験に臨めるはずだ。
補講のご指名があったときは、最初は嫌で嫌で仕方がなかったけど、補講を受けてよかったよ。
これで普通の授業でもポイントがもらえればもっといいのだが、いかんせん去年の授業をまったく聞いていなかったわたしは、早くも授業についていけていないのだ。
魔法学の補講を受けるだけではなく、自主的に去年の授業内容を復習しないことには、かなりまずいかもしれない。というか、中間試験の実技のことしか考えていなかったけど、筆記が早くもピンチである。来週……土日を挟んであと四日で、何とか詰め込めるだろうか。
アレクサンダー様に「生涯をかけて君を守る」的な発言をされてから、アレクサンダー様は補講中にもよく顔を出すようになった。
ニコラウス先生は「仲がいいんですね」などと微笑んでいるが、わたしを守る騎士のように、補講中にべったりと背後に張り付いているアレクサンダー様を見て「仲がいい」という一言で片づけられるニコラウス先生は大物だと思う。
……本当、学年が違ってよかったよ! これで同じクラスだった暁にはとんでもないことになっていたわ!
アレクサンダー様は責任感の強い方のようで、わたしに怪我を負わせた責任でわたしを守ると言っているが、あれはわたし自身が自爆したようなものだ。アレクサンダー様は何も悪くない。
だけど、アレクサンダー様に責任を感じてもらわなくていいですよと何度告げても、「君は優しいな」という明後日の回答しか戻ってこないのだ。もう、アレクサンダー様のことがよくわからない。あれだけゲームをやりこんだというのに、わたしは「アレクサンダー・ナルツィッセ」というキャラを見失った気分ですよ。
いくら現実とは言え、ここまで様変わりするものだろうか?
アレクサンダー様は、悪役令嬢マリアが大っ嫌いだったはずなのに!
まあ、わたしとしても、嫌われるよりはいいとは思うけれど、せめてもう少し普通の、そう、友人のように接してくれないだろうかと思ってしまうのだ。
だってこれじゃあ、わたしがアレクサンダー様をかしずかせているみたいじゃないの! イケメンをかしずかせるなんていかにも悪役令嬢っぽい。このままこの状況を放置しておくと、そのせいでわたしの首が知らず知らずにしまっていくような気がして、不安で仕方がないわ。
……って、今はアレクサンダー様のことじゃなくて、中間試験のことを考えなくちゃね!
アレクサンダー様をどうするかはおいおい考えるとして、盲点だった(気が付かなかったわたしもどうかしていたけど)筆記試験対策をしなくては!
わたしはスマホを枕の下に納めると、心に固く誓う。
……よし、明日から、中間試験のためにもう勉強するぞー!
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