【#33】謎の洋館の戦い

『フォッフォッフォ! さぁ、どうぞこちらへ……』


 老執事の悪魔──マクサルの幻影に案内され、不気味な洋館ようかんの中へと入っていく。


 まず、洋館のエントランスホールへ。


 そこは二階へ続く大型の中央階段が印象的な場所で、1階から2階まであらゆる場所に扉が配置されていた。


 そのフロアの内装も不気味な巨大絵画やら、壁側にズラッと並ぶ謎の西洋甲冑やらと……ホラーの雰囲気たっぷりだった。


 :某ホラゲーで何回も見たような光景だな?

 :こりゃ絶対迷いますわ……

 :パーティーが全員女の子なのもあいまって……B級ホラー感ぱないな!!


 そうして三人全員が館内に入った、その時。


 バタン!!


「「「あっ!?」」」


 背後で館の入り口が勝手に閉じた!! ノブを押しても鉄のように動かず、完全に閉じ込められた形となった。


『フォッフォッフォ!! あっさり引っかかったのーーーーう!! 閉じ込め成功じゃーーーーーー!!』


 興奮気味に叫ぶマクサルの幻影へ、俺はジトーっと呆れた視線を投げかける。


「……ふーん、やっぱ罠だったんですね?」


『当たり前じゃろうがぁーーーーー!! 我があるじより、"貴様ら御一行ごいっこうはたっぷり歓迎してやるように"言われてるんじゃよーーーーー!!』


 それからマクサルの幻影は覗き込むように、ハァハァと息づかいを荒くして鼻の下を伸ばしながら言う。


『オマケにそのうち二人はピチピチの美人じゃから、ワシとしちゃぁ余計にテンション上がるわい!! ま、ガキの天使は別にどうでもいいがの……』


 すると、その余計な一言にミカリアちゃんがブチギレる!!


「ハァ〜〜!? このミカリアを!? ふざけんじゃねぇーわよ!? ざぁーこ!! ざぁーこ!!」


「お、落ち着いてください、ミカリア様。きっと三流の敵には分からないんですよ、貴方様の魅力は……」


 ミカリアちゃんを「まぁまぁ」となだめるフィオナさん。

 飼い犬のように抑えられたミカリアちゃんが面白かったためか、コメント欄もかなり盛り上がっていた。


 :今日のミカリアちゃん、キレッキレだな……

 :まぁ、昔から悪魔は天使を相当嫌ってるそうだからな

 :↑み、ミーにはただ単に幼女が趣味に合わなかったように見えるが……


『さて、これから貴様ら三人をこの館でじっくり調理してやるぞ〜〜い!! よーく聞け!! 今からここでするのは"かくれんぼ"じゃ!!』


 マクサルの幻影は階段の手すりの上に座ると、得意げな口調でルール説明してくる。


『よいか? ワシの本体はこの館のどこかにおる!! つまり、隠れたワシを見つけられるかの勝負じゃ!!』


「なんだ、それだけですか? こっちは三人いるから速攻で見つけてやりますよ!!」


 :いいぞー!! 酒クズちゃん!!

 :こんなふざけた悪魔ジジイ……ぶっとばしてやれ!!


『フン!! 軽く見ておるようじゃの、"酒飲みの女"!! ──そう、貴様だけは生けりにするように我が主より命令を聞いておる!! 覚悟しておくんじゃなぁーーーー!!』


 やはり最初の挑発のせいか、俺は"剣の悪魔"とやらに目をつけられているらしい。まぁ、それ自体は構わないが。


智略ちりゃく担当のマクサルの実力……存分に思い知れぇーーーーーーーーい!!』


 マクサルが指を鳴らすと、館内の仕掛けが一気に作動した!!


 壁から鉄の矢が無数の飛んできて、静止していた西洋甲冑がデュラハンとなって動き出す。さらに蝋燭ろうそくから発生する小悪魔のインプ達──なんて数だ!!


『フォーフォッフォ!! やれぃ!! やれぃ!! 奴らをフクロダダキにするんじゃーーー!!』


 こうして俺達三人は大量に襲いかかる罠に対処しないといけなくなった。


「この……!! うっとうしいわね〜、このザコがぁ〜!!」


 鬼の形相で光魔法を乱射するミカリアちゃん。そんな彼女に肝を冷やしつつ、俺はインプを次々と斬りながら言う。


「このままじゃキリがないです!! どうにかして、あの悪魔の居場所を突き止めないと!!」


 すると、ロングランスで敵を倒したフィオナさんが、さりげなく耳打ちするように言ってくる。


「アヤカ殿。幻影はといいます。さっきの敵の様子を見るからに……意外と近くにいるのかもしれません」


「!!」


 今までマクサルの幻影は俺達と話していたワケだが、まるでだった。

 もしフィオナさんの言う法則が適用されるのであれば、たった今この瞬間も本体が俺達をこの場で見ていることになる。


 だが、肝心なその場所が分からない。せめてあの幻影を揺さぶれる方法があれば、その動きから計算して予測できそうな気はするが……。


(……いや、待てよ?)


 俺はふとマクサルの行動を思い出して、が思い浮かんでしまった。


 しかし、その作戦にはちょっとした問題があった。別に難しいというワケじゃないんだが、自分の中で心理的な抵抗があった。


(でも……その方法なら!! もうやるしかない!!!)


 そうだ!! "この作戦"をやれるのは俺しかいない!! 色んな意味で!!


 俺はついに覚悟を決めて、その作戦を実行する事にした!! とりあえず──!!


「んっ!! んっ!!」


 まずは気合い入れに一発飲む!!


「ぷはーーー!! うまぁーーーーい!!」


 高アルコールのバーボンを一気に飲み干した俺へ、マクサルの幻影は『予想通り』といった様子で嘲笑あざわらってくる。


『フォッフォッ!!知っておるぞ? お主は【酔剣】とやらの使い手じゃとなぁ? 智略にけたこのワシ……すでにインターネットでリサーチ済みじゃよ!!』


 :ネットかよ!?

 :俺らと変わんないじゃん……

 :智略担当(笑)


『う、うるさいわ、ネットの有象無象うぞうむぞう共がぁ~!? とにかくのぅ、いくらお主の【酔剣】とやらが強くとも、ワシの居場所が分からぬなら無意味じゃ!! 残念じゃったのぅ!!』


「んー? そうですかね〜? ま、これから見せる技は、別に【酔剣】は関係ないんですけど……」


『……なんじゃと?』


 俺の言葉に対し、眉をひそめるマクサル。


 ……いよいよだ。こうなったら、全部酒の勢いのせいにしてやる。


 男を──いや、、俺!! 行くぞ!!


「あぁ〜♡ さっきから強めのお酒を飲んでるせいか……なんだか急に暑くなってきちゃいましたぁ〜〜♡」


 そして──

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