【#23】コスプレトランプゲーム!!

 その後、ティーシャが友達からコスプレ衣装を借りてきて──ついに全3回戦のババ抜きが開幕する!!


【第一ゲーム】


 すでに第一ゲームは佳境かきょうにさしかかっていた。


「ティーシャ……いきますよ!?」


「ど、どこからでもかかってきていいよー!?」


 まず、ラビスさんが1位抜け。あとはティーシャか俺、どちらかが最下位になるか。大事な勝負だった。


 そんな緊張感あふれる状況で……俺はティーシャの持つカードへと手を伸ばす!! 残る二枚のうちのどっちか──ジョーカーを引かなければ勝てる!!


 そして、俺が引いたカードは……!!


「とりゃーーー!! よーーーし!! 揃ったぁーーーー!!!」


「あー!? 負けたーー!?」


 :おー!? ティーシャが負けた!?

 :チッ、酒クズにはならんかったか

 :まぁ、まだあと2ゲームあるし


 よし!! ギリギリ2位で勝てた!! あぶねぇ!!


 その勝負を見守っていたラビスさんは、待っていましたとばかりにガッツポーズした。


「うぇーい♪ 今回はウチが1位ッスからティーシャに罰ゲームッスねー!」


(……ふぅ、よかった)


 結局、特におかしな事はなく第一ゲームが終わった。


 しかも、最下位はティーシャ。

 ……やっぱさっき彼女から感じた怪しさは、気のせいだったのかもしれないな。


 そして、ラビスさんが用意した衣装は──。


「それじゃ、ティーシャにはこのバニースーツを着て欲しいッスー!!」


「えぇ〜!? ラビスちゃん、これは大胆すぎるよ〜!? 参ったなぁ~~~?」


 露出度の高いバニースーツに引いた様子のティーシャ。だが、そうは言いつつもちゃんと更衣室で着替えてくる。


 そして──ついにバニーガール姿のティーシャが現れた!!


「あぁ〜♪ あたし猫耳族キャトルなのにバニーガールにさせられちゃった〜♡ ウサウサ〜♡」


(おぉ……なんと素晴らしい!!)


 いつもの銀髪猫耳にウサ耳飾りを装着し、酔いによって顔を真っ赤にしたティーシャ。


 そんな彼女が頭に両手を乗せて"うさぎさんポーズ"している様子は、あまりにも貴重すぎるシーンだった!!


 :可愛い!! 可愛い!!

 :神すぎんだろ……

 :ノリ良すぎて草。流石はプロ


 そんなバニーガールの格好のまま、再びティーシャはテーブルについていく。


「よーし!! じゃあ、2回戦行こっか!! こうなったら、ラビスちゃんに仕返しだよ!!」


「ふふっ♪ のぞむところッス!!」


【第二ゲーム】


 そして、そのまま第二ゲーム開始。そのゲーム中、カードをやり取りするうちにこう思った。


 今日の俺は──かなりツイている。


「あっ、また揃いましたね♪」


 俺が揃った数字のカードを置くと、向かいの二人が焦ったように声を上げる。


「え~!? もう酒クズちゃんあがっちゃうッスよ!?」「む~~!? アヤカちゃんに逃げられる……!?」


 :おいおい、酒クズちゃんはもうあと一組作ったら終わりじゃないか?

 :意外とギャンブル得意なのか?

 :実際、運はめちゃくちゃ良さそうだもんなぁ


「フフフ……なにせわたしはカードに関しては得意ですから!! 過去に"決闘王けっとうおう"カードゲームで地区大会5位の成績を収めた実力者ですので!!!」


 :意外な趣味で草。反応しずらい戦績でさらに草

 :こんな美少女がカードゲームをやってた……だと?

 :ギャップすごすぎる!!

 :今度対戦してくれよーー!!


 そんなくだらない話をしつつゲームを進めると──ついにチャンスが巡ってきた!!


「やった!! いち抜けーー!!」


「うぎゃーー!?」「早すぎるッスよ〜!?」


 よしよし、あとは見守るだけだな。


 残された二人は正面で向かい合う形になって言う。


「じゃ、ティーシャパイセン。恨みっこなしッスよ?」


「……うん! 悪いけど、二回連続ビリは阻止させてもらうからね!!」


 次はラビスさんが引くターン。そこでさっそくゲームが動いた。


「うわっ!? ジョーカー来たッス!?」


「よーし!!」


 ティーシャがジョーカーを引かせる事に成功。そして、そのまま勢いに乗ったティーシャは──。


「あがり!!」


「あぁ〜〜〜!? やられたッス〜〜」


 ラビスさんが最下位。つまり、俺がコスプレさせるのは彼女に決定した。


「うーん。ラビスさんには何を着せましょうかねぇ〜?」


「さ、酒クズパイセン……あんまり過激なのは勘弁してほしいッスよ?」


「さて、どうしましょうかね~♪」


 :ぐへへ……

 :この酒クズのゲス顔よ!!

 :思いっきり行ったれ! ワイが責任とったる!!

 

 並べられた衣装の前で悩んだ後、俺は一つビビッと来たものを選んだ。


「じゃあ、で!!」


「うぇー!? まさかのッスか!?」


 その後、お着替えタイムを挟んで、装いを新たにしたラビスさんが登場する。


「……酒クズパイセン、えっちッス」


 更衣室から出てきたラビスさんは、"チャイナドレス"を恥ずかしそうに着ていた。


 淡いエメラルドグリーンのきらびやかな中国の衣装。

 下半身の両サイドには切れ込みスリットが入っており、ヒラヒラと舞いながら褐色の肌を覗かせている。……なんだか見ていてらされる光景だな。

 

 :うおぉぉおおおおおお!!

 :控えめに言って最高ッス!!

 :エロすぎる……


「はぁ〜!! 恥ずいッスよ~~!!」


 ウサ耳を畳んでモジモジしているラビスさんへ、バニー服のティーシャがニヤニヤと煽っていく。


「ラビスちゃん、よく似合ってるよ♡」


「からかわないでくださいッスよー!? もうーー!?」


ラビスさんは勢いよくテーブルへ戻り、俺の方をジトーっとにらみつけて言う。


「こうなったら、最後は意地でも酒クズちゃんに着てもらうッスよーー!?」


「フフフ♡ 今日は調子いいですから、このまま勝っちゃいますよーー♡」


 そう、今日は負ける気がしなかった。この時までは。


【第三ゲーム】


 そして、ついに第三ゲーム。

 

 その開始直後に俺は信じられない光景を目撃した。


「ありゃ? 〜?」「あっ、ッスね」


「は……?」


 つい呆然としてしまう。そして、俺の手元に残ったのはジョーカーだけ。ってことは──。


「わ、わたしの負けぇぇええええ!?」


 :ちょっ!? こんなことあるの!?

 :流石に滅多にない……と思う

 :とにかく酒クズちゃんの負けは確定だーー!!


「あ、ありえない!? どんな確率ですか、これぇ!?」


 :ババ抜き三人で初手で終わる確率は……なんと10万分の48らしい

 :ま、普通はどう考えてもありえんわな

 

 そうだ。こう都合よく起こるはずがない。


 呆然としている俺に対し、ラビスさんが仕方なさそうに言ってくる。


「まったく、ズルい人ッスねー? ティーシャパイセンは?」


「あっ、バレてた?」


「???」


 ペロッと舌を出すティーシャ。ま、まさか、彼女の仕業なのか……!?


 すると、ラビスさんはティーシャの右手を掴んで言う。


「【絵描き師ペインターの指輪】。これを使えば、対象が紙であれば数分間だけ絵柄を自由に変更できるッス。

 ──つまり、ティーシャはトランプを配る時によくんスよ」


「せいか〜い♡」


 :えっ!? ティーシャ、イカサマしてたの!?

 :全然気づかなかった……てか、今までは普通に勝負してたよな?

 :あぁ。だからこそ、この土壇場でイカサマを出してきたんだろう。酒クズちゃんを油断させるためにな


 くそっ!? なんてことだ!? こうなったら、こっちも抗議するぞ!!


「ズルいですよ、ティーシャ!? そんなチートアイテム使って”クソゲー”しかけるなんてーーー!? というか、そもそもゲームすら始まってないからこんなのやり直しです!! ノーカン!! ノーカン!!」


「ふふっ♡ 一ついいかな、アヤカちゃん?」


 そして、ティーシャは黒みを帯びた可愛い笑みで言った。


「イカサマっていうのはね、見抜けなかった方が悪いんだよ?」


「うわぁぁああああ!? ティーシャの鬼!! 悪魔!!」


 俺は散々騒ぎ回った後、またウイスキーをあおって落ち着いた。ここはひとつ、俺が大人になろう……。

 

「まぁ、見抜けなかったわたしも迂闊うかつでしたし、遊びの席なので許しますよ。……それで今回は1位が二人いますけど、どっちの希望を聞けばいいんですか?」


「じゃあ、その権利はティーシャに譲るッス!!」


「ありがとー、ラビスちゃん♪ アヤカちゃんに着て欲しいのはこれでーす♪」


 ティーシャが選んだのは、すごく見覚えのある衣装だった。というか──。


「これ……ティーシャのメイド服じゃないですか!?」


「そうだよー♡」


 ティーシャはお馴染みのメイド服を抱くようにして、ニヤニヤと俺の方を見ながら続ける。

 

「アヤカちゃんも前々から”猫民ファン”だっていうからさ~、~って思ってたんだよねぇ♡」


「えっ……!? えぇ~~!?」


 :酒クズちゃん、早く着てくれーー!!

 :オレらと同じ猫民ねこみんなら着れるよな!?

 :酒クズちゃんのメイド姿見てみたいなーー!!


「わ、わーかりましたよ!? 着ます!! 着ますよーー!! 着ればいいんでしょーー!!」


 ~5分後~


「お、お待たせしました……!!」


 そして、俺は更衣室から出た。ティーシャのメイド服を着て。


 もちろん推しの格好をしているのも恥ずかしいんだが……やはり気になるのは匂いだった。


 もちろんとてもよく洗濯されているが、それでも彼女独特の甘い香りがほのかにしてくる。まるで感じだ!! あ、頭がおかしくなりそうだ……!!


「ふぉ~~~~♡ アヤカちゃん!!! すっっっっっごく似合ってるよぉ~~~~~~~!?」


 そして、興奮したように叫ぶティーシャご本人。


 彼女はそのまま駆け寄ってきて、スクープを手にしたカメラマンのようにスマホで撮影してくる!! 


「や、やめっ……!? 撮らないでぇ~~~!?」


「やめなぁ〜〜い♡♡♡」


 :厄介カメラマンで草

 :ティーシャ、酒クズちゃんのことホントに気に入ってるよなぁ……


 すっかり酒もあいまって暴走したティーシャに対し、ラビスさんが軽くたしなめるように言ってくる。


「ティーシャパイセン〜? 酒クズパイセンも困ってるし、せっかくならみんな一緒に撮るッスよ? リスナーのみんなにも、三人一緒の写真を見てもらった方がいいと思うッスけど?」


「ふふっ♪ それもそうだね~♪」


 すると、ティーシャは俺の肩に腕を回しながら言ってくる。


「じゃあ、アヤカちゃん♡ 一緒に撮ろ~♪」


「ひっ!? は、ハイ~~!?」


 そのまま三人で並び、ラビスさんが撮影ドローンを操作しながら合図する。


「それじゃ、3つ数えたら撮るッスよ~? 3,2,1……うぇ~い!!」


「うぇ~い♡」「う、うぇ~い……!!」 


 それからも三人でコスプレしたまま、気の済むまで騒ぎまくった。


 ……後日、アーカイブを見直すと死ぬほど恥ずかしかったが!!


──あとがき──


次回より3章となります

 


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