第86話 奇襲をさらっとかわしたナイトワーカーズ

そして5:12分。


グリミー伊藤の関東便が戻ってきた。その2~3分遅れで沢寺の上越便が戻ってきた。


草加部は大沢に指示を出した。


「俺が仕分けをしてるから先に2班の荷物を降ろしてくれないか。」

「はい、そうですね。」

と大沢は急いで降ろしに行った。


グリミー伊藤がトラックから降りて来た。いつもより早い。いつもならひどいと20分は降りて来ない。その間、構内作業員に降ろさせようという魂胆だ。明らかにいつもと違う。


伊藤はガニ股でチョボチョボと狭い歩幅で歩きながら構内を見渡した。思ったより片付いていたからか残念そうな表情に見える。すぐに荷降ろしを始めた。


沢寺も構内を見渡した後、荷降ろしを始めた。


2台同時で降ろされるということは、1台を2人で降ろされるスピードと一緒で荷物の量は倍ということになる。


伊藤の声が聞こえる。


キーウキーウッキー


沢寺はそういうタイプの人間ではない。周りに合わせたのだろう。


草加部は冷静だった。


”荷物は逃がせばいい。”


”パレット物を置くスペースもある。”


”7時半に終わればいい。今は5時15分だ。”


”あと、45分で帰れる。”


淡々と仕分けをしていた。


2班で作業している大沢はスピーディにこなしていた。早い。


グリミー伊藤が沢寺に何やら言ってる。


「作業員ごときが6時に帰るんだったら、こっちだって。」


草加部は、それを聞いて確信した。


”やっぱりそうか。榊から聞いたんだ。なるほどね。じゃあ何?夜間作業員が早く帰ることにすれば時間短縮するようになるんだ。なんだよ。できるんじゃねえか。”


”荷降ろしの手伝いは関係ないということだ。”


”これがナイトワーカーズの影響力ということだよな。”


大沢も仕分けに戻ってきた。


二人は淡々と仕分けをしては、溜まった荷降ろし台車を逃がしていった。


荷降ろし台車はどんどん溜まって行った。


草加部と大沢は必死にこなしていった。


そして5:58分。

カイさんと林が出社した。


カイは周りを見渡し、どういう状況なのという表情でコの字に来た。


「おはようございます。」太い声でカイが言った。


「おはようございます。」と、あっちを見ながら林は言った。


草加部が大きな声で言った。始めが肝心だ。


「いつもより早く来ただけです。これは7時30分頃まで終わればいい荷物なんですけど、我々必要ですか?」


その大きな声はグリミー伊藤や沢寺にも聞こえた。二人は意外な草加部の言葉に驚いていた。


ウキー全然困ってる様子ないじゃんキーーーー


カイは驚いた表情をしたが、グリミー伊藤の様子と時計、溜まった台車を見て、


「上がって下さい。次は8時過ぎにしか来ませんから。」と答えた。


草加部は、


「ありがとうございます。」と言い、大沢君に「あがろう」と言ってあがった。



ーつづくー

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