第57話 あれって、まじない(御呪い)?

2023年3月15日水曜日、朝7:02分。

事件が起きた。


草加部がブチ切れた。

さすがにカイさんとグリミーが止めに入った。


グリミー2号と1号に感化され、

夜勤が仕事をしていないかのような風評が蔓延していた時、いわゆるグリミー蔓延状態。


草加部が配達ドライバーの安部誠二に業務上の必要なことを聞きに行った。


「これ、どうします。朝に持って行かないなら逃がしておきますけど。」


ホームがいっぱいだったので気を遣ったのだ。

安部は隣のホームのドライバーと話しをしていたが、割り込む形で草加部は聞いた。それほど急いでいたのだ。


そしたら、安部が草加部の顔を真顔で見たものの、無視をして歩いて行った。


かと思ったら、


「話しに割り込まないで。」と正論っぽいことを言ってきた。


草加部は、真顔で見てから無視して歩いて行ったバカにしたその態度にブチ切れた!


「おいっ!おめえはここで何年働いてんだよ!この時間帯に業務上のこと聞かれて割り込まないでだー、ふざけたこと抜かしてんじゃねえよ!」


「割り込まいでって言ったの。分かる?」


「分からねえよー!!!!!割り込まれたくないほどの話しをしていてどうしてここを去ったんだよ。正論っぽいこと言ってんじゃねえぞ!」


草加部の声が構内前部に響き渡った。

グリミー蔓延状態の中だったので、キレている草加部をバカにしている声も聞こえた。笑い声も聞こえた。


「くだらねえ。」

「忙しいからってイラついてんじゃねえよ。」


グリミーは喜んで見ている。

「キーーーーーー!」


カイさんは気になっていた。

大沢は、「んっ?何?」って感じだった。


「キーー、ウキィー、ウッキッキー!」

「mo-mo-mo-」

「ウホウホウホ、ウホウホ」


安部は、

構内の雰囲気を察し、動物的勘で、

全員が味方であるかのような錯覚を起こしたのだろう。


「仕事してねえくせに!」


無意識に草加部の癖が出た。

左肩が上がり後ろに回る。顔も左に傾き、そして正面に戻った。


すかさず草加部が斬った。


「何をすれば夜勤は仕事したことになるんだ。なあ!知らねえくせに、なんでおめえが夜勤の仕事の内容、範囲を決めて評価までしてんだ。!おいっ!」


構内に響き渡る。


草加部は続けた。


「自分の仕事を押し付けて夜勤をバカにしてんじゃねえぞ!仕事してねえくせにっていうのはどういうことだ!」


さらに響き渡る。


「だから、何をやったら仕事したことになるのかって聞いてんだよ。おーーーーい!聞いてんのか?おーーーい!おめえが言い出したことじゃねえのかよ!日本語が分かんねえのか!だからおめえが言ってきたことだろうって言ってんだよ!舐めてんじゃねえぞ!おーーい!」


さすがに、笑いながら見ている者はいなくなった。


構内は静まり返った。


「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」


カイさんやグリミーもさすがにヤバいかもという感じで気にし出した。


大沢は見守っている。

”もっと言ってやれ!”

大沢もバカにされ続けてきたわけだから本当は自分で言いたいんだと思う。


草加部の「舐めてんじゃねーよ」の、

鋭い覚悟を決めたかのような声の響きに構内の雰囲気は一転した。

今までバカにしてきた配達ドライバー達も言われたら答えられないだろう。


それを更に草加部は突く!

構内にいる全員に向けて大声で叫んだ。


「答えられねえのかーーおいっ!ただ言っただけとでも言うつもりか?逃がさねえぞ!こらっ、だから、何をやれば仕事したことになるのかって聞いてるんだーー!自分の仕事を押し付けようとして、なに威張ってんだーー!」


これだけ言っても気が収まらない。


さらに続けた。


”あのバカにした目つきと態度”


構内全員に聞かせるようにわざと言った。


「ついでだから言ってやるよ!おめえはいつも何で夜勤にケチばかり付けて、なんで、夜勤が悪いことをしたかのように言うんだ!夜勤が何かしたかっ!こないだのだってなんなんだよあれは!何で能見に頼まれた作業やっただけなのにおめえが俺に文句言うんだよ。おかしいだろうが!なんで指示を出した能見じゃなく、指示された側の夜勤が文句言われなきゃいけねえんだよ。挙句の果てに仕事してねえくせにとはどういうつもりだ。」


やはり気が済まない。


草加部は感情を抑えきれず、安部に向かって行った。


カイが草加部を止めた。


肩を押さえた。


草加部は、止めんじゃねえよくらいの勢いでカイに言った。

「おいっ、こいつはバカにしすぎだろうが!夜勤が何をしたって言うんだ。3年以上だぞ。おめえに分かんのかよ!この屈辱が!」


グリミーも止めにきた。


配達ドライバーの何人かが草加部さんが正しいと言い出した。その中に1号の嵯峨も紛れていた。


カイさんが草加部に言った。


「一緒に変えましょう。」静かな声で誰にも聞こえないように。




・・・・・・。


草加部は涙が出てきた。


カイさんが、「今日はあがって下さい。」と。


草加部は従った。


グリミーは後ろで言っていた。

「草加部さんが正しい。」


”グリミーが押さえに来てたら技をかけていたと思う。”

”ちくしょう、今日に限ってグリミー村上は休みかよ。”


”カイさん、あれって、まじない(御呪い)だよな。”


ーつづくー

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