第三章 民族紛争

第55話 民族紛争勃発から半年

2022年12月8日木曜日。24:54分


民族紛争勃発から半年が過ぎた。


だいぶ寒くなり防寒着を来て仕事をしている。街路樹のアオダモも落葉が終わり、すっかり冬という感じだ。


3ヶ月前にカケルさんが亡くなったという話しが聞こえてきた。配達ドライバーがいつもの配達先から聞いたらしい。そこはカケルが以前に勤めていた会社でそこの従業員がどこかで聞いてきた話しだということだ。夜勤の草加部の耳にも入ってきた。車を運転していて橋から転落したらしい。自殺じゃないかという噂もあった。


その後、公安の佐藤との接触で、

「事故で処理しておきました。」と言われた。


一応、とぼけたが見透かされていた感じもする。

「事故ですか?」

「ただ、事故では説明できないことがあるんですよ。」

「自殺という噂もありましたが。」

「いや、そういうんじゃないんです。」

「何ですか?」

「いや、守秘義務がありますので。」


ということだ。


民族紛争は泥沼化していて相変わらずだった。


「あっちをやるなら、こっちもやれ、公平に。」


という呪いの言葉は聞かなくなった。


ただ、作業員側が、今までやっていたパレットの組み換えをやらないことになったことで、


“やらないことへの抵抗感みたいな罪悪感。”


みたいなものがあった。

この半年間はそれとの葛藤だった。


それでも、貫いた。

反発してやらせようとした配達ドライバーもいたが、最近はめっきり減ってきた。


グリミー1号、2号は毎日、とにかく毎日エグかった。それだけならまだ我慢できるが、グリミーがそれに乗っかり、とにかく陰湿だった。


本来なら、誤仕分けがない方が絶対に良いわけだから、構内作業員が一丸となって誤仕分けゼロ作戦とかやって、誤仕分けを減らす努力をするべきなんだと思う。人がやるわけだからゼロは無理だろう。ただ、精度は上げらるのではないかと思う。


ここは何かが変だ。


ナイトワーカーズのクワガタ作戦は来年になりそうだ。

本を書くって難しい。

読んでくれる人がどういう訳か少しずつ増えてきた。と言っても前よりという話しだ。金髪でスタイルがいいカイさんは呪術使いだったという設定がよかったのだろうかと考えている。


工作員の綿貫とは挨拶するくらいの関係でいた。

おそらくこちらの情報は佐藤から行っているだろう。

あくまで弐零弐肆にいれいにいよんが送り込んだ覆面ドライバーなわけだから、あまり干渉しない方がいいと思う。

目立たず、そつなく業務をこなしてる。間違いなく優秀な人だ。


情報収集は続けている。


ここのところの動きとしては、

グリミー2号の村上が、草加部達にパレットの組み換えや、更に荷物を細かく整理させ、口毎、種類毎、積む順番に合わせた荷物の置き方をやらせようと、風評の流布作戦、威嚇作戦、誤仕分けに対しての罪悪感を利用した心理作戦を画策していたようだ。グリミー1号の嵯峨が補佐として着いているようだった。感化されている配達ドライバーも増えている。エスカレートしているところをみると実行に移されたのかもしれない。


これらを利用してグリミーが巧妙に狡猾に、草加部と大沢にハラスメントを仕掛ける。厄介だ。グリミーは夜勤の作業ぶりを荷物の整理具合で憶測し、重箱の隅を突っつくように、どうでもいいちょっとしたことをグリミー2号と1号に情報として流していた。


さらにグリミーは、2号の村上が画策した作戦に乗っかり、

「キーー、夜勤なんか暇なんだからできるよ。俺はやってたんだキー。」

と触れ回っていた。


グリミー民族としては、夜間作業員ができっこないこれらの作業をやらせて、そのやっている姿を見て野次を飛ばし、物理的に不可能なことを切りなくやり続けている姿を想像して、それに向かっている。楽しんでいるのだ。


完全に向こう側に行ってしまいグリミー化した偏った者達は、この工程自体を楽しんでいる。


大型ドライバーのグリミー6号の伊藤と、7号の榊もこれに加わり、夜勤なんか遊んでだからと風評の流布作戦や、もっと細かく仕分けさせろよという煽り作戦で、罪悪感を植え付け、どさくさに紛れて荷降ろしを手伝わせようと、あわよくば、荷物を降ろさないで到着したらそのまま置きっぱなしで帰れるように仕向けているのが見え見えだった。


こんな状態だった。

笑うしかない。

役割分担を明確にして、自分の仕事は自分でやるようにしたいだけだ。

手伝ってもらったらありがとうでいいだろう。




なぜ、これができない。

紛れもなくハラスメントだ。


動向としてはこんな感じだ。


草加部のダイエットは継続している。

最近は軽めの筋トレも取り入れウォーキングを続けている。93kgまで体重は落ちた。が、まだ誰も気づかないくらいのレベルだ。防寒着も着ているというのもあるが、まだまだやせ型とは言われることはないと思う。


業界全体の動きとしては、ドライバー不足で物流が滞ることへ対策として、貨物列車を使うと発表する企業が出てきた。うちも来年3月から実施するという話しがちらほらと社内で出てきた。


草加部は、これらを総合的に把握し作戦を考えるものの、誤仕分けがネックで先に進めなかった。所長の村上も誤仕分けは仕方ないけど開き直ることはできないという見解だ。


ナイトワーカーズとしては、

もう少しのところまで来ていたが、まだ詰めの部分がまとまらないでいた。


”1号による、こんなんじゃダメだから俺がやる。”

”その人によって違う。”

”誤仕分け。”

”夜勤は仕事をしていない。”

”全てのホームを口毎に整理するのは不可能。”

”荷降ろしをやらせようと仕向ける。”


要は、配達ドライバーと大型ドライバーが、各々の勝手な解釈で構内作業員の作業内容、作業内容を決めていることに原因がある。


”一介のドライバーにそんな権限があるのか?”


”この構図を壊せばいいんだろ。”


白髪でクルクル頭のグリミー大森、トサカ頭のグリミー能見は、あれから大人しい。こいつらも風評を流布していた張本人だ。風評には風評。力には力で解決できるんじゃないか。


というところまでは来ていた。


”こいつら使えるだろう。”

”逆に大型ドライバーも味方に着けようか。”


ーつづくー

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