第2話 変身!魔法少女ラゥナ!
「な……なにこれ!」
もともと赤に近かった茶色い髪は、膝に届きそうなほど長い黒髪に。だぼっとしたオーバーオールは、黒を基調とし、カラスの尾羽や翼を思わせるようなドレスに変わっていました。
「可愛い……! カラスモチーフなんて、すっごく最高!」
「ラゥナ。それが、君の名前だよ。詳しく話したいけど……その前に! あいつを、ダクラーを倒して!」
「うん! ……それはいいんだけど、あなたのお名前は?」
「そうだ、それも……」
しゃべるカラスさんが言いかけたところで、凄まじい地響きとともに、あの化け物、ダクラーがやってきました。
「ごめん! やっぱりあとで、お願い!」
さっきまで、まったく人を襲う気配がなかったダクラーが、突然私の前に現れて、そのこぶしを振り下ろしてきたのです。
でも、少し脚に力を込めて後ろに跳んだだけで、ものすっごい距離を離れることができて、勢い余って公園のトイレの壁にめり込むほど。
「いたたた……むう、やってくれましたね! 逆恨みなのはわかっていますけど、もう許しません!」
「ラゥナ! 一回、思いっきり羽ばたいてみて! 君の魔法は、空を飛んで、ダクラーの悪い力を吹き飛ばすもの! ついでにこれも使ってください!」
カラスさんが、二本目の羽を引き抜いたのを受け取ると、ぱっと発光し、扇子のような形に変形したのです。
「これ、どう使うのかな……まあいいや、とりあえず、やってみよ!」
言われたままに、ぐっと腕を振り下ろしてみると、それだけで体がふわっと浮き上がったのです。
そのまま、水をけって泳ぐようにしてみると、体はぐんっと進んでいきました。
「よおし……このまま、いっくよー!」
そのまんま、どんどんと空に近づいていき、雲を食べられるほど高く上昇していって。そして、そこで飛ぶのをやめたのです。
ふわっと体は落ちていって、ぐぐぐぐぐっと地面は近づいて。私はジェットコースターでも体験したほどのないスピードにまでなったところで、さらに羽ばたき、勢いをつけて。
「はぁあああああ!!」
風も声も切り裂いて、そのヒールの先端を、ダクラーにぶっ刺したのです。
「これで、終わらせます!」
さっきまで使い方のわからなかった扇子を取り出し、ばっと広げて、ダクラーにつきつけました。
さっきの落下のとき、風の中から、声が聞こえたのです。高らかに、技名を叫んで、吹き飛ばして! って。
「ウィンダリア……クロー!」
目に見えるほどの突風が、爪のような形となって、地面に刺さったままのダクラーを吹き飛ばしたのです! そのままダクラーは、一度真っ白くなってから、その全身にひびが入り、砕けてしまいました。
「ふう、これでひと段落……かな」
ひどくぼろぼろになった公園の真ん中で、一息ついていると、柔らかな光の膜が全身を覆って、元の服と、髪の色に戻ったのです。それに続いて、公園の中が、早戻しをしたように巻き戻っていって、あっという間に元通りに。
「お疲れさま、うつは。改めて、僕はレイン。君の使い魔だよ。
これからたくさんお話ししたいことがあるから、ついてきてほしいんだ」
レインと名乗ったカラスは、楽しそうに、そう話しかけてきたのでした。
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