第4章 バロン帝国決戦No.2

「オーホホホ!バロン帝国軍が来たわよ!黙って譲りなさい!オーホホホ!!」


クリスティーナは着慣れた鎧で仁王立ちをしていた。ここは“戦争前の会議”。

“今は戦う意志なし”というジェスチャーから代表3人となっていた。

そして普段ならこんな事しなくても良いのだが、名家らしく事前に宣誓布告をする習わしとなっている。


「どうする?」


ターケンは敵兵3人を睨みつけ真剣な顔でゼットの方へ向いた。

ちなみに“どうする?”というのは“争いをおっ始めるか?”という意味である。何故なら、この卑劣で仕方がないバロン帝国軍は正々堂々としてくるはずがないのだ。


「……もう少しみよう」


ゼットはクリスティーナの方をみる。ゼットは仁王立ちをしてクリスティーナを睨みつける。


「オーホホホ!!何か言ってごらんなさい!それとも、バロン帝国軍が怖くて恐ろしいとでも?」


ざわつく、ルジアム帝国軍とターケン戦士軍を併せて“新アメール軍”。

すると、新アメール軍の中から前に進んで歩みよりゼットが1番前に進んでいた。


「オーホホホ!!何ですか?それとも命乞いをすためですの?」

「………ブツブツ」


よく聞こえなかったのか、クリスティーナは“?”と疑問になりながらゼットに聞き直した。


「なんですの?軍人は軍らしくしなさい!それとも、バロン帝国軍だからビビってしまったのかしら?オホホホ!」


もちろん皮肉である。それぐらいバロン帝国軍を憎くなければ、殺すのに躊躇してしまうのだ。


「好きだ!クリスティーナ!結婚してくれ!」

「オーホホホ…えええっ!!!!」


両軍は大きな声で“エエエ!!!”となった。もちろん、ガルシアやシルバードラゴンもである。シルバードラゴンはここ数百年ちょっとの事では動じることは無いのに“ゼット事件”のことでは流石にビックリしてしまった。


「な、な、なんですの?わたくしは既婚者です!」

「それでも結婚してくれ!」


パニックなってしまったクリスティーナは改めてゼットの目を見る。

“あっこりゃ、真剣だわ……”

その目を見ると、何だか妙に澄んだ目でパニックになっていた気持ちを落ち着かせてくれる。


「ありがとう。気持ちだけ受け取っておくわ。私の夫“ヴァレリー王子”なの。今のは聞かなかったことにするわ」


“私もそっち行きたい…”コレがクリスティーナの正直な感想である。何故なら、新アメール軍を見た時から一目惚れをしたのは彼だったからである。

だが、私の夫はバロン帝国の第1後継者“ヴァレリー王子”なのだ。そしてたとえ、あと数年で結婚解消されようが、本当は“変態ロリコン野郎”だったとしようが、ヴァレリー王子の夫に変わりないのだ。

それを分かった上で結婚を申し込もうなら、それはただの“バカ”である。


「それでも、おまえ…いや!クリスティーナと結婚したい!結婚してくれ!」

「…………」


“ただのバカ”である。クリスティーナは赤く染まった顔を鎮めて、こう言い放った。


「と、とにかく、明日の意志なしとみなし、明日のこの場所で合戦とします。よろしいですね!」


そう言って“クルリッ”と180度回転しながら、走り去ってしまった。

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