第3章 新大陸No.8

ーーークリスティーナ視点


「オーホホホ!!」


ヒラヒラした女性が海の大海原にこだまする。

ここは大きな船上の端。つまり先頭を片足をかけて大きな声で高笑いをしている。

その女性の名は『クリスティーナ』。

金髪で色白な女性はバロン帝国の第1王子ヴァレリー王子の第2夫人に収まっていた。

ただ、地位と名誉もあり、容姿端麗のヴァレリー王子だが一つ問題点があった。

それは離婚率が高いことだ。

何も離婚率が高いということは、相手から切り出されるからではない。むしろ、本人から切り出されるのだ。

その理由とはヴァレリー王子は根っからの『ロリコン狂』なのだ!ヴァレリー王子のロリコン狂はそんじょそこらのロリコン狂ではない。

女性の年齢が10歳から16歳ぐらいまでで、幼さが残る美少女…なので、ヴァレリー王子が求愛したら約90%が結婚してしまうのだ。

だが、そんな完璧超人のヴァレリー王子に欠点があったのだ。

それは……女性が17歳以上になると飽きてしまい、離婚したくなるのだ。

しかし、いつの世も例外はある。

そう!クリスティーナだ!

クリスティーナはもちろん、胸の大きさは壊滅的でロリコンの分類に入るのだが、女性の年齢としては20歳代と別れてもおかしくない年齢なのだ。では何故離婚しなかったのか?

それはフットワークの軽い“バカ”だったからだ。なにも“バカ”という訳ではない。表面上“バカ”というイメージがそうさせたのだ。



ーーー4年前、バロン帝国の謁見の間にて


「オーホホホ!!何ですの?こんな改まって謁見の間なんて」


高笑いをしているクリスティーナに対してヴァレリー王子は“ニコッ”微笑みを返して、こう切り出した。


「こんな忙しい時に本当にすまないね。今日、夜の営みに対して“ある”決断をしたんだ。あっ!名誉のために言っておくよ」


ヴァレリー王子は微動にせずに淡々と話を進める。それに対してクリスティーナは“まさか”と思いつつ、自分の選択に迫られる。


「僕はどんな女性でも十分美しい。どんな女性でもだ!……ただ、僕の趣味は特殊でね。今の女性として当てはまらないんだ……だから、別れてほしい!」


“ついにきたか…”

結婚する前の数年、中堅の貴族であったが近年の不況により、裏では莫大な借金を抱えニッチもサッチもいかなくなってしまった…そこでターゲットにしたのは王子の縁談の話だ。

アレサンドル3世王は70歳と年齢差がかけ離れており絶望的だ。

しかし、ヴァレリー王子は違う!

ヴァレリー王子の年齢は30歳なのだか、噂によると根っからの“ロリコン狂”なのだ。

それからと言うものの、ロリコンには好みに合うファッションとメイクを勉強し、どれが好みなのか?徹底的に調べて上げてから本人に会うことにした。

それから数年後、徹底した節約も相まって借金はもう少しの所まできたのだが、自力の所までは達してはいない……。本来なら、離婚をエサに慰謝料をぶんどるはずなのだが、今後の人生においては不安が残る。


「オーホホホ!離婚?離婚ですって何を冗談を…この私、軍隊では常にトップで、誰にも負けない技を持ち、おまけに頭もトップクラス、そんな私が離婚?オーホホホ!」


“やれやれ”という顔をするヴァレリー王子。ただ、本場はここからなのだ。ここから王の怒りを買って処刑場に行くのか?“面白い”と思い、そばに置くのか?まさに勝負なのだ!


「まぁ、天下のバロン帝国が“離婚しろ”と言われるのであれば応じる訳ないわよ。もちろん、莫大な慰謝料をつけてね。オーホホホ!!」


もちろん賭けである。

一見、クリスティーナは呑気に高笑いをしているように思えるが、裏では心臓が“バクバク”である。だが、その重苦しい沈黙をすぐに軽いものに変えたものがいた。

何を隠そう“アレサンドル3世王”である。

アレサンドル3世王のことに関して、本来なら本人当事者に決めることがあって“他の人は口出しすべきでない!”というルールがある。

だが、そのルールがぶち破る程、口出しすべきという案件であった。


「うん!実に面白い!そなたの離婚は無しじゃ!」

「オーホホホ!当然ですわ!…おっと、今からセクシーにすべくレッスンですわ」


クリスティーナは“ペコリ”とお辞儀をしてヴァレリー王子に向き合った。


「では、夜の営みに体力をつけるべく、モリモリと食べないとダメですわ。では、ご機嫌よう」


クリスティーナは訳の分からないことを言って、その場を去ってしまった…。

ちなみに、クリスティーナは内心ガッツポーズをしていた。

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