第1章 布教の行進No.5
ーーメビオス王国、謁見の間
「お久しぶりです。王様」
男は“ニヤニヤ”しながら跪いた。コレは完全に“バカにしている行為”のようだ。
だが、ダビド王はそれを無視して淡々と話をしている。
ここは文字通りメデオス王国の謁見の間。
スペニア王国から30人を引き連れてウゴ代表団がやってきた…ただ、30人と言っても氷山の一角で、後には数万もの大軍が隠れているように感じ、戦争がしたい“スペニア王国”と戦争を回避したい“メビオス王国”がせめぎ合いをしながら緊張感を保っていた。
『そもそも、せめぎ合いが嫌なら会わないようにすれば?』
……本当はそうしたいのが山々だが、もし会わないようにすると“会見拒否→対立とみなし戦争!”というシナリオが待っているからだ。だから凄く嫌でも言葉に注意しながら会わなくちゃいけない…。
だから、ささやかな抵抗と思い、王はガルシアとは違い見下ろすかのように玉座に座っていた。
「…で、今日は何用かな?」
ダビド王は冷たい目で低い口調で喋っている……明らかな警戒心と“ミスは許されない……”という危機感の現れだ。
「ダビド王、前回と取り決めになっていた宗教は人それぞれなので
“構わないが宗教を勧誘することは絶対ダメだ!”と言われていたので引き下がっていましたが、故郷に帰って報告をすると大目玉をくらいましてな、、、それで、再度お願い参った次第です」
ダビド王は一度“それは……”と言いかけたが“グッ”と息を飲んで男にこう言い出した。
「ウゴよ。その件に関してコチラ側でも再度検討する。もう少しまで待ってくれ」
ウゴという男は一瞬“ニヤリッ”と笑みを浮かべ、すぐに真顔になって向き合う。
「いいでしょう。ただし、そんなに時間は待てませんよ……ククク」
“気分が悪いなぁ…”
コレは俺が想った本音。イライラしながらも俺は周囲を見る。そこに気になっていたダビド王が拳を握り締め険しい顔でウゴを冷たい目でウゴと向かい合っている。
俺も“ストレスでハゲてしまわないか?”と思い、声をかけようとするが、一足先にシルバードラゴンが阻止をした。
「何をしておる?ワシらはここの客人ぞ。客なら客らしく黙っておくのが普通じゃ」
「……」
“しかし……”
と思ったが、ここはダビド王を立てることにした。何故なら、今ここを乗り越えるとメビオス王国は“安泰”だからである。
「それで少し早いかもしれませんが、帰らせて頂きますよ。あっ、早ければ早いほど報告は嬉しいですが、もし悪い状況でしたら…そこは覚悟をして下さいね。ほれ、ジョゼ、行きますよ…あっ、そこは大切な荷物です。もし、落としたら……どんな事になっているか、分かりますよね。行きますよ!フォフォフォ!」
「あっ、はい!待って下さい!!!」
ウゴは話を聞かず“クルッ”と180度に切り替えて帰ってしまった。そして“ゾロゾロ”とウゴ代表団達が過ぎ去ってしまった。
ーーーー
「いや〜お見苦しいとこ見せてしまって申し訳ない。もっとカッコイイとこ見せてかったんだけど、無様な姿を見せてしまって…」
“いやいや!そんな事はない!”
俺は心の底からそう思った。ただ、王は王なりのプライドがあるように、ダビドはダビドなりのプライドがあるように感じた……シルバードラゴンには悪いけど、ダビドに頼ませたら加勢するけどなぁ……戦い好きだし。
「なぁ…もしもだけど、お前が…」
「いや、そこまでしてくれるのは、ありがたいけど…本当に申し訳ない!断らせて頂く…その気持ちだけでも嬉しいわ」
「……そ、そうか?」
“あっさりと断ってしまった”
メビオス王国の危機なのに他の客人より民族のプライドが優先なのか……まぁ、分からんでもない。これからメビオス民族を引っ張る上で、どうしても民族を優先しなけばならず、どうしても民族が一致団結にしなければならない…ただ、なぁ…。
「なぁ、言った通りじゃろ?民族の問題はその民族が解決が1番じゃ」
“フン!!”
シルバードラゴンは“ホレ、見たことか!”という顔をする。
「では、行くぞ」
「……どこに行くんだよ」
「ちょっと調べたいことがあってのう…今から会うんじゃ。さっさとせんか?」
“だから、誰と会うんだよ!”
と俺は思ったが
“他の返事は無視!俺の優先事項”という軸は曲げなかったので、諦め一瞬に付いてきた。
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