第113話 第三のコアの正体
お互いの素性を明らかにしたことで、双方の戦意は完全に無くなった。
けど、素性以外の事はまだ謎のままなので、そのままここで話をすることにしたんだ。
せっかくなので、と。
ルシファー様は瓢箪とは別に酒瓶を取り出してキューキさん達に振舞おうとか言い出した。
キューキさん達は“酒”というモノを知らないと言っていたけど、恐る恐る口にしたところで
『こ、これは……“精神の雫”ではないか!』
「ほッほッ、精神の雫とは、良く解っておるではないか。ささ、遠慮なくどうぞ。」
『こ、こんな貴重で神聖なものを、こんなに……』
どうやら異星人でもお酒は飲むらしい……
「それで、話を戻すが私達がココに来たのを、人間が約束を破って襲いに来たと思った、と。」
『そうだ。祖先の話では、人間は狡猾で信用してはならない生き物だと聞いた。襲ってくることがあれば殲滅し、ここを死守せよ、と。』
「なるほどな。」
「キューキさん。私達はあなた達ではなく、さっき話したモンスターを何とかする為にココに来たんです。」
「そのモンスターが、ここから発生しているかも知れないと思って。」
『ガーディアンの元になった物体の事だな。アレは人間と共に我らを襲撃してきた。アレは人間が造ったモノではないのか?』
「そこはちょっと複雑なんですけど、アレは私達にとっての脅威なんです。人間を襲うだけの存在なんです。」
『何だと?』
「アレが人間と共に襲ってきた、というのは事実なのか?」
「モンスターが人間と共闘する事はあり得ませんね。相容れない者同士ですから。」
『既にその真相を知る者は存命していないので真相は不明だ。ただ。我らはそう聞いてきた。』
「でも、モンスターを元にしたっていうのは?」
『我らの居住区には人口生命体の生成を可能にする一角がある。そこにアレの死骸、機械の獣のガラクタを運び研究開発したのだ。
その生成には未知のエネルギーが必要という事も理解し、それを収集する為に、あの発生場所も調べ、そのエネルギーを収集する事に成功したのだ。』
「え!?」
「つ、つまりコアを造ったって事ですか!?」
『コア?コアとは何だ?』
「あのモンスターを発生させているモノです。」
『いや、我らが造ったのはそれを模倣したものです。未知のエネルギーさえ判明すれば、その収集は容易かった。』
「ちょ、ちょっと待って!」
さっき、一言聞き捨てならない事を言った。
機械の獣のガラクタ?
それって、間違いなくアーマー、よね?
「ルナ様……」
「うむ、それは間違いなくアーマー、しかも、私が造ったモノで間違いないだろう。」
「と言う事は、やっぱり近くにジーマと繋がるゲートがあったって事、なんでしょうか?」
「私と共にこの世界へ来た個体は、全てタカヒロが漏らさず回収したはずだしな。うーむ、謎だな……」
謎だ。
本当に、謎でしかない。
ただ、確実なのは今現在はこの星にアーマーは存在しないって事だけは確かよね。
なら、今はそれは置いとくべき、なのかな。
「話を戻すが、結局は対抗措置、手段の一つとして人工生命体の兵士を作っていた、と言う事なのだな?」
『その通りだ。これ以上我ら同胞を誰一人として失う事は、何としても避けたいからだ。』
「まぁよ、その話は分からんでもねぇんだがな。」
「ウリエル様?」
「話を聞いた限りじゃ今現在、人間も魔族も、ここにお前らが存在しているってのは誰一人認識してねぇってこったろ?」
「そうですよね。シヴァ様もエルデ様さえも知らなかったみたいだし。」
『そ、そうなのか?』
「そうなると、だ。なんでモンスターはここを襲撃しようとしてんだ?」
「この前のスタンピードって、そういう事なんでしょうか?」
「なぁ、あのモンスターの集団は、やっぱりここを目指してたって事か?」
「そういえば、あなた達が北の群れを片付けてくれたのよね。」
「ああ、不自然な行動だったってのは覚えてるぜ。」
「あ、あの、キューキさん?」
『何だ?』
「コアを模造したってことは、あの2か所のコアを調べたって事ですか?」
『我らはここから出る事は殆ど無い。故にそのコアとやらは現実には見ていない。』
「え?」
『この山の麓まで来たソレの迎撃に出る事はあっても、だ。そのコアとやらの存在とソレの生成手段は、ソレの記憶を解析して理解したのだよ。』
「へ、へぇー……」
つまりは、キューキさん達にはそれだけの文明がある、科学力を持っている、と言う事なのかな?
ま、まぁ、星を渡る程の科学力を持つ文明なんだもの、それくらいはできるって事みたいね。
ただ、それは別として、コアのダミーを創ったっていうのは……
「恐らくだけどよ、既存のモンスター共はここのコアもどきを敵と認識したんじゃねぇのか?」
「そう考えればスタンピードの件も少しは納得がいく。ただ……」
「ただ、何ですルナ?」
「モンスターのここ最近の急速な進化はまた別の要因が絡んでいる気がする。」
また一つ、謎が増えた。
第三のコア、つまりはここのコアもどきの正体は判明したけど、モンスターの進化はまた別の話みたいだ。
特に、人型のモンスターが、というのは未だ本当に謎でしかない。
何となく想像がつくのは、知恵を持ったのはここのコアもどきを敵認定したことが切っ掛け、なんじゃないかって事だ。
『あなた達の正体と目的は、我らも理解した。それでだ。ここでこうしていても埒が明かない。』
「うん?」
『あなた達になら、我らの住処へ来てもらっても良いと思う。』
『キューキ様!それは!』
『同胞を危険に晒す事になるのでは!?』
『いや、これ程の実力の者達だ。その気になればどの道我らは殲滅させられる。そうだろう?』
「まぁ、そんな事はしないがな。今ならお前達に、それだけは誓えるよ。」
『ふふ、何でだろうな。あなた達と話すと、正直な自分になるような気がする。』
「そう言ってもらえると、私達も荷が下りる気がするよ。」
なんて言うか、何となくだけど。
ルナ様とウリエル様とキューキさんて、気が合うんじゃないのかな?
そんなこんなで、私達はキューキさんに案内され奥へと進んだ。
この奥に、トンネルを利用し拡充した居住区があるんだそうだ。
このダンジョンというか洞窟は元からあったらしく、トンネルへと繋げたのはキューキさんの親の代の方々らしい。
そんな話を、ルナ様とキューキさんは歩きながらしている。
後ろでは
『あなた達はなぜ人間なのにそれほどまでに強いのですか?』
「うーん、俺達はさ、人間の中でもちょっと変わってるんだ。」
「オレたちの祖先はね、勇者って呼ばれてたんだよ。あのムサシさ。」
『なんと!では、ムサシ同様人間を遥かに超えた超人と言う事ですか?』
「超人っていうのは初めて聞いたな。」
「超人……か。いいな、それ。」
アフラさんとタカ、ヒロがそんな話をしている。
どうやら打ち解けたのかな?
うん、それはちょっといい事だよね。
そうして歩く事1時間ほど。
『ようこそ、ここが我らの国だ。』
「おおー!」
「こ、これは!」
「凄い……」
「はー……」
どことなくシヴァ様の国を彷彿させる地底国家、と言うモノだろうか。
陽の光が届かないのに、昼間のように明るい。
電気じゃない、ヒカリゴケみたいな感じの、不思議な物が光を放出しているみたいだ……
「凄いな、可視光線は太陽の光に近いのではないか、これ……」
『表の世界に近い光を放っている。24時間サイクルで明滅するんだよ。作物の光合成もできている。』
「すげぇな。そりゃここで何年も暮らせるわけだな。」
『そして、アレがあなた達が言う“コア”と同じ機能を持つ部屋がある神殿だ。』
「おいおい、こりゃ……」
「異星人、というのが真実味を帯びるに充分だな、これは。」
何か、乗り物のような形をした神殿。
少し斜めになっているのは、これが例の乗り物でここまで突っ込んできた、と言う事なんだろうか。
けど、これというか、この中に第三のコアがある、つまりこれが第三のコアの正体、なんだよね、きっと。
『中は後で案内しよう。ひとまず、我らの民にあなた達を紹介しよう。』
そう言ってキューキさんは、ヌエさんに「集合をかけよ」と命令した後に一つの建物に私達を案内したんだ。
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