第112話 今度は宇宙人だって?
ひとまず私達は武器を全て納め、戦う意思がない事を表す。
ちょっと、詳しい話を聞く必要があると思ったんだ。
その旨を元トラに告げると、あちらも4本腕は武器を捨てた。
「どうやら相互に認識の祖語があるようだ。話をしよう。」
『そのようだな。とはいえ、まだ信用はできないが……」
「ま、そこはお互い様だな。アタイらも同じだけどよ、ひとまず手はださねぇよ。」
『そうか、ではこちらもそれは約束しよう。』
という事で、まずは素性を明らかにするために自己紹介となった。
まずこちら全員の紹介が済んだ所で、元トラ達の紹介になった。
『我はキューキという。こっちはヌエ、グリペンだ。』
『ヌエ、と申します。』
『グリペンです。』
キューキさん、とヌエさん、グリペンさん。
今は獣人の姿になっている。
ケモ耳がカワイイと思ったのは内緒だ。
『この者達はアフラ、ヴィグネ、カーラ。我らの戦士だ。』
『アフラです。』
『ヴィグネだ。』
『カーラっす。』
4本腕の人たちは、腕が2本になっていて今は普通に人間の姿になっていた。
パッと見はアフラさんが女性、ヴィグネさんとカーラさんは男性っぽい。
「あの、それであなた達は何者なのですか?」
『君はディーナ、だったな。君こそ人間ではないな。我ら3体を相手にあれだけ動けるとは。というよりも、人間はそこの男の子二人だけか。』
「私は人間と魔族とのハーフです。」
『何だと?人間と、魔族の!?』
「は、はい。」
『人間と魔族はいがみ合っていたのではないのか?』
「えーと、ですね……」
『あ、いや、その前に私達の事を話そう。その方が良いだろうし。』
キューキさんは自分達の事を説明し始めた。
『我らは“ノア”という惑星からこの星に避難してきた、この星で言う所の異星人だ。』
「い、異星人?」
『我らの祖先は、この星の時間で13,000年前にノアから逃げてきたのだ。そして、800年前にここに辿り着いた。』
「13,000年前?800年前?」
何とも壮大すぎて、イマイチ理解が追い付かない感じの話だ。
その話を要約すると
キューキさんの祖先は、流星群の衝突による星の壊滅から逃げてきたんだそうだ。
地球とは文明が全く違うキューキさん達は、恒星間の移動を可能にする技術を持っていたらしい。
それはある種の乗り物だそうで、1機あたりにおよそ3,000人ほどが乗り込んでいたんだって。
1,000機ほどのその乗り物は、12,000年ほどの時をかけ星々の海を渡る中で散り散りになり、ようやくこの星にたどり着いたんだそうだ。
でも、その時には4機しか残っておらず、大気圏突入時に3機は損傷、中の者の生存は絶望視されたんだそう。3機はそのまま衛星軌道に乗って今も地球の周りをまわっているらしい。
結局、キューキさん達がのる乗り物だけがこの地球上へとたどり着いたらしい。
そして800年前、この星で生きていくしかなくなったキューキさん達の祖先は、人間に襲撃されたんだって。
既に地球上ではモンスターの脅威もあって、キューキさん達は侵略者としてモンスターと同様の敵とみなされたようだ。
言葉も通じず、文明度合いも大きく違い、見た目も人間とも魔族とも違っていたキューキさん達が敵視された、というのは、ある意味仕方がなかったのかもしれない。
攻撃されれば、当然反撃もするんだけど、キューキさん達には人間とは圧倒的な力の差があった為か、手加減の度合いも判らず襲ってきた人間や魔族を多数殺めてしまったらしい。
そんな不毛な闘いを続けていた所に、“ムサシ”と名乗るものが現れたんだって。
それはもちろん、あの初代勇者のムサシ様の事だと思う。
ムサシ様はなぜかキューキさん達の言葉を理解し、話し合いの結果人間たちと干渉しないココで暮らしていってはどうかとの提案を受け入れたんだそうだ。
それには、人間も魔族も、一切キューキさん達には手出しせず、干渉せずにいる事も約束してくれたらしい。
それを受けて、キューキさん達も一切干渉しない事にしたんだそうだ。
「…………えーっと……」
「……どゆこと?」
「……ちょ、ちょっと話を整理しようか。」
「あ、ああ。」
「俺、何言ってっかわかんねぇ……」
「オレも……」
「私もルシファーも、そんな話は初耳なんだが……」
ルシファー様は興味なさそうに瓢箪を呷っている。
「要するに、お前達は異星人で、この星に来て、人間や魔族に襲われて、ムサシという者に庇護された、と?」
『端的に言えばその通りだ。それ故に我らはここで静かに暮らしていた。』
だけど、ちょっと待って欲しい。
何だかとても重要な事を言っていたようだけど……
13,000年前に流星群との衝突で星が消滅した?
それって、12,000年前に地球に飛来した流星群みたいなもの、なのかな?
流星群って、そんなにいっぱいあるの?
「この星も流星群によって壊滅的な打撃を受けたんだが、それは知っているのか?」
『知っている。というか、その流星群は同じものだ。我らの惑星を消滅させその勢いは若干衰えたものの、そのままこの星まで飛来したんだろう。』
「何なの、その偶然……」
「で、お前達は13,000年もの間生きているという事なのか?」
「そりゃもはや生物としての寿命なんざ軽く超えてんだろ?」
「というか、12,000年かかって地球に来たんですよね?流星群は1,000年なのに?」
『我らの宇宙船と流星群の速度は全然違う。それ故に時間がかかった。
それに、星間航行の間は全ての機能を止め仮死状態でいたそうだ。
なので我らにその間の12,000年ほどの歴史はない。』
「コールドスリープ、という奴か……」
「すげぇな、そんなのが可能なんだな……」
「じゃ、じゃあ、キューキさんは13,000歳って事?」
『我は産まれ出でたのは200年程前の事だ。今の我らの中では一番長く生きている。』
「へ?」
『私はこの星で生まれた。この者達もそうだ。』
「ということは……」
『我らの親世代は既に居ない。この星に到達時3,000程いた同胞も、今や100に満たない。』
「そ、それはどういう……」
『この星の環境は我らの祖先には厳しすぎた。病に倒れながらも研究が進められ、判明したのは馴染むには代を重ね抵抗力を持つ個体となる必要があった。そうして残ったのが我らなのだ。』
故郷の星が消滅し、生き残る事を最優先していた生活の中で、侵略者と誤解され襲撃され、さらに病気にも蝕まれたっていう事よね。
なんとなく、だけど、それって12,000年前のこの星の人たちと、状況としては近似していたんじゃないのかな。
もしかして。
その代を重ねていく中で、魔族や龍族が、って事も考えられるよね。
本当の所は解んないけど……
ただ、その話が真実だとしたら。
「なるほどな。お前達の事は概ね理解できた。それで、だ。」
「私達も、勘違いとは言えキューキさん達に襲い掛かった事は謝罪します。申し訳ありませんでした。」
「そう、よね。謝って済む事じゃないけど、本当に申し訳ありません。」
「ま、そうだな。そっちが先に手を出したとはいえ、アタイらも知らずに攻撃した訳だし、お互い様って事で良いか?」
『……人間が、いや、あなた達は人間じゃないようだが、そんな風に謝意を表すなど、信じられない……』
『これまでの襲撃者は、そんな事はしなかったと聞くし……』
『あのムサシとかいう者以外、我らにそんな言葉をかける者は居なかったと聞くが……』
それはある意味当然なのかもしれない。
ただ、既にその時コアは存在していたんだと思う。
その環境下で人々がそういう行動に出た、というのは、やはり未知のモノに対する恐怖がそうさせたんだと思う。
それって、たぶん本能なんだろうなぁ。
それを押し殺して対話をしたムサシ様って、やはり勇者って事だよね。
もし、それがお父様だったとしても、同じ行動に出たかもしれないってのは容易に想像できるけど。
キューキさん達がここに存在する理由の一つは理解できた。
でも、なんでモンスターをここで生成していたんだろう?
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