第111話 タカとヒロの実力って、こんなに凄かったの?

 「なぁ、やるのは良いんだけどさ、俺達が勝ったらどうすんの?」

 「まぁ負けたら言う通りに引くけどさ。もっとも、また来るけど。」

 『我らが負ける事はない。』


 自信があるんだろうか、それとも、それだけの覚悟があるって事なのかな?

 あの4体の人型アーマーの表情は変わらないので、そこから真意を見出す事は出来ない、かも。

 それにしても……


 「ね、ねぇ、タカ、ヒロ、大丈夫なの?」

 「凄い気合は感じるけど……」

 「姉ちゃん達、よっく見ててくれよ。」

 「オレらの本当の力は、まだ見てないだろ?」


 二人の本当の力……

 手合いの時は、確かに何か動きも手加減というか、そんな気はしてたけど。


 「ヒロ。」

 「ああ。」


 それが合図になったのか、二人は突進した。

 速い、本当に速い。

 二人は間隔を空けて、一体へと襲い掛かる、んだけど。

 アーマーも相当な強さのようだ。

 襲い来る二人に対して斬りかかっていく。

 と

 ヒロがアーマーを上から斬りつけると、アーマーはそれを避けた、んだけど。

 ヒロはそのままの勢いでアーマーに蹴りを入れる。

 アーマーは吹っ飛ぶことなく、体が千切れた。

 その間にタカがもう一体へと斬りかかると、そのアーマーは電気を纏ったようにバチバチと光っている。

 そんな事はお構いなしに、タカは剣ではなく左拳をアーマーのお腹へと突き刺した。

 アーマーの腹部は貫通し、そのままタカの剣で頭から真っ二つになった。

 と、その瞬間に二人は残りのアーマーに襲い掛かる。

 構え直す間もなく、最後の2体も二人に斬り刻まれた。


 「す、凄い……」

 「あの二人、こんなに凄かったんだ……」

 「凄いものだな、全盛期のタカヒロより強いのか……」

 「流石は勇者の子孫、ってとこか。」

 「相手が弱かったのでしょう。一瞬でしたね。」

 「ふむ、アイツら遊びよってからに……」


 たぶん、私とシャルルだったら、まだ終わらなかったと思う。

 もっとも、やってみないと分からないけど。

 ただ言えるのは、覚醒状態の私達よりも強いって事よね。

 あれで“素”の状態なんでしょ?


 「んだよ、もう終わりかよ。」

 「大した事なかったな。」

 『……』


 4本腕の1体は、苦虫を潰したような表情になり言葉を発しなかった。


 「で、どうすんの?」

 「俺らが勝ったけど?」

 『……ここから先に通す事はできぬ。なら、私が相手するまでです!』


 そう言うと、4本腕の3体は前に出てきて構える。

 いつの間にかその手には剣と、あれは斧?

 

 「そうかよ、まだやるのか。」

 「てか、お前の方が強そうだな。」

 「ちょ、まってタカ、ヒロ!」

 「ディーナ姉?」

 「どうしたんだよ?」

 

 何となく、だけど。

 あの4本腕、玉砕覚悟で挑んできているみたいな気がしてならない。

 それほどまでに私達を先に進ませない理由、何かがあるんだろう、と思う。

 さっき言っていた、安全と平和。

 それは、それを知る者しか言葉にできない事じゃないのかな?

 いたずらに襲い掛かってきたわけじゃない、というのが引っかかるんだ。

 だから


 「ねぇ、二人とも、お願い。」

 「破壊せず、いいえ、怪我も最小限に留められるように相手して……」

 「シャル姉まで?」

 「って、それどんな無茶ぶりだよ。」

 「ごめん、お願い!」

 「あー、解ったよ。」

 「ちょっと面倒だけどな。要するに戦意喪失させりゃいいんだろ?」


 あのレベルの相手に、確かにそれは無謀だと思う。

 だけど、タカとヒロならそれもできると確信しているのも事実だ。

 あれだけの実力があるからこそ。


 「んじゃ、行くぜ!

 「ああ!」


 気合いを入れ直して、二人は3体の4本腕に襲い掛かる。

 極力剣は防御と、攻撃はフェイントとして行い、突きと蹴りで攻撃するタカとヒロ。

 対する4本腕はまるで背水の陣での戦いのように、捨て身で襲ってくる。


 そんな打ち合いを、もう10分近く続けている。

 さすがに4本腕のほうが疲弊してきたみたいだ。

 タカとヒロに疲労の色は全くない。

 というか、もう殆ど遊び感覚になっているような気までしてきた。

 どんだけバケモノなんだろ、あの二人。


 すると


 『アフラ!ヴィグネ!カーラ!引け!』

 『キューキ様!?』

 『くッ!』

 『ッ!……』


 4本腕は打ち合いから大きく間を取り、そのまま構えて待機した。


 「お?ようやく終わったか?疲れたなー。」

 「俺もだいぶ疲れてきたよ。帰りてぇー。」

 

 うそつけ。

 タカもヒロも全然疲れていないと思う。


 というか。

 あの3体に命令するって、あの元トラは本当はもっと上位の存在って事なのかな?

 引かせたって事は、もう実力差は明確になったから、と言う事で間違いなさそうなんだけど……


 膠着状態の中、元トラがこちらに歩み寄ってきた。

 いつでも抜けるように構えながら。


 『なぜ、あなた達はここまでして我らを襲う?』

 「え?」

 「いやいや、私達は!」

 『我ら存在は、約束通りあなた達に干渉しないよう密かに暮らしているというのに。何故過去の過ちを再び犯そうというのか?』

 「え?過去の?」

 「過ち?」


 その声を聴いて、タカとヒロは剣を消した。

 両手を上げ、戦意がない事を表す二人。

 私もシャルルも、ワールドは鞘に納めている。

 4本腕は武器を構えたままだ。

 そして、ルナ様は前に出てこう言った。


 「一つ聞こう。お前達は何者なのだ?」

 『何だと?我らを知って襲ってきたのではないのか?』

 「私達はここにあると思われる、この星に生きる者全にとっての脅威、モンスターの発生源を探しているのだ。」

 『モンスター?モンスターとは何だ?』

 「モンスターを知らないのか?」

 『もしや、あの不確定物質でできた異形の生物の事か?』

 「不確定物質?」

 『2か所の特定の場所で発生している生物の事なら知っている。アレを元に我らはガーディアンを造ったのだ。』

 「何だと……そうか、なるほどな。で、それを私達はモンスターと呼んでいるのだ。」

 『という事は、我らを襲いに来たわけではない、という事なのか?』

 「ここに来た理由は、その発生源があると思ったから調べに来ただけなのだ。結局、それはお前達のガーディアンとかいうモノだった、という事らしいな。」


 元トラはあれをガーディアンとか言った。

 この洞窟内でモンスターだと思っていたのは、モンスターを元にした人口生命体、という事なんだろうか。


 とにかく、ここは闘いを止めて話をする必要がある、のかな?

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