第82話 モンスター退治はキリがない!


 「今わかっている状況、なのだがな。」

 「はい。」

 「コアからモンスターが出現するのは概ね週一、その個体数はさっきと同じ位だ。」

 「という事は、毎週15体前後のモンスターが新たに出現する、つまり増えていく、という事ですよね。」

 「でも、それに比べて討伐できているだろう個体数はその半数にも満たない、はずです。」

 「オマケによ、中途半端に斬りゃあ直ぐに数は倍になる。」

 「ちょっと、これは大問題ですよね……」


 今はコアから一旦引き上げ、ルーベンス王へ報告する為にカルメンへと戻っている。

 コアを離れる前に、シャルルと私で周囲50キロの範囲を偵察し、30体程のモンスターを発見し処分した。

 人が少ないこの辺りでこれだけ居るっていう事は、都市部に近ければ近いほど、モンスターの数は多くなっている、という事だと思う。


 「少し、な。討伐に力を入れるなら、馬での移動は遅速ではあるな。」

 「となると、私が飛んで移動したほうが効率も能率も上がりますね。」

 「だけどよ、それだとお前の負担が増えるだけなんだぜ?」

 「それでもです。その為の負担なら苦になりません。」

 「とはいえ、だ。そのしわ寄せはディーナに来る。ディーナがシャルルの分まで動く事になるな。」

 「それも全然大丈夫ですよ。シャルルの分までモンスターの相手くらいはできます。」

 「まーな、実力はもうピンで20体くらいは撃破できるだろうよ。でもな。」

 「うむ、得体のしれない個体もいるようだし、いざという時に私とウリエルでフォローできるかどうかは未知数だ。」

 「そうなんですか……」

 「あ、でも、一つの手段としてはやってみる価値はあります。ディーナ、ルナ様が言っている事も踏まえて戦術を練ろうよ。」

 「そうだね。じゃないとモンスターの数は減らないし、人々の安全も確保できなくなるしね。」


 「あー、お前ら……」

 「そういう所、しっかりとアイツの意志を受け継いだのだな。」


 5日程かけてカルメンに到着し、ルーベンス王に接見しコア周辺の実情を報告した。

 報告を受けたルーベンス王はかなり難しい顔をして、今後の対応策を考えている様だ。


 「そうか。しかし、それだけの個体数が、となると我が軍のみならず大陸各国の軍勢を投入しても対処が追い付かぬ、か……」

 「そう、ですわね。でも、このままディアマンテスの方たちに留まってもらうのは、事実上不可能でしょうし、兄上への援軍追加要請もあまりできませんし……」


 そうなるよね。

 コアを再封印しない限りモンスターは発生し続ける。

 私達がそれを討伐し続けるのは役目ではあるものの、個々に留まると言う事は別の大陸の討伐ができなくなるという事だ。

 そうなると、取れる手段というのは限られてくるし、そのどれもがどちらかを諦めると言う二者択一になってしまう。

 どうしよう。

 ちょっと、いい考えが浮かばない……


 「この国の軍勢を鍛え上げても限界があるだろうしな、かといって仮にそうであっても時間が無い、か。」

 「アタイらがここに居続けるっていうのも、できなくはねぇけど、なぁ。」

 「でも、見捨てる訳にはいきません。」

 「だって、目の前に、今そこに危機があるんですもの……」


 そう話している私達を見て、ルーベンス王は嘆息する。


 自国、いや、この大陸の安全を第一に考えなければならない王としては、無理を通してでもディアマンテスに留まって貰いたい。

 しかし、それは他の大陸の安全を蔑ろにしてしまう。

 他国に降りかかる危機を放置してしまう事にも繋がるのだ。

 どの国の首長も同じだ。

 自国さえ良ければいいという考えはない。

 それが今の世界を形作っている訳だし、そうなると地球規模で国同士の繋がりは綻ぶ。


 今のモンスターは、単純な戦闘力の脅威だけではない。

 人々の、国々の在り方まで脅かす存在にまでなっているのだ。


 「とはいえ、私達を含めて、先を見据えた行動を起こさなければならないな。」

 「そう、ですね。現状は討伐が主軸ですけれど、最終目的はコアの再封印ですし。」

 「もう形振り拘っている場合じゃないですね。」


 であれば。

 私達が取るべき行動は、まずはこの大陸の安全確保だ。

 その為には戦力の確保は必須、その戦力がこの大陸にない以上、別の場所から確保するしかない。


 「もう、私達兄弟姉妹にお願いするしかない、よね?」

 「そうだね、いかんせん範囲も広すぎるし、そういう想定はしていたわけだし。」

 「まぁ、お前達程でないにしてもだ。兄妹複数で対応すれば討伐はできるかも知れないしな。」

 「心苦しいけど、他に手は思い浮かばない……」


 そんな事を考えて、ルーベンス王に話をしようとした時だった。


 「緊急の報告です、王!」

 「セルジオ、どうしたんだ?」

 「イワセ温泉郷より無電です。」

 「何?なんと?」

 「それが、『今から行く』とだけ……」

 「今から行く?だと?どういう事だ?」

  

 そ、それってまさか……


 「あー、シャヴィだろ、たぶんな。」

 「え?お母様が?」

 「何らかの手法でこっちの状況を把握したんだろう。という事はだ。」

 「……」


 ひとまず話は行き詰っていたので、恐らくはお母様であろう『今から行く』といった人を待つしかない。

 イワセからだと、シャヴォンヌお母様でも今夜未明か明日の早朝になるかも知れない。


 「連絡です!王都南側の宿場町近辺でモンスターを確認との事です!」

 「シャルル、行こう!」

 「うん!王様、出撃します!」

 「す、すまぬ。頼んだ。」


 その間にもモンスターは襲ってくる。

 今できる事は全力であたるのみ、だよね。

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