第81話 南米大陸のコア
「こ、これは……」
「これが、コア……」
「思っていたより大きい……」
「しかし、これは……」
初めて見るコア。
直径10メートルくらいの火山のような形で、その頂上部分は噴火口というか、火口のように口を開けている。
そのコアをぐるりと囲む黒い幕、これがお父様が施した封印、なんだろうか。
「まずいな、やはりブラックホールの効力がかなり弱まっている。」
「所々に綻びも出来てるな。モンスターはそこから飛び出しているってことだろ、これ。」
「この黒いのが封印なんですか?」
「ああ、だが最初はもっと濃かったな。中のコア本体が見えない程度にな。」
今はうっすらどころではなく、コア本体ははっきりと目視できる。
やはりお父様が亡くなってからは効力は弱化の一途をたどっているみたい。
という事は、遠からず封印は消えてしまう。
と、私達の見ている前でモンスターがコアから出現した。
数十体のモンスターが一度に放出されようとしているけど、何体かはその封印に触れて霧散しコアへと戻っていった。
そして、封印を突破したモンスターは。
「モンスターの力が増大しているってのは、こういう事だったのかよ。」
「“負の面”の濃度もあるだろうが、これを突破できる程の力をもつモンスターだけが出現している、という事だな。」
「でも、それだと話の辻褄が……」
「今はそれより、このモンスターを始末しなきゃ!」
「そ、そうだね!」
出現したばかりのモンスターは、迷うことなく私達へと向かってくる。
やはり手強そうなレベルの、歪な姿をしたモンスターだ。
纏っている魔力も相当なものみたい。
「シャルル!左をお願い!」
「オッケー!そっちは頼んだよ!」
「中央は任せろ、気を抜くなよ。」
「「 はい! 」」
15体程のモンスターを、それぞれに撃破していく。
やはりこの大陸のモンスターは強さが違う。
単純な物理攻撃でも、その威力はあっちの大陸のそれとは比べ物にならないくらい、かも知れない。
とはいえ
覚醒状態の私とシャルルで充分対処できている。
モンスターを討ったその場で滅却し再生させずに消滅させる。
ものの10分弱で、出てきたモンスターは処理できた。
「ご苦労だな。だけどよ。」
「うむ、少しおかしい所もあるな。」
「おかしい所、ですか?」
「ああ、今出てきたのはいわば雑魚だ。例の統制役、行ってみれば士官クラスのモンスターは居なかっただろ?」
「そう、ですね。」
「確かに……」
「じゃあ、そいつはどういう割合で発生するんだって事だよ。」
「過去、瘴気を纏うモンスターは極稀に、という話ではあったが、今のその士官クラスのモンスターはその集団ごとに存在しているという可能性が高い。」
「となると、一定数の割合で発生するのか、あるいは……」
「それって、今までの認識とは違ってきている、って事?」
「今までと同じではない、というのはもはや確定事項だろう。だが、実際どうなのかはまだ誰もわかっていない。」
「なら……」
「それを調べる事も必要、という事ですね?」
「ああ、そういう事だ。とはいえ。」
「調べるったって、な。どうすりゃいいんだって話だな。」
つぶさにコアを監視し続ける、という時間は無い。
とはいえ、普通の人たちがここに近づける事もできない。
何しろモンスターそのものの脅威もさることながら、瘴気に中てられたらまた悲劇を生むだけだろうし。
「あの、一つ提案が。」
「シャルル、何だ?」
「お兄様に報告して、私達兄妹の中から監視役を付けてもらうっていうのは?」
「そ、それなら可能かも知れない、かな?」
「ああ、それも一つの手ではあるな。だが、ここまで来る者がいるかどうかだ。居たとしても、この地のモンスターに対抗できるレベルの者は居るのかっていう疑問もある。」
「実際な、現状だとトキワとヒバリ、スペリア、あとはハーグとネージュぐらいしかムリなんじゃねぇか?」
「そう、ですね。でも、トキワお兄様とヒバリお姉様、スペリアお姉様はイワセを長く離れるというのは難しいし。」
「サクラ達に頼むにしても、だな。ひとまずそれはまたあいつらを交えての話になる。ひとまず私達は近辺のモンスターを片っ端から減らすしかあるまいよ。」
「そうですね。」
ひとまずの今後の課題ができた。
でも、今はこの地のモンスター討伐が最優先だ。
コアの封印の弱体化。
モンスターの進化、あるいは変化。
それらの調査。
そして出現するモンスターの処置。
根本的な解決策すらない現状じゃ、それを延々と継続するだけで終わってしまう。
再封印など遠く及ばない。
何か、現状だけでも打開できる策を考えないと。
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