後編

「エミ~~、こっちこっち!!」


あれから1年が過ぎた。

ホストクラブに通うのもパパ活も止めて、今は自分のための生活を送れている。


「今行く~」


新たに友達も出来、何不自由ない生活を送れている。これが世間一般で言うなんだと思う。


「それにしても私エミとこんなに仲良くなるなんて思ってなかった」

「私も!何か、前までは心も体も疲れ切ってて全部下に見てたっていうか、見えてなかったんだよね」

「何か、綺麗だけどめっちゃ近寄りがたかったもんね。今は違うけど~。」


この子は理子。大学で授業は同じだけど全くしゃべったことがなかったギャル系女子。メイクも上手くて優しくてすごっく可愛いの!!

優也グッバイ事件の直後に友達を作りたくて、自分を変えたくて話し掛けたけど、ほんとにあの時勇気出して良かったー!


「なんか変わったきっかけとかあるの?」

「あぁ~えっと、元々人付き合いが苦手でだったんだけど変わりたくてさ」


ホストクラブに入り浸ってたことは内緒にしている。バレて今の関係が壊れて欲しくないし、もう関わりたくもないから。


「そっか~。変われて良かったね!」

「うん!」

「そういえば、明日予定空けといてね。彼氏紹介させて!!」

「理子の彼氏、話はよく聞くけど会うのは初めてだね。楽しみ~」


普通な生活を送れて、どうでも良いことで笑えて、生きてて良かったと実感できる。こんな生活がいつまで続いたら良いのになぁ~~。
















次の日


「初めまして、理子の彼氏の裕吾です。エミさんのことは理子からよく聞いてます」

「初めまして、うわぁぁ。イケメンさんじゃん。理子、いい男ゲットしたね!」

「まぁねぇ~」


理子の彼氏は爽やか高身長イケメンで人当たりがよさそうな好青年だった。

いや、身長本当に高いな。目測だけど180cmは絶対ある。


「じゃ、行こっか」

「このお肉屋さんじゃないの?」

「もうちょっと移動したとこにあるところ~」


そう言って理子と裕吾さんは歩き始めた。

ここら辺は私が元々住んでいたマンションや少し歩けば夜のお店が建ち並んでいる。

何かこの辺に来るのも久しぶりだな~。あれから引っ越してここに来るのは丸々1年ぶりくらい。


「キョロキョロしちゃって可愛いかよぉ」

「ごめん、ついね~」

「............久々だもんね」

「えっ?」

「うんうん。何でも無い、あっ着いたよ」


理子が何か変な感じだけどどうしてだろう。そんなことを思っていたら着いたらしい。


「えっ!?!?ここって...........」


理子達に案内されたのは私が通っていたホストクラブの前だった。


「なんでホストクラブ?なんでここ?えっえっ???」

「こっちこっち~~」


手をつかまれ店内に連れ込まれてしまった。


もう2度と来るはずが無かったのに。それに何で理子が!???

頭の中が上手く整理できずにいる。


席に案内され、裕吾さんは荷物置いてくると言って奥へ入ってしまった。


「急にごめんね。裕吾が会うなら店が良いって聞かなくてさ」

「....それって大丈夫?裕吾さんホストだったの!?彼女っていうのも嘘なんじゃ」


「「「うるさい!!!」」」


「お前に何が分かる!裕吾は私の彼氏なの。誰がなんと言おうと!!結婚してしあわせになるの!!」


理子の変貌に言葉が出ない。こんなに感情的になる姿は初めて見た.......

こんな子じゃ無いのに.....??


「あっ、急に大声出してごめんね。裕吾はお金貯めるためにホストしてるの。だから、そんな悲しいこと言わないで」

「で、でも........」



「そいつの言葉信じてやれよ」


聞き慣れた声が耳に入った。懐かしさと恐怖が同時に私の脳を支配していく。


「優也..........」

「久しぶりだな、エミ」


どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?

普通に声かけないでよ。ここから出たい、今すぐ離れたい。


「ふふ。エミと優也って仲良かったのに喧嘩別れしちゃったんでしょ。優也にもお願いされちゃったし折角なら私が仲直りの場をセッティングしてあげようと思ってね」


「なにそれ。それで私と友達ごっこしてたってわけ?」

「ううん。元々近付く気ではあったけど、エミが思いのほか良い子でごっこじゃなくて本当の友達になれたよ....................................エミは違うの??????」



今まで見たことのないような生気の無い真顔で聞いてくる。


怖い。今まで見てきた理子の姿は全部嘘だったの?怖すぎる。震えが止まらない。

と、とりあえずここを離れないと


「今日はちょっと帰る。それじゃあ」

「また、俺から逃げるのかよ」

「えっ?」

「もし前みたいに逃げればお前の家族殺すからな。1年あったんだ。調べる時間はたっぷりあったよ」


もう、そこには私の知っている優也はいなかった。


「もう2度と俺から離れなくさせてやる」

「キャー愛の告白素敵~~」





どうしてこうなったの.......?


友達を作りたいなんて思ったから?普通の生活を送りたいなんて高望みをしたから?優也から離れたから?それとも、この世に産まれてしまったから?


「来い!!たっぷり分からせてやる」


優也が私の髪の毛を引っ張り引きずりながら店内を歩く。


どうして私がこんな目に遭わないと行けないの?何か私が悪い事でもした?!!?

もう嫌だよ。誰も助けてくれないのに助けを求めてしまう。


助けて。誰か助けてよぉ




「あはっあはははっはははははははははは」


もう笑うしかない。痛みも感じれなくなってしまった。











この世に神様なんていない。


もしいるんだったら、私を幸せにしてよ。普通の生活を送らせてよ。


ねぇ....神様...........ねぇ............ってば............................................................

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