第78話 最高の戦いにしよう
「安心してほしい。本当に私は全力でキミと戦いたいだけだ。戦っている間にテルくんを傷つける、なんて野暮なことはしない」
「……信じるよ。アンタほどの男が言う言葉だからな」
「……ありがとう。恩に着るよ」
そうしてアレスとサヴォンは移動を開始する……前に、
「では……僕は僕の目的のために動き始めますね」ミラが言った。「アレスさん。サヴォン団長……悔いの残らない戦いにしてくださいね」
ミラは深々と頭を下げて、走り始めた。おそらく国王様のところに行くのだろう。ミラはミラでやることがあるのだ。
しかしアレスとサヴォン団長の両方に発破をかけるあたりがミラらしい。ミラにとってはサヴォンも師匠的存在だし、もしかしたらサヴォンが勝ってほしいとまで思っているかもしれない。
まぁ負けないけれど。
それからアレスとサヴォンは最終決戦の場所に移動した。
その場所とは……
「舞踏会場……?」なんだか意外な場所だった。「……闘技場とかかと思ってた」
騎士団の入団試験で使われた闘技場で最終決戦だと思っていた。そっちのほうが戦闘用だろうし、見栄えもよいだろうに。
「覚えていないか?」サヴォンは舞踏会場の真ん中に移動して、「ここは……私とキミがはじめて戦った場所だ」
「……そういえばそうだったな……」カイ王子の護衛としてこの場所に来たのだった。「アンタがいきなり襲いかかってきたんだよな」
「すまないね。噂に聞いた無冠の帝王……その実力が知りたかったんだ」サヴォンは興奮した様子で剣を構える。「手合わせをして確信したよ。この男は……間違いなく私の期待に応えてくれる、と」
はじめてサヴォンと戦ったときのことを思い出す。あのときはお互いに素手だった。
その後も何度か戦ったが……
「……悪いな……何度か失望させちまっただろ」
「そんなことはない。キミの力量の高さは伝わっていた。最終的に満足せてくれればいいよ」
「そうか……」本当にロマンチストだな。「じゃあ……全力で応えさせてもらおう。こっちとしても……アンタを倒せば、もう無冠なんて呼ばれないだろうからな」
人類最強の英雄より強ければ、おそらく称号は切り替わる。
「楽しみだ」そのセリフは何度も聞いた。「最高の戦いにしよう。アレスくん」
「ああ……よろしく。サヴォン団長」
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