作戦会議

あれからさらに1週間が経過した。学校は終業式を終えて、夏休みへ移行した。

今は、特集の作戦会議のために〇〇駅に来ている。


時刻は、13時を過ぎたところ、

〇〇駅は〇〇県有数のターミナル駅だが、平日の昼ということもあって人の数は本調子ではなさそうだ。


集合場所に向かうために中央改札をでて、東口のエスカレーターへ向かう。

エスカレーターを下ると、集合時間の15分前だというのに二人とも当たり前のように俺を待っていた。


「おはよー。佐藤」

「よう。」(もう午後だけどな...)

「じゃあ、行くか」


日陰から出て、ロータリーの反対側のビルへ向かう。

当然、日差しは強く、数分も経たないうちに汗が湧き出してきた。


厳しい暑さに耐えつつ、向かいのビルの5階にあるファミレスへと入った。

案外、客でほとんどの席は埋まっていたが、運良く眺望の良い4人席に座ることができた。  


「僕、カルボナーラとこのサラダにしようかな」

「じゃあ、ミラノ風ドリアとハンバーグにする」

食べたいものはすでに決まっているようだった。

「俺はイカスミパスタにしよ」


注文をして、ドリンクを取りに行く。

席に戻って、持ってきたコーラを勢いよく飲む。


「めっちゃ喉乾いてるね」

「あーね。今日も暑すぎるんだよ」


早くこの暑さにも慣れたいところだと思った。


「んでさ、結局何取材するの?」

橋本が聞く。

「この集落知ってる?」

それに応じて、部室から持ってきた新聞と共に、田気集落について説明をした。最初、二人は記事の内容を疑っていたが、信頼できる文献などにもその情報が載っていることから、記事の内容を信頼するようになった。


「んで、俺はここの集落の文献を漁りまくって、それを特集にしようと思ってる。」

「は?」

橋本が急に驚く。

「え?」

それに応じて俺も驚く。

「行かないのか?」

「い、行くのか?でも、集落に行く道は閉鎖されてて、実質立入禁止だぞ。」

言われるまで、集落に行くという発想はなかった。それにリスクが大きいように思える。


「行くのは危険かもしれん。だけど、俺は話聞いてて行くべきだと思った。」

なんだか橋本の言う事は理屈が通ってないが、ひとまず行くべきらしい。

「僕も行くべきだと思うよ。」

更に普段はそんなアクティブではない矢板も橋本の考えに賛成していた。

「不法行為じゃないか?警察沙汰になったらどうする?」

「今更そんなこと気にしてどうする。」

「あ、ああ・・・」

思い返せば、悪名高い新聞部だ。過去にトラブルを起こした部員はごまんといる。

俺自身、何回も危ういことをしていた。

「わ、わかった。行くべきかもしれない。だが、こういうことはちゃんと部長にも通すべきだろう?」

あまりに予想外の展開に動揺したが、ひとまず事の発端でもある部長に連絡しようと思った。


「確かに、部長の賛成も得た方が良いしな。」


発言に何か違和感を感じた。スマホを取り出し、彼女にSNSで事情を説明する文を送る。


するとすぐに既読がつき、返信が送られてきた。内容は、GOサインを示すものだった。むしろ、行くべきという内容である。部長は危険なことには反対すると思ったが、全く逆の反応に心底驚いた。こうなったら…


「行くしかないか。」

「そう来なくちゃな。」

橋本が笑顔で言った。

こうして、集落へ行くことが決まった。


「カルボナーラと小エビのサラダです。」

店員によって料理が続々と運ばれてくる。

パスタやステーキは湯気が出てて熱そうだ。


いただきますを言ってそれぞれ食べ始める。


「でも、行くって、どうやって行くか?」

「僕、地図見てるけど道路が閉鎖されてる場所から集落のあった場所まで5kmくらいだって。」

「5kmは普通の道だと徒歩で1時間くらいだが、長年放棄された山道なら相当な時間がかかりそうだな。」

橋本曰くそうらしい。

「しかも、ここからこの集落まで片道6時間かかるから、泊まりは不可避だな。」

泊まると聞いて心がざわつくが、実際、泊まらないと集落をちゃんと探索できなさそうなので、理には叶っている。

「じゃあ、何処で泊まるんだ。近くに民宿とかあるの?」

「なさそう…」

矢板の発言から、集落の近くには宿泊施設が無いらしい。

となると、残る選択肢は野宿である。


「この際、集落で野宿した方が早いんじゃないか?」

冗談のつもりで言った。


「じゃ、そうするか。」

だが、橋本たちは、あっさり受け入れてしまう。


「それなら、2泊くらいしようぜ。」

さらに、橋本が思い切った発言をした。


「ああ。」

正直、何泊であろうと行くことには変わりは無いのでどうでも良くなった。


その後も、ウェブマップを探し回りながら旅程について念入りに話し合った。随分と長い時間話していたらしい。店を出る頃には食べ終わった料理の皿が下げられ、テーブルの上に何も残っていなかった。


結局、田気集落に2日間野宿することとなり、来週の月曜日に作戦決行とした。


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あの夏の思い出 勉強してたら引き出し壊れた @drawer_fregit

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