第24話 変わらぬ距離感のまま
「けど学園長に話を通しておくって……」
「あぁそういえば言ってなかったけど、私一応教頭でもあるから学園長とはたまに話したりするよ? 最近はあんまりだけど……」
「そうなんですか! それならぜひお願いします!」
(ちょい待て。ちょい待て)
「ん? どうかした? カイ」
(いや、どうもこうも無いぞ。いくら何でも話がとんとん拍子に進み過ぎてるぞ。それにケビンがまだ信用できると分かってもいない)
「うーん……」
「えっと……どうかした? 妙に独り言が激しいようだけど……」
「あ、いえ……ただ僕の中に入っているカイと少し話してて。それでカイが言うにはまだ信用できないって……」
「あぁ。そうだったんだね。まぁそういう反応になるのが普通だと言えるね」
そう言ってケビン教頭は頭を抱え、唸るような声を上げる。
「……だったら僕の事を試すのも含めて実際に君らが故郷の村に戻る間、私が教師陣の人らに話を通しておく。これでどうかな?」
「僕は良いですけど……カイは?」
(正直その条件でもあまり納得するほどじゃないし、こっちから聞きたいことは割とあるけど……飲むよ。その条件で)
「カイもオッケーらしいです」
「ほ……良かった。それじゃあこっちはこっちで話は通しておくから行っておいで」
「はい! ありがとうございます! ケビン教頭」
そうして中庭での秘密の会話は終了して僕もそのまま自分の部屋に戻ることにした。
「ただいま~」
「おう。戻ったな。ほら、ミナ……」
「ええ……お邪魔してるわ。アレン」
部屋に戻ってラインとミナ、カイの四人で一緒に今後の方針について考えようと部屋の扉を開けると、ラインだけじゃなくなぜかミナも部屋の中に立っていた。
「……ってミナ? どうしたの?」
(げ……なんでミナがここに……正直苦手だからあんまり会いたくはないんだけどな……)
「ちょっとラインから聞いたのよ。カイの事とこれからの事……それで……」
「それでアレン達が帰って来たタイミングでちょっと会議を開きたいなって思ってさ。二人を待ってた」
「そうだったんだ。ごめん、待たせちゃって……実はこっちも状況に進展があってさ。それについて話したいと思って二人を探してたんだ」
「おぉ……! ならここで大体の話を共有しておいた方が良いな! ちょっと飲み物用意するぜ!」
そう言ってラインは一人楽しそうに張り切った様子で、キッチンの方へ移動していった。
「……えっとそれで今ってどっちなの?」
ラインが飲み物を持ってくるまでの間、最初はただお互いに黙っていたけれど、それでも最初に口を開いたのはミナの方だった。
「今は僕だよ。ミナ」
「そっか……それでカイは? いるの?」
「うん。いるよ。変わろっか?」
「え? 出来るの? どうやって……」
「それはね。こう!」
僕はすかさず自分に向けて例の魔法を掛けて、カイと入れ替わる。今日使い始めたばかりだけど、この眠りについて入れ替わる瞬間に生じる吐き気? みたいな感覚慣れないな……
Side カイ (カイ⇔アレン)
「っとまぁこんな感じで寝さえすればいつでも、どこでも入れ替われるようになったて訳だ」
「そう……」
「ってか。なんか今日会ってからずっと変じゃね? なんかしおらしいというか、大人しいというか……」
普段だったらアレンには好意的に接して、俺には分かりやすく雑に接するのに、まるでどこか憐れむような……
「ラインから聞いたのよ……その…昔いたっていう友だちの話を……」
「あぁ。あの話ね……」
確かまだ誰にも話したことないって言ってたけど話したんだ……
「それで……もしアレンがそういう目にあったらと思うと、その……」
「あぁ、そういう事か……」
幼なじみがそういう目に合うのは我慢できないから態度を改めたってことか……
「そういう気遣いはいらないよ。ミナ」
「え、けど……」
「大丈夫だから。それに解決策については目途が立ってるから……まぁそこはラインが来たら話すよ。それにさ。ミナがそういう態度だと調子狂うっていうか……」
「なっ!? 別にあんたの事はどうでもいいのよ! ただアレンがひどい目に合うのは嫌だって話なの!」
「いやっ。それはそれで傷つくんだが!?」
「はいはい。二人とも。痴話げんかはそこまで。早速会議を始めよう」
『痴話喧嘩じゃない!』
そうして軽い口げんかに発展しそうな所でラインが仲裁に入るように三人分のコーヒーを持って戻ってきたことで本題に入ることにした。
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