第23話 見えてくる道筋
「君たちは二重人格者かな?」
オブラートに包んで聞くわけでもなく、それでいて回りくどくも言わずケビンは俺に対してそう告げた。
「……はい。そのようなものです。少し違いますけど」
「少し違う? それはどういう……」
「ケビン先生。今か五分待っていてください」
「五分……分かったよ」
口で説明するよりもこの肉体で何が起こっているのか。それを説明するにはこうした方が手っ取り早いと思い俺は杖を自分の頭めがけて向けて唱える。
「オザスリン」
この魔法自体の即効性が強かったのか、すぐに瞼が重くなるのを感じたことでここからの説明は大体の部分をアレンに任せることにして、目を閉じた。
*アレン(アレン⇔カイ)
「ん……あれ、ここは……」
「中庭だよ。それでどうしたのさ? さっき気を失ったみたいに寝たけど……」
「あれ……」
普通にここはどこ? カイ、入れ替わる前の状況を伝えて欲しかった……
「ん? あれ、あなたは……」
(お、なんとか成功したんだな……)
「カイ! ちょっと説明してよ!」
(……悪い。完全にこれはバレちゃった以上アレンの口から説明した方が良いと思ってこうして見て分かったてもらえる気がするよ)
「……分かったよ。えーと初めまして、ですかね? ケビンさん」
「そうだね。……それにしても驚いたよ。まさか人生長く生きてきたけど君の様な人に出会えるなんてね……」
ケビンは感心した様子で首を縦に頷きながらそう言った。
「っていうか疑ったりしないんですか? 普通こういうのって疑ったりするんじゃ?」
「うん……まぁ君の言う事もごもっともだよ。実際の所、最初の間はそこまで信じてなかったからね~」
「ならどうして信じてくれるんですか?」
「うーん……強いて言うなら君の目かな。なんだかその誠実そうな瞳を見て話を聞いてみようと思ってね……後はただのカンかな……」
「そうですか……」
それならそれで話した所で問題ないと判断した僕達はようやく本題に入ることにした。
「えっと……まずどこから話そうかな」
「とりあえず私は君たちの肉体? 精神? がどういった原理で入れ替わっているのか気になるかな……」
「入れ替わりの原理か……まぁこれに至っては説明が楽だしここから話すよ。」
「うん。お願いするよ」
「まず。僕らは二重人格であってそうでもない存在なんです」
「であってそうでもない……か」
「例えばさっきみたいにスリープ魔法を使わないと入れ替われなかったりと正直不便な所はありますけどね……」
「そうなんだね……それはまぁ困ったりすることもあったんじゃないかな?」
「えぇ……まぁ。気づけば、自分の体に僕以外の誰かが入っていて喋ることしかできないと知った時は結構パニくりましたね」
そんな時、カイが落ち着かせるためにあんな行動をとったのには今でも良しとしていなけど……
「そうか……それで今はその状況へに解決方法は思いついているのかな?」
「解決方法……かどうかはまだ分かりませんけど、一つだけ」
「うん。それは?」
「僕の故郷の村にその手掛かりがある可能性が高いので、ひとまずそこに行ってこようかなと思って……」
「アレン君の故郷? まぁそれは良いとしてだ。その間学校の事はどうする?」
「そこは……まだ考えていないです……」
「それなら私の方から校長に話を通しておこうか?」
「え!? 良いんですか? というかなぜ急にそこまで協力してくれるんですか?」
「うーん……どうしてか、まぁただ生徒の味方でいたいとでも言っておこうかな」
そう語ったケビン先生の表情は少し、悲しそうに見えたのは僕の気のせいだろうか……
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