第20話 スリープ魔法 オザスリン

side アレン(カイ)

「ん……」

「お、起きたか。今は……どっちだ?」

 ぼんやりとして視界の中、目元をこすりながら辺りを見渡すと机に座っている誰かがこっちに寄ってくる。

「俺だよ。ライン」

「カイ! しばらくぶりだな!」

「そうだな。というか元々俺としてはこの体に戻るつもりはなかったんだけどな……」

「なんでだよ?」

「なんでも何も、お前たちの関係の中に入るのはあまりよくないって思ってるからな……」

「まぁ……少なくともミナはそう思ってるみたいだな。けど気にするなって!」

「そうは言うけどな……」

 こうして話している間も3人の仲に入り込むのに対して妙な抵抗を感じた。


「あ、そうそう。アレンから今日はこのまま過ごしてくれって言われたよ」

「そうか……それなら、なるべくは一緒にいた方が良いのか? トラブル回避の為にも」

「うーん……正直もうそこまで疑われるような事は起こらないと思うしな……いいよ。もう一緒に行動しなくても」

「分かった。けど何かあったらすぐに言えよ?」

「ああ。そうするよ」

 とりあえず暇だから何かしようと思ったが、どうやら今日はそもそも学校が休みなので大人しく部屋の中で過ごすことにした。

「ああ、そういえば思い出した。カイも覚えておいた方が良いかもな」

「ん? 何がだ?」

「スリープ魔法。眠ったり意識が消えると入れ替われるんだろ? ならいつでも切り替われるようにしてたほうが良いかもな」

「あぁ、そうだな……ってそれを先に言えよ!」

「悪い……そもそもこの魔法、使い道がほぼないからさ」

「そうか……まぁいいや。ありがたく教えてもらうよ」

 と思い、早速教えてもらおうとするもどうやら詠唱の言葉を覚えるだけなのですぐに使えるようになった。


「オザスリン! なんか小動物みたいな名前だな……」

 スリープ魔法を会得したことによって、いつでも俺とアレンはその魔法を自分に掛ける。これ一つで起きるさえすればあらゆる状況に対応できるようになった。

 そんなこんなで完全に暇になった俺は、勉強から逃げる為に図書室に足を運んでいた。 そんな途中で……

「そういえばラインはこの魔法ほぼ使い道は無いって言ってはいたけど、本当か?」

 確かに言われた通りただ掛けた相手を眠らせる。ただそれだけの魔法だ。使い道なんて考えられるわけない。

 ただし、それは使い方ひとつでどんな魔法も役立つものとなる。

「オザスリン……ダメか。この距離じゃ」

 覚えてからというもの、俺は幾つか実験したいこともあったので、校内の広場に来ていた。実験と一重に言っても特に危険なことはしない。

 そう。ただ周囲にいる小鳥やその他生物にどのぐらい通用するのか試すだけだ。


 実験その一。スリープ魔法『オザスリン』この魔法の発動感知射程がどのぐらいなのか。

 「とりあえず……あそこの鳥にでも掛けるか。オザスリン」

 詠唱と同時に杖をその小鳥に向けるも、さすがに距離が出来れば反応はしないと思っていたが、意外とこの魔法の射程は思っていた以上に結構広いかった。それゆえに掛けた小鳥はそのまま流れるように地面にすとんと落っこちた。



 「感知射程の長さも分かったし、とりあえずこのぐらいでいいか……」

 後は……この魔法がどのぐらい掛けやすいのか、あるいは掛けやすいのかその辺りの実験はまた今度にしよう。

 そう思い、再び図書室へと足を動き始めた。

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