第6話 上手く騙せ!
「アレン~体調はどう?」
「わ、ミナ。早いね。授業は終わったの?」
「うん。ついさっき終わったわ。それで…はい。これ」
そう言ってミナは自分の鞄から一枚の紙を俺の手渡す。
「……これは?」
「見ての通り、授業の内容を纏めた紙よ。アレンの為に纏めておいたのよ」
「そ、そっか……ありがとう……」
とは言ってもぶっちゃけた話、こっちの世界の文字。ギリギリひらがなの様に見えなくもないので、なんとなく解読は出来る。
「それで……それはそれとしてなんでラインまでいるのさ」
「なんでって……それは酷いだろう。幼なじみなのにさ」
まさかミナだけではなくラインも一緒に来るのは少し予想外だ。これで完全に幼なじみトリオ(一人は別人)が揃ってしまった。
ただでさえミナから疑いの目を掛けられているこの状況で、ラインというもう一人の幼なじみからも疑われればそれこそ多分、ゲームオーバーだ。きっと。
「アレン? アレン!」
「ん? 何?」
「何じゃないよ……またボーっとして、もしかしてまた体調悪くなったの?」
「いや……そういうのじゃないからさ、気にしないで」
「……そう。なら行きましょ」
「う、うん……」
そう言って俺は体感4時間以上はいたであろう医務室からようやく脱出することが叶った。
Side ミナ
(とりあえずもう一度様子を見に来たけど……元気になってくれて本当に良かった……)
しかしそれはそれとして……
(さっきの会話の時は『俺』って呼ばなかったわね……)
そう思い、ふと彼の方を見てみるもやっぱり変わった様子もなく、いつも通りの少しだけ頼りない彼の姿がそこにはあった。
「ねぇ、ライン。ちょっといい?」
そこで私は後ろにいるアレンには聞こえないぐらいの声量でラインに声を掛ける。
「なんだ? ミナ」
「今のアレンを見てどう思う?」
「どうって……普通だろう? それがどうかしたのか?」
「いや……特にこれといったことではないのだけど……」
考えていなかったけれど言うべきだろうか……今のアレンはどこか怪しい…と。
もしかしたらただ私の勘違いなだけかもしれないし、そうでもないのかもしれない……そう思うと増々、私は一人では判断しきれなくなってきた。
「……ラインってさ確か私よりも幼なじみとしては長い方だったわよね?」
「ん? お、おう。まぁな。ミナと違って家がお互い、隣同士ってのもあって昔からよくあったよ」
「そう……」
「ってなんだよ! さっきから。アレンがどうかしたのか?」
「いえ……ただ、少し気になるような違和感があって……私よりも付き合いが長いあなたの方が何か妙に感じる所はあると思って聞いたの」
「違和感ね……それで? ミナの言う違和感って?」
「それはね……アレン、ついさっき一度だけ自分の事を『俺』って呼んだのよ……」
「アレンが自分の事を……」
それを聞いたラインの反応を見るに、やっぱり彼からしてもそういう風に自分の事を呼ぶところを見たことがなさそうな反応みたいだ。
「それで……今のアレンは偽物だと思ってるの」
「そこまで疑わしいって言うのなら一つ、カマかけてみるか」
「カマかける? どうやって?」
「それはだな……」
「それで? あれから体調はどうなんだ。アレン」
「元気になったよ。寝て体を休めたおかげで」
「にしてもそんな感じで体調崩すのなんてあの時以来じゃないか? 」
「あの時ってどの時だっけ?」
これは下手な回答をすると墓穴を掘る事になるな……
「覚えてないか? 3人一緒に風邪を引いた時にさ、確かその時に誰が一番早く体を治せるか競ってて──」
ここだ! この話にその早く治ったやつの名前を言えば疑いの目線もマシになるはず!
「確か、ミナが一番早く治ったんだよね?」
「え? 違うぞ。俺が早く治ったんだよ。ちなみにアレンがビリケツな」
「へ?」
や、やばい……完全に焦って違う答えを言ってしまった……
「……やっぱり、今のアレンっておかしいと思ってた。君って本当にアレンなの?」
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