第二十六幕:南匈奴の襲撃と遊牧連合の強化
十常侍の乱が勃発する少し前、南匈奴は密かに中原南下を狙い、動き始めていた。彼らは鮮卑と手を組み、北方の遊牧勢力を一つにまとめて中原への大攻勢を仕掛ける準備を整えていた。そして、その目標は、何進の命令で孟津に孤立していた丁原軍だった。
南匈奴の指導者、羌渠は陣営で誇らしげに部下たちに語りかける。
「我々の時代が来た。中原の覇者となるため、まずは丁原軍を打ち破る。於夫羅よ、騎兵を率いて先鋒となり、奴らの陣を突き崩せ。ここから我々の栄光が始まるのだ!」
右賢王である於夫羅は、力強く頷き、すぐに配下を率いて突撃の準備を整えた。
「承知しました、父上。私が必ず、奴らを恐怖に陥れてみせます!」
南匈奴の騎兵は、夜明けと共に孟津の丁原軍へと猛進した。馬蹄の音が大地を震わせ、圧倒的なスピードで前進する彼らに、丁原軍は驚きの声を上げた。
「敵襲だ!南匈奴が攻めてきたぞ!」
兵士たちが混乱する中、南匈奴の兵たちは戦慣れした動きで瞬く間に丁原軍の前線を崩し始めた。馬上からの猛攻は苛烈を極め、丁原軍の士気は瞬く間に低下していった。
しかし、丁原軍には恐れ知らずの猛将、呂布がいた。彼は戦場の混乱を冷静に見据え、愛用の方天画戟を握りしめた。
「俺が出る!南匈奴を叩き潰す!」
呂布は兵たちを奮い立たせるために前線に出て、次々に敵兵を薙ぎ倒していく。彼の圧倒的な力は、まるで風のように敵を切り裂き、於夫羅の指揮する南匈奴の部隊をも一時的に押し返した。
「なんだ、この男は…!これほどの猛将がいるとは…!」於夫羅は驚愕しながらも、必死に部隊を立て直そうと声を張り上げたが、呂布の猛攻に次第に圧倒されていった。
しかし、その時、丁原軍の後方から突然現れたのは、烏桓の援軍だった。北方の同盟勢力である烏桓が鮮卑の指示を受け、丁原軍の背後を強襲したのである。
「後ろにも敵が現れた!烏桓だ!」兵士たちは後方の敵に気づき、絶望に打ちひしがれた。
烏桓の指揮官、蹋頓が冷静に配下へ命じる。
「全員、丁原軍の退路を断て!挟み撃ちにして、奴らに逃げ場を与えるな!」
挟み撃ちに遭った丁原軍は完全に崩壊した。兵たちは次々に倒され、戦場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。圧倒的な数と戦術に屈し、丁原軍は逃げ場を失った。
丁原は戦況を見渡し、もはや勝利の望みがないことを悟った。彼は、部下たちの命を無駄にすることなく、南匈奴に降伏する決断を下した。
「これ以上の無益な抵抗は意味をなさぬ…我らは降伏するしかない。」
呂布もその決断を受け入れたが、その胸中には屈辱と怒りが渦巻いていた。彼は無敵を誇る自らの力を知りながらも、現実を冷静に見極めていた。
「丁原様…私は、この決断を受け入れますが、いつか必ず、この屈辱を晴らしてみせます。」呂布は方天画戟を収め、戦いの意思を抑え込んだ。
こうして、丁原軍は降伏し、呂布を含む兵士たちは南匈奴に従属することとなった。勝利を収めた南匈奴の指導者たちは連合の力がさらに強固になったことを確信していた。
羌渠は息子たちに向かい、誇らしげに語る。
「於夫羅、呼厨泉、去卑よ、よくやった。烏桓と共に、丁原軍を壊滅させた。我らがこの連合をさらに強固なものにしたのだ。」
呼厨泉は冷静に頷き、応える。
「この勝利により、我々の力は中原にも響き渡るでしょう。次なる戦いが楽しみです。」
於夫羅もまた、呂布を見つめながら静かに言った。
「呂布という猛将が味方に加わったことで、我らの力はさらに増した。誰も我々に立ち向かうことはできない。」
こうして、南匈奴と烏桓、そして鮮卑の遊牧連合はますます強力な勢力となり、呂布という無敵の猛将を加えた彼らの脅威は、中原全体に広がりつつあった。檀石槐こと武田信玄も、北方からの報告を聞いて満足げに頷いた。
「これで、中原への道はますます確かなものとなった。風林火山の旗の下、我らの進撃は誰にも止められぬ。」
北方遊牧連合は、鮮卑を中心に、かつてないほど強固で恐ろしい力を誇る勢力として、中原を脅かし始めていた。
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