第14話 有能な補佐(3)
「ホルダーネックが無難じゃない? 首も隠せるしさ」
次の日、俺はジークが以前俺の隊服を注文したデザイナーと真剣にドレスについて話し合っていた。
「ん~~でもね~~ワンショルダーで鎖骨を見せて豪華なアクセサリーで首元も隠した方が、色気もあって似合うと思うわ~~~それにレンちゃん、全体的に筋肉質だから隠し過ぎるとごつく見えるわよ」
デザイナーがサラサラとデッサンを描くのを見て頷いた。
「ほら、こんなのどう?」
俺はデザイナーの手元を覗き込みながら言った。
「あ~~なるほど。じゃあ、下はプリンセスラインで、上はワンショルダー?」
「そうね~~プリンセスラインというよりはAラインよりのワンショルダーにするわ」
「うん、いいね。俺に似合いそう」
「絶対に似合うわ!!」
二人で頷くと、同時に少し離れたところでこちらを眺めているジークを見た。
「じゃあ、ジークそういことでいい?」
「いいかしら?」
ジークは頭を抱えながら言った。
「悪い。私には暗号か何かに聞こえた。二人に任せる」
俺は再び、デザイナーを見ながら言った。
「色はどうする?」
するとデザイナーは上機嫌に言った。
「それはやぱり紫でしょう~~~♪」と言った。
その瞬間、「ごほごほ」とジークが咳き込んだ。
「ジーク、どうかしたのか?」
ジークは少し赤い顔で「なんでもない」と言った。
まぁ、俺、紫も似合うからいいけど……
「あのさ、原色だと目立つからさ、淡い紫にしてくれないか? あんまり目立ちたくないんだよ」
「あ、紫っていうのはいいのね~~ふふ、羨ましい~~~私も素敵なパートナーが欲しいわ~~~~!!」
なぜか盛り上がるデザイナー、そして顔を赤くするジーク。
俺が首を傾けていると、デザイナーが「あなたのはレンに合わせる感じでいいの?」と聞くとジークは「ああ」と答えた。
「あ~~腕がなるわ~~こんな可愛い男の娘のドレスを作れるなんて~~~じゃあ、もう行くわ!! 楽しみにしててね~~~~」
デザイナーは素早く去って行った。
デザイナーが部屋を出ると、ジークが俺の顔を見ながら尋ねた。
「ドレスの色……本当に紫でよかったのか?」
「うん。俺、紫好きだし、たぶん似合うし」
俺の言葉を聞いてジークは口を押さえながら「好き……似合う」と呟いた後に、俺を見ながら言った。
「そうか……私の瞳の色は紫だ」
「うん、そうだね」
俺はジークの言いたいことがいまいちわからずに首を傾けた。
「そうか、わかっていたのか……では、引き続き大茶会の準備を頼むぞ」
「うん!!」
こうして俺は、大茶会の準備をしながら学院で聖女となったリディアの様子を探りながら生活していた。
そして俺は、学生から剣術講師の補佐として話かけられていた。
「すみません、レンさん。練習棟のカギを見てくれませんか?」
「え? 何かあった?」
「はい……少し開けにくくて、お願いします」
「いいけど……」
俺は学生と一生に練習棟まで来た。
ガチャガチャとカギを開けてみるが特に問題もないし、閉めるのも問題ない。
「大丈夫みたいだけど……」
すると先程の学生の姿が消えて、見たこともない数人に取り囲まれた。
「今日は逃がしませんよ」
俺はつい頭をかいた。
「は~~君たちさぁ、学生のうちからそんなモブ悪役みたいなことしてないで、勉強して訓練して、輝かしい未来を選べよ~~」
「うるさい!! こっちはお前を見るたびムラムラして何も手につかねぇんだよ!! 責任とりやがれ!!」
なんか、エロ動画みたいなセリフだな~さしずめ俺はこのあと「仕方ないわね、先生が教えてあげるわ」と言って服を脱ぐのだろうか?
悪いが、そんなことには付き合ってられないな。
「悪いけど付き合ってられ……」
「何をしているんだ?」
俺の背後からよく通る声が聞こえたと思うと、俺をかばうように広い背中が見えた。
「アルバート殿下……」
俺を襲おうとした学生の声でこの人物の正体がわかった。
「このようなことで学院の品位を落とすな。顔は覚えた。次はない」
アルバート殿下の威圧ある声に俺を襲おうとした学生は蜘蛛の子を散らすように去って行った。
「大丈夫か?」
振り向いた姿があまりにも理想の王子様過ぎて、俺は思わず口角を上げた。
「ありがとう、やっぱりカッコイイな」
「は?」
アルバート殿下の唖然とした顔と、さっきの爽やかな顔にギャップがあり過ぎて、俺は思わず笑顔になっていたのだった。
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