第13話 有能な補佐(2)



「レン……ああ、なんて可愛いんだ……今日は逃がさないよ」


 ジークは女の子に非常にモテている。

 そして俺は非情にも……


「はいはい、逃げるに決まてんだろ!?」


 俺は、突然襲って来た学生を投げ飛ばした。

 

 最近、本当に多い。

 もう、なんなんだよ!?


 どうやら俺が女の子と一緒にヘラヘラお茶を飲んでいるのを見たのか、弱そうだと思ったのか、最近俺は『好きです、付き合って下さい』というピュアな告白から、『俺を受け入れろ!!』という強引なものなのありとあらゆるお誘いを受けている。

 ――男性からな。


「ほんっと意味がわかんねぇ」


 俺は不機嫌に馬車に乗ると、ジークが不思議そうに言った。


「どうかしたのか?」

「別に?」


 俺とは違って女の子にモテるジークについ冷たい対応をしても仕方ないだろう。


「もしかして、あなたが男装の麗人って噂が広がっているのかしら?」


 カレンの言葉に俺は思わず「はぁ~~?」と声を上げた。


「そんな噂があるのか?」


 ジークがカレンに尋ねると、カレンが頷いた後に言った。


「ええ。みんなそう言っているわ。まぁ、レンったら可愛らしいし……」


 こっちの男性を見ると確かに俺は……女の子に見えなくもない。


「なるほど、それで最近言い寄られるのか……」

「言い寄られているのか!?」


 ジークが眉を寄せながら顔を寄せて来た。

 みんなジークの前では絶対に俺を口説くことはないので、知らないのも無理はない。


「まぁな。でも、問題ないよ」

「用心するに越したことはない」

「うん。まぁ用心はする」


 俺は真剣な顔で心配されて少しだけ恥ずかしくて顔をそむけたのだった。




「ジーク様。こちらが届きました」


 家に戻ると侯爵家の家令がやたら豪華な封筒を差し出した。


「来たか……」


 ジークはそう言うと、「部屋に来い」と言ったので、俺とカレンは頷いてそのままジークの部屋に向かった。


「これは王家の大茶会の招待状だ」


 そう言って、ジークはペーパーナイフで封を切ると、中身を取り出した。そしてジークが招待状を読んで眉を寄せた。


「カレンはもちろんだが。招待は私だけか……しかも今回は従者枠はないとのことだ」


 カレンが大きな声を上げた。


「従者枠がないのなら、レンは参加できないの?」


 実は俺は従者枠で参加するつもりだったのだ。


「難しいだろうな……」


 ジークが眉を寄せた。


「でも、レンは大茶会に出てニコラス殿下のお顔を確認したり、敵か味方を判断を……そうだわ」


 カレンが不安そうな顔を一転させて俺を見ながら言った。


「レンは学院で『男装の麗人』って言われているのよ? お兄様のパートナーとして出席したらいいじゃない。お兄様はいつもお一人で参加されるけれど、通常はパートナーと一緒に出席するのよ。私はニコラス殿下のパートナーだし」


 なるほど、女装して潜入するのか……悪くないな。


「カレン、冴えてるな、ナイスアイディア!!」

「いいのか!? 女性の姿で出席するということだぞ!?」


 盛り上がる俺とカレンを見て、ジークが慌てていた。


「大丈夫だって、俺、女性になった経験あるから」


 演技でな……


「あるのか!?」

「うん」


 驚くジークとは対象的にカレンは張り切った様子で言った。


「レン、令嬢として出席するのなら、作法を身につけななきゃ。しかもお兄様の隣は大注目よ!! 下手なことをすれば……目立つわ」


 カレンを見ながら言った。


「カレン、マナー講習頼む」

「もちろんよ。ノード侯爵家の恥じをさらせないわ!!」


 ジークは少し戸惑いながら「本気なのか?」と言った。

 俺は「本気だ」と答えた。

 するとジークが「ドレスなどは私が手配しよう」と言った。俺はそんなジークに向かって真剣な顔で言った。


「ああ、ドレス、ドレスな。あんまりエロいドレスにするなよ? 俺、さすがに胸ないからな。間違ってもストレートビスチェタイプのドレスとか……絶対に選ぶなよ?」


 ジークは眉を寄せて「ビス? なんだ? よくわからない。お前が相談しろ」と言ったので、俺はデザイナーとドレスを相談することになったのだった。

 



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