第22話 婚約

 突然、ヒルダの婚約者として指名されたアルだったが、正直まだ、状況がよくわかっていない。ただ一つだけわかるのは、今の状況が“宴の余興たわむれ”ではないことだけだった


 「ヒルダよ。この男をどう思う?」


 父に促されたヒルダは恥ずかしそうに、口を開いた


 「こ、この男は馬鹿で、変態で!しょうもない男だ!しかし、父上の言う通り腕は立つ。それに、その......つ、つまり私の伴侶として、不足はない!」


 その言葉を聞いたオーザム卿は、目に涙を浮かべて、嬉しそうに天を仰いだ


 「おお、やっとヒルダもその気になったか。もう年増だと言うのに、嫁に行かぬからずっと心配であったが......ああ、嬉しいものだ......」


 「あ、あの......オレ、いや私の意思は......」


 アルの言葉など聞こえぬと言わんばかりに、オーザム卿は大きな咳払いをした


 「オホン!ああ、すまぬ。せっかくの料理が冷めてしまうな。よし!では乾杯!」


 オーザム卿は、葡萄酒の入ったゴブレットを一気に干す。レオとエルもその様にしたので、アルも見よう見まねで、葡萄酒を干すと、飲み慣れないせいか激しく咽こむ


 「我が息子よ、葡萄酒は嫌いかね?」


 「いえ、このような上等な葡萄酒モノは飲み慣れてないもので......。オーザム卿、急にお嬢さんと婚約と言われましても.......」


 前菜の蒸し野菜を口にしようとした、オーザム卿の手が止まり、さっきまでの朗らかな表情が一変。鋭い眼差しで睨みつける


 「不満かね?」


 空気がピリッと一変し、慌ててレオがフォローする


 「叔父上、婚約の話。急すぎて私たちも飲み込めておりません。アルフレッドの言い分もひとまず聞くべきです」


 「アンフィニ卿......あいわかった。それで?アルフレッドよ、訳を申してみよ」


 低くドスの聞いた声が、緊張感をさらに強める。だがアルは物怖じせずハッキリと答えた


 「私は、主人アンフィニ卿の護衛を仰せつかり、旅に共せよとめいを受けました。兵士なるもの、その命一つ果たさずして、妻をめとり、のうのうと貴族に成り上がるなどできません!」


 アルがそういうと、オーザム卿は大声で笑い、拍手をした。執事アーサーを呼びつけ、葡萄酒の入った瓶を手に取る


 「うむ、素晴らしい心意気!レオ!お前のしもべ......失礼、ご友人は!なんと忠義に溢れた男よ!儂はますます気に入ったぞ!未来の我が息子よ!まずは主人の命を果たし、それから我が娘ヒルダを娶るがよい」


 オーザム卿は瓶の口を、アルの方に向けた


 「......謹んで、お受けいたします」


 そう言ってアルは杯を差し出し、オーザム卿自らが葡萄酒を、一息に飲み干した。“親子の盃”。それはすなわち、“婚約”が成立したことを意味していた


 先程までの緊張感は何処とやらで、歓喜の声とお祝いのムードが一気に渦巻いた


 「アル、おめでとう!」


 レオとエルがお祝いの言葉を投げかけると、アルは照れ臭くなって頭をポリポリとかいた。するとヒルダが、テーブルの下でアルの足元を軽く蹴って合図をしたので、ヒルダの方に向き直る


 「アルフレッド、いや......未来の我が夫よ。不束ふつつかものだが......よろしく頼むぞ。だ、だが!これだけは言っておく!こ......子作りは.......結婚してからだからな!も......もし、今晩、血迷って夜這いに来たならば、貴様の身体を穴だらけにしてやる!」


 ヒルダは、潤んだ瞳でアルの頬に軽く接吻キスすると、アルは立ち上がり、敬礼の姿勢で決意を表明をした


 「わ、私は今晩、“主人の護衛の任”があります!たとえ婚約者とて、結ばれるその日まで!淑女あなたのその貞操には、指一本触れないことを誓います!」


 アルは生真面目に宣言したが、その場にいた一同はどよめき、また空気が凍りついた。一同の視線はアルの身体のとある一点に収斂しゅうれんした。そう、ズボンを突き破らんばかりに、股間リトル・アルが“もっこり”していたのだ


 「なっ.......ッツッ〜!!!!この不埒者ォオオオッツ!!」


 バチーン!


 目の前にを突きつけられたヒルダは、顔を真っ赤にしたままスッと立ち上がり、振りかぶってアルの頬にを見舞ったのだった

 

 「いったぁあい!そりゃないぜ.......!!トホホ〜」

 

 情け無い主役の姿から始まった宴は、夜遅くまで賑々しく続いた


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 その晩、レオが寝たのを確認すると屋敷の兵士に『用を足してくる』と留守を頼んだアルは、用を足してから、草陰に隠れる


 「うーむ、勃起エレクチオン!」


 先刻のヒルダの唇の柔らかさ、香水の香りを思い出し、“アラレもない姿“をあれこれ想像しながら致した


 「......ふう、スッキリした♡」


 量も飛距離も、自己最高だった


 

 

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