第11話 いざビルデヘ
「ふー、食った食ったー…」
テーブルの上に並んでいた料理は綺麗さっぱりとなくなっていた。アランはボコっと膨れたお腹をさすり満足気な表情を浮かべている。
「食べ過ぎよアラン…。これからダンテのとこに行くっていうのに…」
「いーのいーの、食わなきゃ元気でねぇし!それにマーラさんのご飯めちゃくちゃうまかったし!」
「あら、良かった!お世話になったのになんのお礼もできて無くて…せめてご飯でもって気合い入れて作ったんですから!」
「うんうん、美味かったよ…」
アランと同じように、ぽっこりお腹のでたエルザがそう呟く。
「まぁ美味しかったのは本当だけど…さぁ、そろそろ準備しなさい!…戦闘になるのは必須。ちゃんと準備しないと!」
「そーだな…ほんとはあんまり戦いたく無いけどな…」
「ほんとはそれがいいけど…そんなに甘くは行かないだろうからね。さ、準備準備!」
三人はそれぞれ準備を始めた。
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「よし、行くか!」
三人はしっかり装備を整え、安休荘の外に出た。
「ごめんなさい、巻き込んでしまって…よろしくお願いします!」
「いいんですよ!俺たちが好きでやってることだし!それにエルザの件もあるし…」
「さ、行きましょう!バービルデに!」
三人は夜の街へと歩いて行った。
そんな三人の背中を、マーラは不安そうに見つめていた。
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「この路地を入った所だよ」
エルザの案内で、三人はバービルデのすぐ近くまでやってきていた。
「あそこ!あそこの灯りがついてる店がビルデだよ。…あそこにダンテがいるはず…!」
「よし…」
そう言うと、アランは堂々と店の方へ歩いていく。
「ちょっと!アラン!もっと作戦練るとか無いの!?」
「作戦も何も無いだろ?どちらにせよ戦うことになるなら堂々と行った方がいい」
「はぁ、全く…アランらしいね」
それに続き、エルザも店の方へ歩いて行く。
「はぁー、もうどうにでもなれ!」
リサもイヤイヤ、二人の後を追った。
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「さぁ、行くぞ!」
アラン達は店の前に立ち、一呼吸置いてからバーの扉を開けた。
「おい!ダンテはいるか!!」
明るく灯された店の中を見回すと、バーのカウンターにスキンヘッドの男が一人と、奥のテーブル席に三つ人影があった。
「なんだ?テメェら…」
バーのカウンターにいた男は拭いていたグラスを置きカウンターの外に出てくる。
「ダンテに用事がある!ダンテはどこだ!!」
アランは男の迫力にすこしたじろいながらも、なるべく威勢のいいよう振る舞っていた。
「ダンテさんに何の用だ」
「…ダンテをぶっ飛ばしに来た!」
「はぁ?…おい聞いたかよ!」
カウンターの男はブハッと吹き出し、テーブル席にいた男女たちの方へ顔を向ける。
「あははは!!ダンテさんをぶっ飛ばすって!?こりゃあ傑作だ!!」
黒いタンクトップに、迷彩柄のズボンを履いたオールバックの男は手を叩き大笑いする。
「突然店に来て何を言い出すのかと思ったら…キャハハ、身の程知らずもいたものねぇ」
その横に座っていた黄色いTシャツに白いホットパンツを身につけた黒髪の女性もクスクスと蔑んだ笑いを浮かべる。
「まぁまぁ、そう笑ってやるな。若い奴には粋がりてぇ時期ってのがあるもんさ」
そう言いい、酒の瓶を口に運ぶのはボサボサとした茶髪の男だった。男は濃い茶色のコートに身を包み、黒いハットを被っている。どこか底が見えないその男は、周りの人物とは一味違うと直感だけで分かるほど異質な雰囲気を放っていた。
「なぁ、ガキンチョ。何でダンテをぶっ飛ばしてぇんだ?」
「この街に住んでる人のことを考えずにめちゃくちゃしてるからだ!」
「ほぉ、正義感のある子供だ…。だが残念だな、もうここにはダンテはいねぇよ」
「え?いないってどう言うことよ!!」
「ダンテはさっき他の街へ行っちまったのさ!もうこの街に"飽きた"と言ってなぁ!」
「飽きた…だって?」
「あぁ、そうさ。奴は次の"おもちゃ"を探しに行ったって訳だ。ま、そのかわり…今日からこの俺"バーガー"様がこの街を仕切ることになったがなぁ!ガハハハ!」
そう笑い声を上げると、バーガーは勢いよく酒を口に運んでいく。
「ふざけんな!この街の人にこれだけ迷惑をかけておいて飽きたらさよならかよ!?」
「ま、そんなもんだろ…ダンテは飽きやすい性格だからなぁ」
「………」
アランは黙り込み、ギュッと拳を握りしめる。
「アラン…」
リサは少し心配そうに声をかける。
次の瞬間、アランは怒りに満ち溢れた表情を浮かべ、大きく声を上げた。
「おい!バカ!!まずはお前たちからぶっ飛ばしてやる!!店の外へ出ろ!!」
「誰がバカだ!俺はバーガー、バーガーだ!!分かったかこのバカガキが!!…まぁ、その威勢は認めてやろう。いいぜ、その喧嘩受けて立つ。なぁ、バイカ、リシア」
そうバーガーが声をかけると、横に座っていた二人はゆっくりと立ち上がった。
「あぁ、久しぶりに少し暴れたい気分だったんだ…」
「私も最近ストレス溜まってて…はらしたい気分だったのよね!キャハハ!」
「よぉーし、決まりだなぁ。さぁ、行こうぜ。喧嘩にぴったりの場所を知ってる。おい、ペイズ店を頼むぜ」
バーガーがそう言うと、スキンヘッドの男は手を上げた。
「よし、着いてこい」
「あぁ、行くぞ、リサ、エルザ」
二人はコクリとと頷き、アランの後についていった。
ーーーーーーーー
「どうだ?ここなら人目につかねぇし広さもある。喧嘩にぴったりだろ」
アラン達が連れてこられたのは、バービルデのある路地をさらに奥に行った場所で、何かの建物の跡地の広場だった。
「あぁ、そうだな」
「よぉーし、それじゃあお前は俺とだ。お前の本気、見せてみな」
バーガーはアランを指差しそう言う。
「それじゃあ…私はそこの赤い髪の子!あなたに決ーめた!キャハハ!」
リシアはリサの方へ近づきそう言う。
「そんじゃ俺はそこの青髪の女の子だな…。女の子に手を出すのはあんまり好きじゃねぇが…。たまにはいいだろ」
バイカはエルザの前に立ちそう言う。
「さぁ、行くぜ!!」
バーガーのその声と同時に、三人は攻撃の姿勢を取った。
ーーーーーーーー
「さぁ、行くぜ!!」
バーガーは胸元から大刃のナイフを取り出すと、勢いよくアランの方へ走り出す。
そして、アランに向け思い切りナイフを振り切った。
「っ!」
アラン後ろに回避し、なんとかナイフの攻撃を避ける。
そのままアランは剣を抜き、前に構えた。
「ほぉ、なかなか動けるみたいだな…。少し舐めてたみたいだぜ」
「あんたも思ったより早いぜ…バカ…」
「だろ?速さは自信が…って誰がバカだ!!バーガーだっつてんだろ!!舐めやがって…さぁ、まだまだ行くぜ!」
バーガーは先ほどと同じように駆け出し、アランに向け何度もナイフを振る。
それをアランはなんとか剣で跳ね返して行く。
(くそっ…なかなか動きが速い…。攻撃を防ぐので精一杯だ…!)
そんな事を考えている時、アランの肩をバーガーのナイフが掠めた。
「いっ…!」
アランは痛みに耐えながら追撃を避け、一度後ろへ引いた。
「ひゅー、当たっちまっなぁ…俺のナイフがよ」
「ただのかすり傷だ…っ!?」
そう声を上げた時、切られた腕に激痛が走るのが分かった。
「ぐぁぁあ!!…何でだ…!ただ掠めただけなのに…!!」
「ひゅー効いてるねぇ、俺の"毒"がよぉ」
「毒…!?」
アランは痛みでふらっとする体をなんとか立たせながら、バーガーの手の甲を見る。
「あれは…白い…紋章…。まさか、この毒は…」
「ご名答。俺の能力は"持った武器に毒属性を追加する"能力…。俺の使う武器は全て毒を纏い、相手をじわじわと死へ導いて行く…。前いた街では"地獄への案内士"なんて異名で呼ばれてたなぁ…」
「くそ…厄介な能力だ…」
「さぁさぁ、そんなに呑気に話してていいのかい?俺の毒は痛みを伴うだけじゃなく、どんどんとお前の体を蝕んで動けなくして行くぜ?ガハハハ!」
「言われなくても…わかってるよ!!」
アランはなんとか痛みを落ち着かせ、バーガーに斬りかかる。再び、アランの剣とバーガーのナイフがぶつかり合った。
ーーーーーーーー
「うーん…どういじめてあげようかしら…キャハハ!」
リシアはジロジロとリサの方を見つめている。
(何あいつ…君悪いわね…)
リサは剣を抜き、リシアを警戒しながら様子を伺っている。
「まぁ、迷った時は…"ルーレット"よね!!」
そうリシアが声を上げた次の瞬間、リシアは素早い動きでリサに近づいた。
「はやっ!?」
「さぁ、楽しいルーレットの始まりよ!キャハハ!」
リシアの掌がリサに触れた次の瞬間、リサとリシアの周りに透明なドーム状の空間が作られた。
「何!?」
「私の紋章はなかなかレアでね?"触った相手を透明なドームに閉じ込めてルーレットを回す"の。それで"出た攻撃を触った相手に与える"って訳!キャハハ!」
「な、なにその変な能力…!とりあえず出ないと…!」
リサはドームから出ようとドームを攻撃するが、壊れるどころか傷一つつかなかった。
「無駄よ無駄!ルーレットが終わるまであなたはここから出られないの!さぁ、始めるわよ!キャハハ!」
そう言うと、リシアの横に大きな丸いルーレットが現れた。
ルーレットには大きく"火、水、雷、草、衝"、と書かれており、小さな場所には、"死、自死、ハズレ"、と書かれていた。
「何?あの死と自死とハズレって…」
「キャハハ!気になる?なら教えてあげる。死は言うなら"即死"。死にルーレットが止まればあなたは"問答無用で即死"するの。でもね、このルーレットには"代償"もある。それが"自死とハズレ"。自死が出たら今度は"私が即死"、ハズレが出たら今度は"私が対象でルーレットを行う"の。ま、まだどっちも一回も出たことないけどね!キャハハ!」
(なるほど…さすがに強すぎる能力は代償もあるのね…。あとは全て運次第…)
「さぁ、行くわよ!ルーレット…開始!!キャハハ!!」
リシアの声を合図に、運命のルーレットが回り始めた。
続く。
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