サキュバスちゃんは目覚めさせてしまう
「ああ、楽しみ過ぎて昨日は夜更かししちゃいましたぁぁ。ニンゲンさん、来てくれるかなぁ。来なかったらどうしよう……まさかそんなっ、大丈夫……ですよね?」
見知らぬ男に声を掛けられる
「ふぇっ? あ、なんですか? いえ、人を待ってますので。え? いや、無理ですよぅ。は? 彼氏? いえ、まだ彼氏じゃないですけど……ちょ、やめてくださいっ、行きませんよっ。やだっ、腕掴まないでっ」
靴音が近付く
「あ! ニンゲンさん、来てくれたんですねっ!」
「きゃっ、ちょっとやめてくださいっ、離してっ、私はあの殿方と約束をっ!」
「……ふぇぇぇ? 俺の、女って……今、俺の女って!?」
「ちょっとお兄さん聞きましたっ!? 今、この人『俺の女に気安く触るな』って言いましたよっ? 聞きましたかぁぁ!? きゃ~~~!!! なにそれなにそれっ! 私、興奮して鼻血が出そうなんですけどっ? お兄さん、間違いありませんよね? あなたも聞きましたよねっ?」
「あ、ちょっとぉ、なんで逃げるんですかぁ! この感動を一緒に味わって……、って、行ってしまいましたね」
「あ、はい! 大丈夫ですっ! あなたが来てくれただけでも嬉しいのに、まさかナンパされて困ってる私のために割って入って、あまつさえ『俺の女』発言まで……。はぁぁ、脳みそ溶けて耳から出ちゃいそうですぅぅ!」
「へ? 騒いだら恥ずかしい……?(周りを見、注目を浴びていることに気付く)やだっ! 私ったらごめんなさいっ。あまりの嬉しさに色んなこと見失ってましたっ。さ、行きましょうっ」
歩きながら
「今日の私、どうですかっ?(くるっと回って見せる)……え? 聞こえませんよぉ。もっと大きな声でお願いしますぅ。……ん? いいんじゃない、って……んもぅ、もうちょっと言い方があるじゃないですかっ。こういうときはぁ、(耳元に口を寄せ)『誰よりも君が可愛い』っていうんですよ?」
「えええ、そんなこと言わないって……。そうですか、あなたは思ってても口にしないタイプなんですね? ……え? 違う? じゃ……もしかして私が可愛くないっ!?(驚く)」
慌てるそぶりのニンゲン
「ぷ。うふふふっ、嘘ですよぅ。慌ててそんな困った顔しないでください、愛しすぎて発情しちゃいそうです!」
「あ、やだやだ怒らないでぇ! だってあまりにもあなたが可愛い反応してくれるからっ。機嫌直してくださいよぅ。ね? 映画、行きましょ!」
人のざわめき
「あ、ここですよ、映画。ホラー観るの初めてなので、楽しみですぅ。怖かったら私の手、握っていいですからね!」
映画館に入る
「心理系のサスペンスホラーですって! 殺人鬼とか出てきちゃうやつですねぇ。怖そうですけど、本当に大丈夫ですかぁ?(自信満々に)」
「あ、暗くなった!(小声で)」
映画が始まる。おどろおどろしい音楽。
「……ぅわっ。(ビクッ)ひっ!」
「ひゃっ。……ぁぁぁぁぁぁぁぁ、ぃたぁぃ……。……え? (バン!) んんんんんん!!(口を押さえて) ふぇっ、みゃっ!」
「ふぇっ! ひゃぁっ。ううっ、ひーん」
「ぃやぁぁぁぁっ、ううっ、こ……こわいぃぃぃ(べそをかく)」
「ひゃっ、え? ニンゲンさん?」
映画館の外へ
「ど、どうしたんですかっ? ……え? あの、ハンカチ? 涙拭けばって……あ、ありがとうございます。……怖かったんだろってっ、ち、違いますっ、そんなっ、怖かったわけじゃっ……こ……怖かったですぅぅ。(泣く)」
「まだ序盤なのに、って、あなたは怖くないんですかっ? あんな、あんなっ(思い出してまた泣く)」
「なんで笑うんですかぁっ。……へ? 泣き顔が……なんです? ああっ、はぐらかさないでくださいよぉ! 私の泣き顔がなんですかぁっ?」
「……ひゃっ! な、なななんですかっ、急にそんな顔近付けてっ。ふぇ? 泣いた顔……見るの好きかもって……に、ニンゲンおかしなこと言いますね!?」
「どうしましょう! 変なスイッチ入っちゃったのでしょうかっ。ああ、でも泣いてる女性が好きとか言うあなたがちょっとワイルドできゅんきゅんしてしまいますっ」
「女性恐怖症、治ったかもしれない……? ほんとですかっ? え? あの程度のホラーで泣き出す私はもう怖くない、って……それ、私だけ大丈夫になったってことじゃないですかっ。……ん? それって……」
バックハグされる
「ひゃぁ! いきなりどうしましたっ。試すって、なにを……あっ、やだ、耳元に息吹きかけちゃっ、んっ、だ、ダメですぅ。……そんなっ、ふぁっ、そんなこと、耳元で囁かないでっ、……力、抜けちゃう……ああっ、すぐ決めるから……はぁっ、はぁっ。待ってっ、決めるから待ってくださいぃ、」
耳元でずっと何かを囁かれ悶えている
「んっ、決め……ましたっ。だから、も、ダメぇ……。私はっ、チーズバーガーのセットにしますぅぅ! なんで耳元でお昼のメニュー囁くんですかぁっ。ダメですよぉ、私、耳弱いんでっ。……へ? なんでそんな……ニヤリとしてるんですかっ? 耳弱いんだ、へぇぇ、じゃないですよっ! 悪いこと企んでる顔になってますよ! ちょっと、聞いてますっ?」
~続~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます