第17話
私は父の本を見つけて泣いていた。そんなアーサー様は驚いた様子で見ている。
「ミーシャ、私は何か君にしてしまったのか?」
「い、いえ。アーサー様は何もしていません。私の私情ですのでお気になさらず……」
私がうつむきながらそう答えるとギュッと抱きしめられた。
「泣いているのに?気にしないなんて無理だ。泣いているミーシャをほっとけない」
「……ごめんなさい。アーサー様の胸で泣いてもいいですか?」
「ああ」
私はアーサー様に抱きしめられながら嗚咽を出しながら泣いた。過去1番、いや。過去2番目に泣いた。
そして10分して……。
「ごめんなさい。こんな場所で泣いてしまって」
「いや、大丈夫だ。なぜ泣いてしまったのか私に説明できるか?」
私はこくりと小さく頷いた。そんな私をアーサー様は大きな手でポンポンとなでてくれた。
(でもその前に……)
私はこの図書館経営者の方にひとつのわがままを言った。
「あ、あ、あの!この本を私にください!」
メガネをかけた50代ぐらいの男性が頭を掻きながら言った。
「お嬢ちゃん。それは無理な話だ。もうこの本は世に出回ってないし、買うとなると結構な値段になる」
「どうしても欲しいんです!お願いします!」
「いくら貴族でも無理なものは無理だ」
(私のこと貴族って思われてる。こんな綺麗な格好してるからかな。……じゃなくて!ここで逃したらいつお父さんの形見が手に入るかわからない!)
するとアーサー様は私を庇うように一歩前に出てきた。
「店主。これでどうだろうか?」
「?!」
アーサー様が机にバンっと置いたのは金貨10枚だった。
「アーサー様!そんな大金いけません!」
「ミーシャの初のわがままだ。それにミーシャにとってはそれほどの価値があるのだろう?」
「アーサー様……」
店主はうーんと首を捻りながらしばらくして渋々と了承してくれた。
「仕方ない。負けたよ。これは君に売ろう。それにアーサー殿下の未来のお嫁さんのお願いであれば聞かないといけないからね」
「お、お嫁さん……」
私がお嫁さんという言葉に照れていると、アーサー様はクスクスと笑っていた。そして……。
「ああ、違いない」
「アーサー様!」
私はペシっとアーサー様を優しく叩いた。
「可愛い!」
そしてアーサー様はデレた。
(なんでそこで照れるの?)
私はアーサー様がどうして照れているのか分からなかった。
「では本も手に入ったことだ。湖のほうで詳しく話を聞かせてくれるか?」
「はい……」
私はアーサー様に手を引かれ湖向かった。本来なら昼食だったのだが、私のこともあり後回しにしてくれた。
(優しい……)
私はアーサー様の手をギュッと握りながら話し始めた。
「これは私の過去に当たるものです」
ミーシャの父、ミカエル・エンバーの断罪される前とされた後の話である。
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