第26-1話 アナスターシアの発明

「やったわ! やっとドラゴニウムが繊維化できた! ずいぶん時間がかかってしまったけど、これでカラハン様は安全ね」

 アナスターシアは研究室で喜びの声をあげた。長年、マッキンタイヤー公爵領の錬金術士もまじえて多くの実験を行った成果が、カッシング侯爵邸の研究室で実を結んだのだ。その性能は素晴らしく、研ぎ澄まされた刃も槍も突き通すことはできない。

(拳銃はここにはないから試せないけど、その威力も想定して研究したわ。多分大丈夫なはず。これなら軽くて薄いし誰にもばれないわね。そうだ、私の下着もこれで作ろう。とにかく目標は長生き、長生き。伯父様にも贈らなくっちゃ)



☆彡 ★彡



 こちらはカラハン第一王子が暮らすエメラルド城である。

「カラハン殿下。アナスターシア様から届け物ですよ。すごく軽い包みですが、なにが入っているのでしょう?」

 ジュードは金のリボンが結ばれた包みをカラハン第一王子に差し出した。カラハン第一王子は丁寧にその包みを開く。中からはきらきらと銀色に輝くなめらかな生地が現れた。そこには手紙も同封されていた。




カラハン様へ

 

 やっとドラゴニウムの繊維化に成功しました。服の下に着る物をこの生地で仕立ててください。剣や槍、弓矢もこの生地を突き破ることはできません。いつも、身につけてくださいませ。

 

カラハン様の安全を誰よりも願うアナスターシアより




 手紙の内容を横目で盗み見たジュードは思わずニンマリした。

「カラハン殿下、相変わらず熱烈に愛されていますねぇーー。あんな美人にこれほど大事にされるのはどんな気分ですか?」

「それは、もちろん天にも昇る気持ちだ。だが、ジュードはアナスターシアの容姿ばかりを褒めるが間違っているぞ。一番素晴らしいのはあの性格だ。優しくて可愛くて健気で努力家で、子供や動物をこよなく愛し、使用人にも気さくでとても大事にしている。領民に対する思いやりも素晴らしい。天使だ、女神だ、この世で最高の女性だよ」

「はいはい。ストップ。そこまでです。アナスターシア様の長所をあげだすと、カラハン殿下はとまりませんからね。それと残念ですが、今日はアナスターシア様には会いにいけません。公務でぎっしりですし、外交使節団の迎接もあります」

「嘘だろう? アナスターシアには毎日会いたいのに」

「いや、いくらカッシング侯爵邸が近いとはいっても、さすがに会いすぎですよ。少しは寂しい思いをさせて、殿下を恋しいと思わせなくてはいけません。妹が言っていました。『会えなければ会えないほど愛おしさは募る』と」

「そうなのか? だったら、私もそうするべきだろうか? だが、三日が限界だな。稽古もあるし、アナスターシアが用意してくれた食事も食べたいし、なにより私がアナスターシアロスで死んだらどうする? 危険だ、極めて危険、危険」

 カラハン第一王子の側近たちは呆れながらも、これほど主が愛せる女性を見つけられたことを喜んだのだった。




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宣伝※次回27話は、デビュタント&婚約発表です。字数が多めで夕方六時に更新です。28話は再び、ハーランド王子登場。そして、29話は二回目のローズリンのざまぁになります。ローズリンのざまぁは、三回用意しておりますので、最後までお読みいただけると嬉しいです。

最終話まで朝6時、夕方18時の更新です。一応31話あたりで最終話の予定です。一話ごとの字数にばらつきがあり、申し訳ないです💦


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