不穏な帰宅
「・・・・・」
「・・・・・」
俺は嫌いな後輩と帰宅していた。
特に俺から話す話題もなく、ただ黙って歩いていた。
嫌いな後輩・・・ねぇ・・・
俺、矛盾してないか?
どうして俺はこんな女と一緒に帰っている・・・
普段なら間違いなく断っていたはずだ。
心当たりは・・・ない事も無い・・・
あの普段からは考えられない日高の態度が、原因だろう。
俺、単純すぎるな。
そう考えていると日高が口を開いた。
「先輩・・・・」
「なんだよ」
そう俺に話し始めた声の方向を横目で見ながら答えた。
「先輩って休みの日は何してるんですか?」
「休み?」
「はい、ボッチって何してるんだろうって思って・・・」
「お前な、答えて欲しいならまともに聞いて来いよ・・・つーかこんな事聞くために俺を帰りに誘ったのか?」
俺の質問に少し頬を赤らめたように見えた日高は答えた。
「別に・・・それだけじゃないですけど・・・」
本当にどうしたんだコイツ。
俺がコイツを心配しないといけない義理は無いが、その・・・何かあったらアレだし・・・
そう言えば俺を見張ってるはずの日高のギャル友の姿が見えないな・・・
道中の物陰や電柱の裏にはそれらしき人は見えなかった。
もしかして・・・俺が振った事が原因で馬鹿にされて喧嘩したとか?
それを俺にバレないために、休みって嘘ついているのか?
だとしても・・・こいつの自業自得だ・・・
俺の知った事じゃ・・・知ったことじゃないんだが。
「もしかして友達と喧嘩したのか?」
「はい?」
「いや、俺に振られる訳ないと思って嘘告白して来た訳だろ?それでプライドまで傷ついて、友達にも馬鹿にされて・・・」
「先輩・・・」
言葉の後に彼女の顔を確認しようと横を向いたが、日高は眉を顰めていた。
「何言ってんすか?」
「え?」
「ウチが友達と喧嘩?先輩に振られた?」
「友達はずる休みって言ったじゃないですか。それに私が先輩に振られたってなんですか?あんなの・・・本気じゃないし、それに私は先輩の事なんて嫌いだし!」
はぁ?何だよコイツ!
急に調子を取り戻した様に饒舌になりやがって!
「俺だってお前の事なんて嫌いだわ!」
「くっ・・・!」
俺の言葉に一瞬怯んだ日高はすぐに反撃に出てきた。
「そ、そんな事をいちいち気にする先輩こそ私の事、好きなんじゃないんですか?」
「ち、違うし!俺が好きなのは同じクラスの風たー」
「あっ、水野君!」
え?
俺が初恋の女の子っぽいと思っている子の名前を口にした時、背後から俺を呼ぶ声が聞こえた。
振り返るとそこには今名前を出し掛けた、初恋の女の子?がいた。
「よかった、今帰ったところだったんだね」
「ど、どうしてここに?」
風・・・風谷!!?
どうして・・・って言うか俺の心拍数めちゃくちゃ上がってねぇか!?
「はい、これ忘れ物だよ?」
「え?」
風谷は自分の鞄から一冊のノートを取り出し、手渡してきた。
これって、俺が風谷に絵のことを教えてもらった事をまとめたノート・・・
「酷いよ?水野君・・・」
「えっと・・・」
「私がせっかく教えたのに、私の事蔑ろにしてない?」
「し、してないしてない!今日はその・・・急用があってそれで・・・」
ぷくっと頬を膨らませ拗ねる姿ですら可愛いと思ってしまった。
やっぱり好きな人の仕草は全て良く見えるのだろうか?
そんなことを考えていると俺の横にいる後輩が気になったのか、風谷が質問をしてきた。
「ところでその子は?」
「えっと・・・こいつは」
俺が言葉を詰まらせていると日高の方が先に口を開いた。
「初めまして、水野先輩の後輩で、日高朱理と言います」
「そうなんだ、私は風谷葵、水野君とはクラスメイトで・・・その気軽に話しかけてね」
「はい、ありがとうございます」
そう挨拶を交わす2人・・・日高、お前はなぜ俺を睨んでいるんだ?
「それで?2人はどうして一緒に帰っているの?」
「えっ?」
急にトーンが変わった風谷は俺を詰める様に質問を始めた。
「もしかして急用って日高さんと帰るため?」
「ち、違う違う!コイツとはその・・・」
「2人ってどう言う関係?」
止まらない風谷に戸惑っていると日高の方が口を開いた。
「先輩とは・・・私が告白して返答待ちです」
「はぁ!?」
「水野君、それ本当?」
何やらバチバチと火花が散りそうな音が聞こえた。
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