99. 第二章エピローグ:ハーレムハウスにようこそ!
洞窟から脱出して数日後。
ダイヤはハーレムメンバーと一緒に森の奥へと向かっていた。
「ダイヤったら本当にこんなところに住んでたんだ」
「噂には聞いてたけど、こんな森の中に家があるだなんてね」
「
「ある意味間違ってないですわね」
いずれダイヤは修繕された元廃屋でハーレムメンバーとせっせと子作りする予定なのだ。奈子の言葉は今回ばかりは正しかった。
なお、同行者は
巫女さんは正式にハーレムに入ってから誘って欲しいと断られ、
「
「ふんだ」
ダイヤがハーレムを作ってしまったことで
愛しい人が命の危機に晒されているのに助けに向かえない苦しさは桃花達も分かるため、しばらくは
「獣道だけど道はあるんだね」
「僕が踏み固めたんだよ。最初はどこが道なのか分からなかったんだから」
草木がぼうぼうで屋敷を探して森の中を彷徨った最初の頃を懐かしく思った。
「でもダイヤ。こんなところに私達を連れてきてどうするつもり? ダイヤと一緒に住みたいけど、流石にこんな森の中の廃屋は……」
そんな
彼女達はこれから向かう場所がどれだけ酷い廃屋なのか、寮を選択する際に写真で見て知っていた。ゆえにその建物が見えて来るとすぐに驚かされることになる。
「僕の寮へようこそ!」
「え!?」
「え!?」
「え!?」
「え!?」
写真で見た廃屋は、壁も屋根も何もかもがボロボロで今にも朽ち果てそうだった。だが目の前にある建物はどうだろうか。壁も屋根も
「ま、まさかダイヤ君が直したの!?」
「そうとも言えるし、そうでないとも言えるかな」
「禅問答……?」
素材を持ってきたのはダイヤだが、実際に直したのは精霊なので誰が直したかと聞かれて上手く答えられなかっただけなのに禅問答などと言われてしまった。
「さぁ、中に入って!」
ダイヤに誘導されて一行は元廃屋の中に足を踏み入れた。
「凄い。床もしっかりしてる」
「新築みたい!」
「トイレも綺麗ですわね」
「お風呂が……ある……!?」
修復された部屋を確認する度に、彼女達は感嘆の溜息を漏らしてしまう。それほどまでにボロボロの廃屋が一か月で人が普通に住めるまでに修繕されていることが驚きだったのだ。
だが驚くのはまだまだこれからだ。
「水も電気もダンジョン産アイテムを使って生み出してるからタダなんだ」
「え!?」
「そして何気に便利なのがトイレの紙が無限に補充されること」
「無限!?」
「もしかしたらリミットあるかもしれないけれど、今のところ切れる気配が無いんだよね」
切れたとしても、素材を持って来ればまた大量に補充されると思われる。消耗品の追加をほとんど気にしなくて良いというのはあまりにも便利だ。
「まだ建物が直ったばかりだけど、十分住めると思うんだ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
元廃屋を見て回った四人は、一体何を考えているのだろうか。
修繕されたとはいえまだまだ不便な森の奥の元廃屋。
街や学校までは遠く、生活必需品や家電などもまだまだ足りない。
だが生活するために最低限のものは揃っていて、後は自分で持ち込めばどうだろうか。そして何よりもここに住めば休日や朝晩もダイヤとイチャイチャできる。
現在の文明的な生活を捨てるべきか、愛しい人との時間を選ぶべきか、葛藤しているのかもしれない。
そんな彼女達の内心を知ってか知らずか、ダイヤはとびきりの爆弾情報を教えることにした。
「皆、こっちに来て」
ダイヤが連れて来たのは、屋敷の中心に位置する大広間。
「ここだけは修復されてないんだね」
直し方をまだ教えて貰っていないため、この部屋は簡単には修繕出来ないと思っている。
「ふふふ」
「ダイヤ君が悪い顔してる」
訝しむ桃花達を部屋の入り口付近に置き、ダイヤはまだ荒れている部屋の中に足を踏み入れた。そしてクエストボードがある場所へと向かい、ポーチから素材を取り出した。
「何でこんなところで素材を……消えた!?」
「何が起きてるの!?」
「素材が無くなってしまいましたわ!」
「一体……何が……?」
突然の出来事に茫然とする四人。
ダイヤは最後に『グラの木材』をクエストボードに提出すると、急いで彼女達の元へと向かった。
「さぁ見て。これが廃屋を修繕した方法だよ!」
途端に部屋全体から眩しい光が放たれた。
「きゃ!」
「眩しい!」
「目が!」
「まぶ……まぶ……」
あまりにも強烈な光に四人は顔を背け目を閉じる。
「皆、もう光は治まったよ」
しばらくするとダイヤが合図してくれたので、四人は恐る恐る目を開けた。
「え!?」
「嘘!?」
「どういうことですの!?」
「直って……る……」
荒れ果てた部屋がまるで新築かのように綺麗に修繕されているでは無いか。
「なるほど、大木の所は太い柱になったんだ」
天井を貫く大木は撤去され、その場所にはグラの木材で作られたと思われる大黒柱が出現していた。かなり頑丈そうで、これなら多少の災害でもびくともしないだろう。
「修繕終了だ!やったー!」
一か月間、他の事を疎かにしてまで素材集めに奮闘した。その結果、超短期間で廃屋を修繕することが出来た。自力で最後までやり遂げたため達成感は半端なく、感無量といった感じだ。
「待ってダイヤ君。喜んでないで教えてよ!」
「そうよ。何がどうなってるの!?」
「わたくしも気になりますわ」
「見せるだけ……見せて……説明なしは……酷い……」
「あはは、ちゃんと説明するって」
驚かせるためにこれまでこのことを秘密にしていたのだ。狙い通り驚いてくれたことがダイヤとしてはあまりにも嬉しく、満面の笑みで説明を始める。
ダイヤは大広間に再度足を踏み入れ、
「桃花さん。ここに何か見えない?」
「え?ただの壁にしか見えないけど……あ、そういうこと!」
敢えて桃花を選んで聞いてきたことから、精霊が関係しているのではないかと閃いたようだ。桃花は精霊を視る感覚で周囲を見渡した。
「精霊が一杯いる!しかも皆妖精の姿!可愛い!」
ダイヤがイメージしたせいで、元廃屋周辺の精霊は妖精の姿で形が固定されてしまっていた。
「こんなにたくさん妖精がいるの初めて見た……」
「桃花さん、桃花さん、肝心のここは?」
「あ、そうだね。あれ? 何か貼られてる」
どうやら精霊使いであればクエストボードも見えるらしい。
「これは……素材一覧なのかな。まさかこれを集めると修復されるの!?」
「正解!」
「じゃあこれってクエストボードなんだ!おもしろーい!」
桃花はどうしてこの廃屋が修復されたのかを理解した。だが精霊が視えない他の三人は置いてけぼりなので、ダイヤと桃花が事情を口頭で説明した。
「じゃあ何? 私達には見えないクエストボードに書かれている素材を持ってくると、精霊が自動的に修復とか改築をしてくれるってこと?」
「なんて素敵なお話でしょうか」
「素敵というか……チートな気が……」
妖精の姿をした精霊ということでメルヘンに感じがちだが、恐らく奈子の反応が正しい。素材収集は大変だが、それだけで屋敷が変化すると言うのはチートレベルの出来事だ。
「僕はここで皆と一緒に暮らしたい。でも最初だけは自分の力で直したかったんだ」
「ということはダイヤ君。この先は……?」
「皆で協力してクエストを進めて作っていけたら楽しいかなって思ってる」
「やるやるやるやる!私こういうの大好き!」
元廃屋、ではなくハーレムハウスの改築に真っ先に手を挙げたのは桃花だった。精霊が視えることで作業内容がピンと来ていることが一切迷わなかった理由だろう。
「面白そうだから私もやる。でも見えないのが悔しいなぁ」
「わたくしも全面協力しますわ」
「自分が住む場所……自分で素材集めて改築……面白そう……」
そして遅れて三人も参加を申し出た。実際に修復される場面を見せたことで建物が変化するということをすぐに信じて貰えたのだ。荒れ果てた部屋が一瞬で綺麗になった瞬間を見てしまえば、自分もやってみたいと思うのは不思議ではない。
「それでダイヤ君。改築出来る場所ってどれだけあるの?」
「家中に沢山あるよ。トイレとかお風呂もあるからもっと広くなったり便利になったりすると思う。それに改築だけじゃなくてまだ手付かずの庭の修繕とか、後は多分だけど部屋の増築とかも出来るっぽい」
一通りの修繕は終わったけれど、クエストボードは減るどころか増える一方だ。出来ることは山ほどあり、ここから先はダイヤだけでは手が回らないだろう。そういう意味でも彼女達の力を借りるのは良い判断だった。
「よし決めた!私、こっちに引っ越してくる!」
「え!?」
そう宣言したのは桃花だった。今はまだ寮の方が文化的な生活が出来る筈なので、女性陣が引っ越してくるのはまだまだ先になるとダイヤは思っていたので驚いた。
「まずい……完全に桃花に先を行かれてる……私の方が先に好きになったのに……」
「
「私も引っ越してくるわ」
「え!?」
桃花の宣言に対してブツブツ言っていた
「わたくしも引っ越しますわ」
「私も……来る……」
「ちょっと待ってよ!嬉しいけど、まだ何にも生活用品揃ってないんだよ!」
好きな女性と同棲できるのは最高の展開だが、ダイヤは彼女達に不自由な暮らしをさせたくない。しばらくは通いになると思っていたのに、いきなり引っ越すだなんて言われて大いに慌てていた。
「生活用品なら持ってくるし、どうせ安い寮に住んでるから大して変わらないよ」
「え?」
「そうですわね。あちらの寮も古いですし、こちらの方が綺麗に見えますわ」
「え?」
「こっちの方が……絶対住みやすい……」
「え?」
ダイヤ的には不自由になると思っていたのに、彼女達にとっては同じくらいかむしろ快適かもしれないと言う。そんなことがあるのだろうか。
「芙利瑠さんはともかく、桃花さんと奈子も安い寮だったんだ……」
「うちはお父さんが高くてセキュリティがしっかりしてる寮に入れたがってたけど、この島は治安が良いし安い寮の方が気楽だからって私が安い寮に決めたの」
「私は……気合を入れ直すため……両親のサポート無しで……自力で生活したいと思って……安い寮にした……」
「そうだったんだ」
それならば別の寮で暮らしていると思われるもう一人はどうだろうか。
「
「設備だけなら安い寮とあまり変わらないし、足りない物は持ち込めば良いだけで差は無いと思うわよ。ただセキュリティが気になるわね」
「セキュリティ?」
「ええ、寮による違いは建物の古い新しいもあるけれど、一番の違いはセキュリティよ。確かにこの島は外と比べて安全だけれど、貴方達が巻き込まれた事件のことを考えるとセキュリティが高い方が良いと思うの。実際、安い寮から転寮したいって話が結構出てるみたいだし」
安全だと思っていた場所でも犯罪が蔓延っていた。特に今回の事件は女性が狙われていたということもあり、女生徒がセキュリティレベルの高い寮への引っ越しを希望しているらしい。
「だから私が気になるのは設備とかよりもここのセキュリティがどうなってるかよ。どう見ても危険な気しかしないわ」
人里離れた森の中。人知れず襲われてもおかしくない。
「それは大丈夫だと思うよ」
「え?」
だがダイヤはセキュリティについて全く心配していなかった。
「だってここって、凄い強い人が守ってくれてるから」
「どういうこと?」
「明石っくレールガンの人が用意してくれたボディーガードが森の中に潜んでるんだ」
スキルポーションを発見したダイヤは良い意味で要注意人物とされていた。だがそんな要人が森の中の廃屋に住んでいると聞けば心配しかない。いつ拉致られるか分かったものではない。しかしだからといってダイヤに安全な住居を提供しようものなら、行動を阻害したことで新たな発見が消えて無くなるかもしれない。ということで明石っくレールガンは仕方なく、ボディーガードを雇いダイヤの身をこっそり守ってくれていた。
そのことをダイヤは何となく気付いていて、明石っくレールガン団長の俯角に聞いてみたらあっさりとゲロった。監視の面もあるだろうけれど、守ってくれるならばとダイヤは喜び、むしろ自分なんかのためにそこまでしてくれなくてもと申し訳なく思ったものだった。
「全然気づかなかったわ……」
「そりゃあ相手はプロだもん、僕達程度に気付かれたらダメでしょ」
逆に考えると、ダイヤ達レベルであれば気付かれない程度の実力があるということでもある。なお、実は明石っくレールガン以外からもボディーガードが派遣されていて、森の中が魔境になっていることまではダイヤは気付いていない。
「ということはセキュリティに関しては寮よりも安全かもしれないってことね。なら引っ越し一択だわ」
「そうなっちゃうんだ……」
トイレやお風呂や電気、そして上下水道というライフラインを整えてから呼んだからこのような結果になったのだろう。それ以外は自前で用意すれば良く、寮よりも安全と言われたらダイヤとのイチャイチャ抜きでも引っ越しを考えるだろう。
「それじゃあ皆よろしくね」
部屋は沢山余っている。今すぐに引っ越して来ても何も問題ない。
好きな女の子との同棲がこんなにも早く開始されると思うとワクワクが止まらない。
しかしダイヤはまだハーレムの条件を満たしていないため彼女達に手を出せない。一緒に暮らして甘えられるのに手を出せないという悶々地獄に苦しむことになることを、まだダイヤは気付いていなかった。
「そういえばダイヤさん。これからはハーレムの仲間が増えるたびにここに住むようにお誘いする予定なのですよね」
「うん、そうだよ」
「クランハウスも兼任しますか?」
「ううん、クランとここは別の扱いにするつもり」
「そうですか。分かりました」
「そもそもクランには男子も入れるつもりだから、いくら仲が良くてもここには近づけたくないなぁ」
クランもそろそろ設立予定であり、そちらはハーレムメンバーのみという制限はかけないつもりだった。
「クランの名前……決まった……?」
「決まったよ」
いくつか候補があったが、最初に思いついた名前に決定した。
「クラン名は『ハッピーライフ』で決まり。楽しくて幸せな学生生活を目指す最高のクランにするつもり!」
こうしてダイヤはハーレムハウスとクランを同時期に始動させることになる。
学校ではハッピーライフで幸せな学生生活を。
ハーレムハウスでは彼女達とのイチャイチャ生活を。
だがリア充街道まっしぐらのはずなのに、そうはさせまいと言わんばかりに数々の試練がこの先も降りかかってくるのであった。
ーーーーーーーー
「やっぱり引っ越し蕎麦とか用意した方が良いのかなぁ」
とある日の放課後。
ダイヤはハーレムハウスに引っ越してくる女性陣への引っ越し祝いを用意すべきかどうか悩んで街を歩いていた。
街の中は相変わらず活気に満ちていて、多くの露店が街行く人に声をかけていた。
「そこの可愛らしい兄ちゃん、辛気臭い顔してどうしたんだ?」
「え?」
考え事をしながら歩いていたら、聞き覚えのある声が耳に入り足を止めてしまった。そしてその声が聞こえて来た露店を見ると……
「ええええええええ!?」
「なんだよいきなりAランクの魔物に遭遇したみたいな顔して。アタシの顔になんかついてんのか?」
それはあの日担架で運ばれた、クズ鉄の山で出会った先輩女生徒だった。
「先輩大丈夫なんですか!?」
「その反応、アタシが死んだって知ってるのか」
「はい、運ばれてるところを見ちゃいまして……」
「かー!情けないところ見せちまってはずいわ!」
彼女の様子は以前話をした時と全く同じ雰囲気だった。死がトラウマになり、PTSDに苦しんでいる様子は今のところ見られない。
「露店……出してるんですね」
「おう。つってもこんなの売れねえだろうがな」
露店には彼女が作ったと思われるロボットが並べられていた。ダンジョン探索とは関係なく、しかも子供っぽいソレを露店で売ったとしても、そりゃあ売れないだろう。
「(露店を出しているってことは、島から出る気は無いってことだよね。先輩は逃げなかったんだ)」
死の恐怖によりダンジョン探索を諦め、この島を出てしまう人の方が圧倒的に多い。だが彼女はその道を選ばなかった。
「そうだ。これ!」
ダイヤはあの時拾ったロボットをポーチに入れておいたのを思い出した。
「先輩のですよね。お返しします」
「おお!拾っておいてくれたのか!サンキュな!」
彼女は満面の笑みを浮かべてそれを受け取った。
「何かお礼をしなきゃアカンが、手持ちで何かあったかなぁ。ロボットとか要らんだろ?」
「たまたま拾っただけだから気にしないでください」
「そういうわけにはいかないだろ。いくらあんたが相手でもお礼はちゃんとしなきゃダメだ」
「僕が相手でもってところが気になりますが、本当に気にしない下さい」
「う~ん……」
ダイヤが繰り返しお礼など要らないと言っても、彼女は聞き入れてくれない。このままでは彼女にとって大事なものを押し付けられそうな予感がしたダイヤは先手を打つことにした。
「じゃあ僕に子供が出来たら、その子のためのロボットを作ってください」
「キモイ」
「何で!?」
「いやお前、いくらハーレムを狙ってるからって、その歳で子供のこと考えるとかキモイわ」
「う゛っ……で、でも僕は真面目に」
「あ~今のは私が悪かった。分かった、じゃあそれにしよう」
遊びで子供を作るわけでは無いと主張しようとしたら、先に彼女が折れてしまった。本気で悪いと思っているのか、この先のダイヤの話を聞きたくなかったかのどちらなのかは不明である。
「作るからにはアタシがダンジョンで厳選した素材で作ってやるから楽しみにしてな」
「え?」
「何だよその顔は」
「い、いえ。先輩がダンジョンに入って探すつもりなんですか?」
「当然だろ。良い素材は自分で探すってのがアタシのポリシーなんだ。まぁ
「…………そう、ですか」
彼女は決して死の後遺症が無いわけでは無い。島を出ることは無いが、恐怖でダンジョンに入ることがまだ出来ない。
だが彼女はダンジョンに入ることを諦めていなかった。
いつの日か恐怖を乗り越えてダンジョンに入り、好きな物を作りたいという夢を叶えるつもりなのだ。
おそらく彼女は、ダイヤが彼女の状態を気にしていることを察し、会話を通じて自分の現状と気持ちを教えてくれたに違いない。
「(先輩の気遣いを無駄にしちゃいけないな)」
ここでしんみりするようでは、明るく応対してくれた彼女に申し訳ない。ダイヤは彼女の強さを尊敬し、再起しようとしていることを素直に喜ぶことにした。そしてその嬉しい気持ちのままに話題転換をした。
「先輩、僕のハーレ」
「断る」
「え~」
「絶対断る。名前も連絡先も教えない」
「ぶーぶー」
残念ながら脈は全く無さそうだ。
だが無茶なアプローチで笑い話にして雰囲気を明るくすることが目的だったからこれで良い。
「そう不貞腐れるなって。いずれ最高のロボットを作ってやるからさ」
そう言った彼女の笑顔はこれまで見た中で一番の物だった。
それを見たダイヤは胸につかえていた何かが綺麗に洗い流されたかのような気分になる。
ダイヤにとっての『グラの木材』騒動は、この時ようやく終結したのかもしれない。
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