Day.17 半年

 散歩中に私が躓いた石がきっかけで、家の前に古代の王国が埋まっていることが判明した。なんでも石だと思ったものは、栄華を極めた王の名前が彫られた柱の一部だったらしい。

 国自体は小さく、繁栄期間も長くはない。明確な場所も判明していないわりにあらゆる文献に名前が出てくる国とあって、学者たちの間では存在するか否か議論が続いていたという。そんな大層なものが家の前にあるなんて信じられない。

 石に躓いてから約半年で、周囲の景色は一変した。学者たちは協力者を引き連れて発掘調査に明け暮れ、歴史的な発見の瞬間をどこよりも早く報じるべく目を光らせる記者も増えた。彼らを相手にする食堂や宿屋も次々に開く一方で、静かな暮らしを望む住民たちは引っ越しを選んだ。

 私は両親が開いた宿屋を手伝うかたわら、王国、特に柱に名前があった王について調べ始めた。

 王は先代の死に伴い、十歳で王座についたらしい。その手腕は子どもとは思えないもので、外交や戦争、国内の改革など次々に成功をおさめ、民たちは王を〝神の化身〟と崇め奉ったという。

 しかし繁栄は一瞬で潰える。王が権力を握ってから約半年後、大地震の影響により国は壊滅的な被害を受け、続けざまに大雨や土砂崩れが発生したことで完全に崩壊した。わずかに生き残った人々は土地を捨て、祖国になにがあったか新天地で伝えたのだろう。でなければ後世にその存在が伝わるはずがない。

 発掘はまだまだ序盤で、私が躓いた柱以外はなにも見つかっていない。いつかその全容が明らかになる日を楽しみに、私は短い生涯を駆け抜けた王に思いを馳せた。

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