第45話 運命の出逢い? ★リオ SIDE

 数分歩いて気がつく……私、迷子になってる!人が少ない方へと進んでいたからだと自分に言い訳するものの、実はかなりの方向音痴なのだった。このお城って広い上に扉が似通っていて、区別しづらいのよ。無駄に部屋数もあるしね……

 

 少し先で話し声が聞こえる。こちらに向かって来る様だ。慌てて隠れる場所を探し、柱の影に隠れる。あ、私隠密魔法かけてるから関係無いじゃん……まぁ、爺やみたいなスキルを持っていないとは限らないしね。

 

 何気に胸元にある録画機を握り締めた。ちょっと緊張しているらしい。あちらから来る人が悪い人だとは限らないんだけどね?隠れただけで、何だかドキドキするわ。

 

「暗殺は失敗しただと?」

 

「えぇ、近づく事すら難しかったと聞いております」

 

「あの女か?」

 

「はい。先ずはあの女から排除しては?」

 

「まぁ、スタンピードで失敗したのだから、次はいつ殺しても関係無いからな……」

 

「確実性を考慮するならば、邪魔な者からが無難かと」

 

「お主、あの女に恨みでもあるのか?やけに消したがっているな?」

 

「いえ……個人的な恨みはありませんが、今後の計画に支障が出るとしたら、あの女が原因となるでしょう」

 

「そんなにか?他の女と同じで無知なのだろう?」

 

「あれは、頭の良さは関係ありません。運が良いと言うか、何かに導かれていると言うか……」

 

「ほぉ?それは得体が知れないなぁ……では、余計に触れない方が良いのでは無いのか?」

 

「それでは、我々の計画は成功しませんよ。間違い無く我々の計画がバレて処刑されて終わるでしょう」


「ふん、お前がそう言うなら任せるが。バレてもお前の責任でやってくれよ?こちらまで巻き込まないでくれ」

 

「その分、頂く物は多めにしておきますからね」

 

「金ならくれてやる。面倒ごとはごめんだからな」

 

「かしこまりました」

 

 話し終えたらしい彼らは、私の目の前を通り過ぎて言った。バレちゃダメだと息を止めてたから、ちょっと苦しくて姿が見えなくなってから大きく息を吸った。

 

 これはカミルに報告しなきゃだわ!

 

『ソラ!私をカミルの元へ連れてって!』

 

『りょ〜か〜い!』

 

 ポン!と私はカミルの上に現れた……隠密魔法を解いた瞬間だったから、私もさすがに驚いたわよ?まぁ、私より驚いたのはカミルでしょうね。目を見張るカミルは慌てて私を受け止めてくれた。

 

「あ、ありがとう、カミル。重いでしょう?は、恥ずかしいから降ろして……」

 

 私は恥ずかしくて俯く。恐らく、顔が真っ赤になっているだろう。カミルは嬉しそうに私を抱きしめたまま離してくれない。

 

「リオ、どうしたの?急ぎだったのだろうけど?」

 

「はっ!そうなのよ!男性の二人組がね、暗殺は失敗とか、女は殺すべきとか言ってたのを聞いたのよ!」

 

「な、なんだと!?」

 

 フッと声のする方向を向いたら、陛下がいらした。そう言えば、カミルは陛下にお伺いをと言ってたわね?あ……

 

「こ、国王陛下、ご、ご機嫌麗しく……も、申し訳ありません!」

 

 土下座する勢いで頭を下げようとするも、カミルに止められた。

 

「それだけの大事だ。私の事は良いから、話しを聴かせておくれ?」

 

「あ、は、はい!」

 

 私はアタフタと話すべき事を考えるが、中々言葉が出て来ない。私を眺めていたカミルが、ハッ!と私の胸元に目を向け、「それ……」と呟いた。

 

「リオ、それ、光ってるけど、録画中?」

 

「えっ?あ!アレ?誰か来たから慌てて握った時に録画開始されちゃったのかしら?」

 

「貸してくれる?」

 

「えぇ、勿論よ」

 

 カミルは一旦録画を止めて、最初から動画を再生し始めた。すると、さっきの2人が話してる場面をバッチリ映していたのだった。

 

「リオ!お手柄だ!声も全て聴き取れるし、目の前を2人が通った時に、バッチリ顔まで写っている!それにしても……そんな距離で録画していたんだね?危険な事はしないでと言ったよねぇ?」

 

「ち、違うのよ、カミル。私、隠密魔法かけてたの忘れてて、柱の影に隠れてたのよ?直ぐに気づいたけど、何故かすっごくドキドキしちゃって、動けなかったのよ」

 

「その場から移動出来なかったと言う事か……それは仕方ないね。今度からは直ぐにソラを呼んで助けて貰ってね?」

 

「は、はい……」

 

「カミル、そう怒らんでやっておくれ。中々見せない敵の尻尾が、彼女のお陰で見えた上に捕まえられそうなんだからな?ここ最近では無い、何十年も前から私の家族を脅かして来た奴らだ。リオ嬢、私から褒美を出そうな」

 

「あ、いえ、ご褒美は……陛下の執務室に無断で侵入した上に驚かせてしまった事を……見なかった事にして頂けたら、それで……」

 

「本当に2人とも欲が無いな……我が国は、国民の血税だけが収入源では無いから、遠慮は要らんのだぞ?それに褒美をケチったとなれば、臣下への影響も……」

 

「父上、リオが欲しいと言う物は、僕が買ってあげたいので、父上は何もしないで下さい!未だにリオは何一つとして物を強請った事が無いのですよ……」

 

「カミル、私に必要な物は全て揃っているわ。リリアンヌとマリーがカミルに申請していると聞いてるわよ?」

 

「リオ、生活に最低限必要な物だけしか頼まれて無いから言っているんだよ……?」

 

「えぇ――?双剣もデュークが作ってくれたし、私がやりたい事とか……願いも叶えてくれたじゃない」

 

「双剣は、僕を守る為に欲しかったんだろう?やりたかった事って『練習装置』を作って欲しいってアレかい?今は魔導師達の練習に使われていて、飛躍的に技術力が上がったと聞いている。結局は、人の為ばかりじゃ無いか……」

 

「うーん、それが望みだったから、叶えて貰えて嬉しかったわよ?それにパーティーの前には、毎回ドレスやアクセサリーを贈ってくれるじゃない」

 

「それは婚約者として当たり前の事だよ」

 

「リオ嬢は、カミルにして欲しい事は無いのかね?」


「して欲しい事ですか?うーん。いつも一緒にご飯食べてくれますし、相談にも乗ってくれますし?」

 

「当たり前の事ばかりなんだよね……」

 

「カミル、当たり前って素晴らしい事なのよ?世の中、当たり前に明日が来るなんて分からないのだから……」

 

「リオ……そうだね、当たり前ってのは有難い事だね」

 

「えぇ。また明日と笑い合える仲間がいる事も、毎日楽しく魔法の練習出来る事も……周りに感謝して過ごしたいと思っているわ」

 

「クックッ、カミルが言い負かされるとはなぁ?まぁ、リオ殿が言っている事は正論だから何も言えんよな」

 

「そうですね……リオが近くに居てくれて、僕の支えになってくれている事実に浮かれ過ぎていました。ちょっとこちらに都合良く進み過ぎてる気がしますから、まだ気を緩めるべきでは無いと……叱られた気分です……」

 

「それはそうかも知れないなぁ?喜ぶにはまだ早いだろう。アルフォンスやデューク達はまだ待機中では?」

 

「あ!そうでした。アルフ様達は結局、パーティーに出て良いと言う事で宜しいですか?」

 

「あぁ、皆んなで出ようね。リオもドレスに着替えなきゃだし、一旦戻ろうか」


 カミルがスッと立ち上がって、手を差し伸べてくれる。やっとエスコートにも慣れて来たわね。陛下に挨拶をして、陛下の執務室を後にする。執務室を守っていた騎士が、私を見て驚いていたわ。帰りもソラに頼んだ方が良かったかしらね?と、今更思ったのだった。

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