第X話『憎悪の口火』
冒険者登録をした。
本来なら自分のレベルに見合った階級を知るためにテストがあるのだが、わたしはギルマスとの交渉のおかげでテストなしでA級にしてもらった。
A級の冒険者はかなり数が少ないらしく、テストなしどころかテストを受けても直接A級にはなれないらしいが、既に『格付け』が終わっているギルマスはわたしに楯突くことが出来ないため無理やり押し通したら行けた。
その後パーティーを募集するかどうか聞かれたが、当面はソロでやっていくつもりだ。
ただルークさん他2人にはやって貰いたいことがあるのでお家の場所を教えてもらった。
「さてと!やるべき事も終えたし、わたしの過去のことを探ろうかな」
今のところの手がかりは最初に着ていた制服についていた紋章だ。これが有名な学校の物だったりしたらそこに行けばわたしのことが少しでも分かるはず。
聞き込み開始!
⬛︎⬛︎⬛︎
この紋章の情報はあっさり見つかった。どうやらかなりの名門校らしく、場所もここらか近くの街にあるらしい。
名前は『エーアステ・クラッセ魔法学院』。
名だたる騎士や魔術師を育成する超エリート校!まさかわたしがそんなところに在籍していたとは。
ここから少し離れた街の郊外の山間部に校舎があるらしく、セキュリティも相応に厳しいらしいけど…A級冒険者なら入れるでしょ!元生徒(暫定)だし。
あ、でももしわたしが何の関係もないぺーぺーだった場合ものすごく気まずい事になりそうだから顔は変えていこうかな。
持っててよかった、命の光と偽装!
⬛︎⬛︎⬛︎
おぉ〜…壮観だな。自然との調和って感じがする。
あ、中には入れた。今の私は黒髪ポニーテールの一流冒険者だ。名前はクロウってことになってる。レイヴンをイメージして変装した。多少怪しまれたけど『慈悲』の効果で上手く説得して戦闘の授業の特別講師として雇用されたのだ。
今生徒たちと初対面。たぶん同世代だけど。
ただなんかクソガキって印象がある。名門の生徒だという驕り?みたいな。
そして弱い!生物解析で見ても鑑定で見てもそこまで強くないね。
異能を持ってる人はちょくちょくいるけど。
「よし!みんな集まった?今日から君たちの授業を飛び入りで担当することになりました、A級冒険者のクロウです!」
反応はあまり良くない。完全に舐めてんなこいつら…イライラしてきた。
『慈悲』の格付けついでに一旦ボコるか?
「ふーむ、じゃあわたしの自己紹介ついでに軽く組み手でもやる?やりたい人ー」
反応悪いな、おい。全然手が挙がらないじゃないか。
「-僕がやろうじゃないか」
と思ったら1人手を挙げた。自信に満ち溢れた顔…そんな自信あるならすぐ手挙げろよ。勿体ぶりやがって…
ここに来る前に頭に叩き込んだ生徒のプロフィールによると、こいつの名前はハンス。どこぞのお貴族様らしい。
「おっ、いいねいいね。好戦的だね!他にはいない?」
いないのか。つまんねー。まあこのハンスくんとやら、こいつはクラス内でかなり権力があるらしいからね。畏れ多い的なかんじかな?
それにしてもわたしに対する反応が鈍いな。若干の敵意も感じるし…あ、『元奴隷』のせいか。ほぼ貴族だもんね。
「…いないか。よし!じゃあルール説明だ。ルールは簡単!武器自由、魔法も自由…つまりなんでもアリだね」
「へぇ?本当にいいのかい?初めからボクに負けてちゃこれからの授業に支障が出てしまうんじゃないかなぁ…もっと条件をきつくした方がいいんじゃないか?」
「なるほど、それもそうだね。じゃあ条件を追加だ。わたしは両手を使わない。これで十分かな?」
手をひらひらさせて思いっきり煽ってやる。こういうタイプにはさぞ効くだろう。
「へ、へぇ…そこまで言うならやってやろうじゃないか…」
思った通り顔が引き攣っているし、取り巻きらしきやつらもざわついている。
何故かこいつらを見てると胸がざわざわする。何か思い出せそうな気もするけど…やっぱ気のせいかも。
「じゃあ、どこからでもかかってきていいよ」
「はあぁぁぁーっ!」
剣での上段からの振り下ろし。
わたしはそれを敢えて避けない。実力を見せつけるなら圧倒するのが1番だよね。
剣が頭に触れる直前に『透過』を発動する。このスキル、まだレベルが低いから時間制限とか発動面積が限定されてるんだけど発動すると全物理攻撃と魔法攻撃を透かせられる。
「なっ⁈」
剣が何の手応えもなくすり抜けたことに驚き、そのままわたしの足下に剣を振り下ろしきったハンスの腕を踏みつけ、そのまま腕の骨を踏み砕く。普通なら確実に後遺症が残る大怪我だが、回復魔法があれば問題ない。
「ぐっ、ぐあぁぁあー!」
ふふっ、みっともなく叫んで…なんだか胸がスカッとするね!
ちなみに後ろの方で見学している生徒たちの内の数人は医務室に向かって走って行った。
「ふぅ、これで
⬛︎⬛︎⬛︎
「-あ、教頭先生、これってなんのリストなんですか?」
「これですか?…これは、不慮の事故で命を落としたか、行方が分からなくなってしまった生徒のリストですよ。過去10年分までが保管されています」
わたしはそのリストをペラペラと捲る。
そして見つけた。見つけてしまった。
わたしにそっくりな容貌をした暗い表情の生徒。
『ルシア・クローバー』を。
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