第4話 ろくろ首
その日、僕たちはチューハイで乾杯していた。
ピーナッツをつまみながらジュースのような酒を飲む。そんな中、ケウケは最近焼き物の体験をしたと言う話をしてくれた。ろくろも回したらしい。
「ろくろというのは難しくてな。少し力が入りすぎると簡単に土が崩れてしまう。なかなかにやりがいがあったよ」
「そうかい。今度焼き物が完成したらみせてくれ」
「もちろんだ。ところで」
ケウケはピーナッツをひょいと口の中へ運びながら僕を見る。
「君、ろくろ首という妖怪は知っているかね」
「知ってるよ。首が伸びる妖怪だろ?」
「そうか。知ってるか。なら別の妖怪の話にするか」
「いや、君が語るろくろ首の話を聞かせてくれ」
「私の話がそんなに聞きたいか? なら話そうじゃないか」
ケウケはチューハイを一口飲み、ぷはっと息を吐いた。ゴキゲンな様子だ。
「君が知るように、ろくろ首というのは首が伸びる妖怪だ。長く長く伸びて蛇のような首をした女性の姿でイメージされることが多いと思う」
「あとは着物を着て、髪を結っているイメージだね」
「そうだな。昔々から伝わる妖怪だから。そういう姿で描かれることが多い。ところで、ろくろ首の名前の由来は分かるかな?」
「ろくろ首というくらいだから、ろくろが関係してるんじゃないかい? 君がさっき話してた、焼き物の形を作るのに使うろくろさ」
僕の言葉にケウケは頷く。
「その通り。ろくろの上で土は良く伸びるんだ。その様子から連想してろくろ首という名前がついたわけだ」
「なるほどねえ」
「ろくろ首は、その長い首でイメージしやすい妖怪だ。さらにだね。ろくろ首は頭だけを飛ばすこともできる。ラジコン飛行機を飛ばすみたいに」
「へえ、それは初耳だ」
「私が聞いた話によるとろくろ首はどうしても会いたい相手がいて、その日とに会うために首を伸ばしたという。しかし、首を伸ばしただけでは足りなかったから、今度は頭を飛ばしたんだね。そこまでして会いたい誰かが居るというのは幸せなことかもしれないな」
「でも、そんな人が居て、会えなかったら不幸だ」
「そうだろうね。だから彼女は首を伸ばして頭を飛ばした。大切な人に会いたい一心で人間をやめてしまったんだ」
なるほど。ろくろ首とはそういう妖怪だったのか。
「今の時代は電話やメールがあるからね。直接は会えなくても簡単に意思の疎通ができる。良い時代だ」
「確かに。今の世ならろくろ首が生まれることはないのだろう。ただ」
ケウケは楽しそうに言う。
「そんな今の時代だからこそ、生まれてくる妖怪も居るのだろうね」
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