第7話 家庭教師
心地いい鳥のさえずりで目が覚める。
あれ?昨日はフェルノ様と会って、、その後どうしたんだっけ?
体から冷や汗が吹き出た。
そうだ、あのまま寝てしまったんだ、、。
自分から話をしてくれと頼んだのにも関わらず寝落ちしてしまうなんて、、不敬にも程があるだろ。
どうしよう、手紙を書いて謝るべきか、いやまた今日も来るならその時に謝ればいいのか。
1人であたふたしていると、ベット横のサイドテーブルに置き手紙がされているのを見つける。
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シェルへ
昨夜は遅くまで起こしてしまって悪かったね。
私が無理やり押しかけているようなものだから、シェルが悪く思う必要は無いからね。
今夜はもっと早く伺わせて貰うよ。
愛をこめて
フェルノより
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なんて紳士的なんだ、と驚いてしまう。
だが、それと共に当たり前のように今日も来るんだなと思ってしまう。違うよ?嫌とかではないよ?
ほんとに僕は愛されているんだな。
あれが演技なら恐ろしいよ。
疑いたくもないから彼を信じよう。
軽い支度と朝食を終え、読書に勤しんでいるとドアがノックされ家庭教師のマルクが顔を出す。
もう授業をすると言うのかよ、ひどい。
僕の思いが顔に出ていたのか、マルク先生から
そんな顔しないでください。困るのはミシェル様ですよ。
と言われてしまう。
「もう既に読書の課題をあんなに出しているのだからしなくてもいいじゃん!」
必死の反抗も虚しく
「この約1ヶ月授業に出ていないんですから回復してから追いつこうとしても無理な話です。」
ミシェル様は話を聞くだけですから!!と言いくるめられる。
でもフェルノ様が教えてくれると言ってくださったし、、反抗心から小声で言ってみる。
「フェルナンド様とのお勉強ですか?それはいいですね。」
今日初めての微笑みを見せる。
「なんでマルクが嬉しそうなのさ」
「私はミシェル様がフェルナンド様と親しいと嬉しいのですよ。あんなに仲が良くて幸せそうだったのに、お二方ともにお忙しくなられて次第にミシェル様の笑顔も減っていきました。特に"あの時"から。私はミシェル様の家庭教師としての使命感からと言いますか、幸せになって頂きたいのですよ。ですから、不謹慎ではありますが、この機会はお二方にとって良いものだと思うんです。」
いつにもなく真面目な顔をしているマルクに圧倒され、なんだか嬉しくて、恥ずかしくて、そうかとしか言えなかった。普段は意地悪な家庭教師としか思っていなかったけど、結構良い先生なのかもな、と思うようになった。
「フェルナンド様と言えばですが、ミシェル様は今日記を読んでるんだとか、それは記憶を思い出すためですか?」
「そうです。きっとフェルノ様にも失礼ですし、早く思い出そうと思って。」
「努力をすることはいいと思いますが、日記を読むのはおすすめしませんね。無理やり思い出させることは脳に負担ですし、パニックを起こしかねない。お医者様にも言われていたでしょう?」
「それはそうだけど、、日記を読むくらいは大丈夫じゃないの?」
「いいえ。自然と思い出すのが1番です。焦らなくとも記憶は戻りますよ。ですからこれから先は読まないことを勧めます。」
では、と勝手に授業を始められてしまう。僕を大事にしているのが伝わってくる話をした後だからすんなり言うことを聞きそうだった。
が、日記を読むのは結構楽しいんだよね、欠けた記憶を思い出すためだけでなく、昔のことを思い出すのは楽しい。これは悩みどころだ。
終始うとうとしていた授業はお昼休憩以外は進み続け、すっかり夕方になってしまった。
疲れた僕はベットにそのまま沈んでいき、眠ってしまう。
夕飯を持ってきたメイドに起こされ、寝る準備をしてもらった。
夕方に仮眠を長めに取ってしまったので、夜はなかなか眠くならず、今日うとうとして聞いていなかった分の復習をしていた。
すると今日もいつもと同じようにバルコニーからフェルノ様は現れた。
「こんばんは、シェルは勤勉だ。偉いね。」
「こんばんは。寝れなかったので時間つぶしにしていただけですよ。」
褒められるはこそばゆくて照れてしまう。
「そういえば、勉強を教えると約束していたね。何か分からないところはあったかい?」
そう言ってくれたのでお勉強会が始まった。
フェルノ様は噛み砕いて説明してくれるのですっと頭に入ってくる。
一通りお勉強会が終わるとフェルノ様が口を開く。
「今日は何をしていたのシェル。何か楽しいことはあった?」
「今日は家庭教師の授業がずっと止まらなくて、楽しいことなんてちっとも。あっでもフェルノ様とのお勉強会は家庭教師の授業とは違って楽しく、理解出来ましたよ!」
「そんなことを言って貰えて光栄だよ。また分からないことがあったらすぐに私に聞くんだよ?」
フェルノ様とのお勉強会が集中できるのは本心で、素直に有難い。"教師"となるとどうにも聞く気になれない。
「そういえば、あれから日記は読み進めているのか?」
「いや、読めていません。授業が長くて。家庭教師に読むのは辞めるよう言われてしまいましたし、、」
「私も家庭教師殿に賛成だな。無理に読んで思い出そうとしなくても私が会いに来て、会話をしていく中で思い出せばいいさ、再びシェルに危険が迫るのが怖いんだよ。」
子犬のような瞳で見られて、目を逸らしてしまう。
みんなして読むなって、そんなに危ないの?
でも読むなって言われた方が読みたくなるよ。
口ではわかりました、と返事をしたが僕は読んでやる、と意気込んでいた。
すると僕の心を見透かしたように「読もうとしてるだろ!」と言われてしまう。たが、その顔は愛おしそうだった。なんで笑ってるんですか!と問うと、なんだか幼い時の君のようで、と言われた。そんなに僕っていたずらっ子だったっけ?と思いながら雑談は続いた。ある程度お話をして、夜も更けてきたので今日はお開きとなった。
記憶のかけたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで にんじん @28ninjin28
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