第3話 罠
「ペン?今の時代に珍しいな。」
確か今の時代では紙に書く必要すらなく、電子タッチで問題なく宿題も契約書も書くことができる。
それはスラム街でも変わらない事実だ。基本的にアンティークであり、値段は高い。だが、それにしてもこのペンは高すぎやしないだろうか。
「特殊なペンです。極小電子線が埋め込まれています。」
「どういうことだ?」
疑問に思う俺の為に助手はペンをしまってあるケースから取り出した。そしてクリップを弾く。
カチッという音とともに青白い光線がペンから飛び出す。
試さなくてもそれが特殊な剣だということは理解できた。
「お判りいただけましたか?」
「あぁ……。作り主は?」
俺は爺の方を見るが、助手は首を振った。
「ある方がここに買い物に来た時に渡したものです。取引品としてはこちらに有利すぎるものでしたが、価値が高すぎるゆえにこれまで一度も売れたことがありません。」
残念そうに助手が苦笑いを浮かべる。
「物々交換の場合、何を持ってくればこれは買える?」
「そうですね……最新型の情報機器でもない限りは。」
「それは厳しいな。」
下手をすればここに書いてある値段を集めるよりも高難易度になるだろう。
「そのペンの名前は何という?」
「【
「なるほど良い名だ。」
まさか俺が持っていた剣と同じ呼び名だとはな。
見たときから引かれたが、これは中々運命というものを感じる。
その後もそのペンのことを考えながら爺の修理が終わるまで待った。
ついでに小型の拳銃が売られていたので即購入を決める。
爺は一瞬だけ考えたようだが、俺が成長したことをくみ取ってほぼ原価で売ってくれた。
「良いのか?」
「油を刺してくれた代金だよ。」
「ありがたいな。」
修理費と銃の代金を払って修理屋から出た。
先ほど仲介屋で買ったホルスターに銃をしまい、内側のズボンに装着する。
これで遠距離からの攻撃に対しても多少は圧力をかけられるようになったのだろう。
太陽を見るともうすぐ夜になりそうな時刻だったので急いで路地を抜けた。昼間はまだしも、夜の路地は先ほどの男とは比べ物にならないほどの危険度になる。
表通りに出て、町を抜けたタイミングで空が一気に暗くなった。
夜の訪れである。
ゴミ山を器用に走り抜けながらレヴは自分の基地へと戻った。
それはゴミ穴の中にばれないように掘られた家であり、今までレヴが集めてきた価値あるものからガラクタまですべてが置かれている。
レヴにとってはガラクタも十分有効なモノであり、家の上にあるゴミ山の補強に使うことが大半である。
ゴミ漁りは夜が本番である。
数時間の仮眠をとった後、子供が一人通れるほどの穴を通ってレヴは外へ出た。
夜目が聞くように特殊なゴーグルを被ってひっそりと動き出す。
ゴミ漁りが主に狙うのは新しいゴミ山である。この地区には何個も投入口があるため日によってあり見つけるかは運になってしまうが、見つけた時の収穫は大きい。
もう一つの狙うものは他のゴミ漁りの拠点である。レヴのような特殊な形をした拠点は見つけにくいが、中には簡単な家を作ってそこに住んでいる不用心なゴミ漁りもいる。
そして今レヴが向かっている先はその不用心なゴミ漁りの家である。二週間ほど前に見つけていた記憶があったので今更ではあるが襲いに行く。
これはゴミ漁りをしていると結構あることらしく、今も遠くの方で銃声が鳴り響いていた。
どうやら俺が発見していた家はまだ襲われていないらしく、生存していた。
宝を傷つけてはならないので罠に気を付けながらゆっくりと進んでいく。
ここで気を付けなければいけないのは、この家がおとりの可能性である。
囮だった場合、大体の確立で爆弾が仕掛けられている。
果たして、当たりかはずれか。
そうっと確認するレヴだったが、そのどちらでもないことに気づき笑った。
中にいた男がこちらを見て、ニヤリと笑ったのだ。
直後に窓ガラスが割れ、血しぶきが舞った。
「当たりか。」
「へぇ……。」
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